賃貸借契約の更新時に、家賃の値上げ通知を受け取って驚いた経験がある方は少なくないのではないでしょうか。
実際、総務省統計局の消費者物価指数を見ても、家賃は上昇傾向が続いていることが分かります。
「このまま家賃を払い続けるべきか、それとも思い切って住宅購入に踏み切るべきか」という悩みを持つ方が増えているのが、2026年における住宅市場の特徴のひとつです。
また住宅ローンの金利も上昇局面にあり、今後もさらに上がる可能性が高いと見込まれています。
「様子を見れば金利が下がるかもしれない」という見通しは立てにくい一方、今借りたからといって将来の金利上昇と無縁というわけでもないのが実情です。
この記事では、家賃と住宅ローン金利の両方が上昇している背景を整理したうえで、賃貸を続けた場合と購入した場合の総支払額を試算し、損得を比較します。
愛知・名古屋エリアで住まいを検討している方が、自分の状況に当てはめて判断できるよう、具体的な数字とともに解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
なぜ今、家賃も金利も上がっているのか

家賃上昇の実態
総務省統計局の消費者物価指数によると、全国の家賃指数は2026年2月時点で101.1となり、前年同月比0.5ポイントの上昇となりました。
値上がりが確認されたのは2ヶ月ぶりのことで、緩やかながらも上昇基調が続いていることが分かります。
名古屋市については、5年ごとに実施される総務省の住宅・土地統計調査(令和5年調査)で、より具体的な実態が明らかになっています。
名古屋市における借家(専用住宅)全体の1か月当たりの家賃は59,168円で、種類別に見ると民営借家(木造)は59,674円となっており、前回調査(平成30年)から7.9%の上昇でした。
非木造の民営借家についても65,460円となり、5年間で4.7%上昇しています。
これは統計上の確定値であるため2026年時点の値上がり幅そのものではありませんが、名古屋市においても家賃の上昇傾向が続いていることを裏付けるデータといえるでしょう。
出典:総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国(2026年2月分)」/名古屋市「令和5年住宅・土地統計調査結果(名古屋の住宅・土地)住宅及び世帯に関する基本集計」
住宅ローンの金利上昇の実態
家賃だけでなく、住宅ローンの金利も上昇局面が続いています。
日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(政策金利)を1.0%程度に引き上げることを決定しており、これは1995年9月以来、約31年ぶりの高水準です。
今後の見通しについても、上昇を示唆する材料が並んでいます。
住宅金融支援機構が公表する情報によれば、政策金利は2027年6月末までに約1.6%まで上がるとの予測が示されています。
この予測は複数のエコノミストの見通しを踏まえたものであり、金利はまだ上昇の途中にあるという見方が数字に表れているといえるでしょう。
また全期間固定金利型のベースとなる長期金利についても、2026年度は平均2.64%程度、2027年度は平均2.75%程度まで上昇するとの見通しが出ています。
こうした状況の中、今後5年以内の住宅取得を予定している人を対象にした調査(2026年1月実施)では、約7割弱が借入額の減額や返済期間の短縮、固定金利タイプへの見直しなど、住宅ローンの選び方に変化があったと回答しています。
このように、家賃・金利のいずれも「待てば下がる」とは言えない状況にあるため、今の家計にとって賃貸を続けることと購入することのどちらが得なのか、具体的な数字で比較しておくことが重要です。
次章では、賃貸を続けた場合と購入した場合の総支払額を試算し、損得を具体的に比較していきます。
出典:日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年6月16日)/住宅金融支援機構「“金利のある世界”でどう変わる?これからの住宅ローン選びを考えよう」
賃貸を続ける vs マイホームを購入する|損得を比較

賃貸を続けた場合の家賃総額
