【2023年版】歴史から学ぶ!名古屋市の水害の歴史と浸水実績から見る危険地域

名古屋市内には多くの河川が流れており、古くから洪水や高潮などの水