まず、賃貸を35年間続けた場合に家賃総額がどの程度になるかを試算してみましょう。
ここでは、愛知・名古屋エリアにおけるファミリー向け賃貸物件(3LDK程度)を想定し、月額家賃10万円を前提条件とします。
この数値はあくまで試算用の仮定であり、実際の家賃は物件やエリアによって大きく異なる点にご留意ください。
また家賃が今後も上昇し続けると仮定した場合の試算も示します。
上昇率の根拠として、名古屋市の民営借家(木造)の家賃が5年間で7.9%上昇したという実績を参考にしつつ、控えめに5年ごとに6%ずつ上昇するという前提を置きました。
| 35年間の家賃総額(目安) | |
| 家賃が上がらない場合 | 約4,200万円 |
| 5年ごとに6%上昇する場合 | 約5,040万円 |
家賃が据え置かれたとしても、35年間の総額は4,000万円を超える規模になります。
値上げが続く前提であれば、その差はさらに800万円以上広がる計算です。
マイホームを購入した場合の総支払額
次に、マイホームを購入した場合の35年間の総支払額を試算します。
前提条件は、借入3,000万円・返済期間35年・全期間固定金利型(フラット35)・元利均等返済とし、金利は住宅金融支援機構が示す2026年度の長期金利見通し(平均2.64%程度)を参照して設定しました。
この条件でのローン返済総額は、約4,600万円(うち利息分は約1,600万円)という試算になります。
これに加えて、購入時にかかる諸費用(登記費用・ローン関連費用・火災保険料など)が100万〜200万円程度、購入後35年間の維持費(固定資産税・修繕費・保険料)が約1,050万〜1,825万円かかる見込みです。
| 35年間の支払額(目安) | |
| ローン返済総額(元金+利息) | 約4,600万円 |
| 諸費用 | 約100万〜200万円 |
| 維持費(固定資産税・修繕費・保険料) | 約1,050万〜1,825万円 |
| 合計 | 約5,750万〜6,625万円 |
比較表と読み解き方
賃貸と購入、それぞれのケースにおける35年間の総支払額を並べると以下の通りです。
| 35年間の支払総額(目安) | |
| 賃貸(家賃据え置き) | 約4,200万円 |
| 賃貸(5年ごとに6%上昇) | 約5,040万円 |
| 購入(借入3,000万円) | 約5,750万〜6,625万円 |
単純な総支払額だけを比較すると、賃貸の方が金額を抑えられるという結果になります。
しかし、この比較には重要な前提の違いがあります。
マイホームを購入した場合、35年後には手元に資産(不動産)が残りますが、賃貸の場合は住み続けた分の家賃がそのまま消費されて終わるという点です。
この資産性の違いを考慮せずに総額だけで損得を判断すると、実態とずれた結論に至る可能性があります。
またこの試算はあくまで一例であり、頭金の有無・実際の金利タイプ・住み続ける年数などによって結果が変わります。
特に住み続ける年数が短いほど購入のメリットが薄れやすく、長く住むほど資産形成という側面が相対的に大きくなるという傾向は、判断のひとつの目安になるでしょう。
「値上げ後も賃貸を続けるべき人」「購入を検討すべき人」の違い

前章の試算はあくまで一例であり、実際にどちらが得かは家庭の状況によって変わります。
ここでは、判断の軸となる特徴を整理してみましょう。
賃貸を続けるべき人の特徴
以下のような状況に当てはまる場合は、無理に購入へ踏み切らず、賃貸を続ける選択肢も十分に合理的です。
- 転勤や転職の可能性が高く、今後5年以内に住む場所が変わる見込みがある
- 頭金となる貯蓄がほとんどなく、諸費用分の資金すら確保できていない
- 収入が不安定、または今後の見通しが立てにくい状況にある
- ライフスタイルの変化(結婚・出産・転職など)が近く控えている
これらに複数当てはまる場合、購入を急ぐことでかえって家計のリスクが高まる可能性があります。
住む場所や暮らし方の自由度を優先したい時期は、賃貸のメリットが大きくなる局面といえるでしょう。
購入を検討すべき人の特徴と押さえておきたいポイント
一方で、以下のような状況にある場合は、購入を具体的に検討する価値があります。
- 今のエリアに今後10年以上住み続ける見込みがある
- 頭金や諸費用に充てられる貯蓄が一定額確保できている
- 収入が安定しており、返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)を20〜25%以内に収められる見込みがある
- 家賃の値上げが続くことを負担に感じており、固定金利での購入によって返済額を確定させたいと考えている
また購入を検討する場合、愛知・名古屋エリアにおいては以下の3点を押さえておくと判断しやすくなるでしょう。
予算の考え方
年収や返済負担率をもとに、無理のない借入額の範囲を先に決めておくことが重要です。
「借りられる額」ではなく「返せる額」を軸にすることで、金利上昇局面でも家計の安定を保ちやすくなります。
エリア選び
名古屋市内でも区によって価格帯が大きく異なり、同じ予算でも選べる物件の広さや条件が変わります。
希望条件の優先順位(立地・広さ・築年数など)を整理したうえでエリアを絞り込むと、予算内での選択肢が見つけやすくなるでしょう。
金利タイプ選び
変動金利・固定金利のどちらを選ぶかによって、将来の返済額の変動リスクが大きく異なります。
金利上昇局面であることを踏まえ、家計の余力に応じたタイプを選ぶことが大切です。
予算の立て方やエリアごとの物件相場、金利タイプの選び方については、それぞれ以下の記事で詳しく解説しています。
賃貸vs購入に関するよくある質問
Q. 家賃の値上げ通知が来たら必ず応じないといけない?
必ずしも応じる必要はありません。
借地借家法第32条では、貸主・借主のいずれからも家賃の増減額を請求できる「借賃増減請求権」が定められています。
ただし、通知が届いただけで新しい家賃が自動的に確定するわけではなく、最終的には双方の合意、また協議が調わない場合は調停・裁判によって決まる仕組みです。
増額について合意に至らない間は、借主は「相当と認める額(多くの場合は現在の家賃)」を支払えば足りるとされています。
一方で、固定資産税などの税負担の増加や、近隣相場との乖離といった正当な理由がある場合は、最終的に増額が認められる可能性もあります。
値上げ通知を受け取ったら、まずは値上げの根拠を確認し、必要に応じて貸主と協議する姿勢が大切です。
出典:e-Gov法令検索「借地借家法」第32条
Q. 賃貸から購入への切り替えはどのタイミングで検討すればいい?
明確な正解はありませんが、前章で整理した「今のエリアに10年以上住み続ける見込みがあるか」「頭金や諸費用に充てられる貯蓄があるか」「返済負担率を20〜25%以内に収められるか」という3点が揃ったタイミングがひとつの目安になります。
家賃の値上げ通知をきっかけに検討を始める場合でも、勢いだけで決めず、まずは資金計画を整理することが重要です。
Q. 頭金なしでも住宅購入はできる?
金融機関によっては、頭金なし(フルローン)での借り入れに対応しているケースもあります。
ただし、登記費用やローン関連費用などの諸費用(100万〜200万円程度)は、頭金とは別に必要になる場合が多いため、頭金がゼロであっても一定の自己資金を準備しておくことが望ましいといえます。
借入額が増えるほど月々の返済負担も大きくなるため、返済負担率を踏まえたうえで無理のない借入額を検討することが大切です。
まとめ
- 家賃は総務省統計局の消費者物価指数や名古屋市の住宅・土地統計調査でも上昇傾向が確認されており、住宅ローン金利も日銀の利上げを受けて上昇局面が続いている
- 35年間の総支払額の試算では賃貸の方が金額を抑えられる結果になったものの、購入の場合は住宅という資産が手元に残る点が大きな違いとなる
- 損得の判断は、住み続ける年数や頭金の有無、返済負担率によって変わるため、自分の条件に当てはめて試算し直すことが欠かせない
家賃の値上げ通知は、住まいの選択を見直すきっかけになりますが、勢いだけで購入を決めるのは禁物です。
まずは自分の家計に合わせた試算を行い、無理のない資金計画を立てることが大切です。
住宅購入を具体的に検討する段階になったら、東新住建までお気軽にご相談ください。
























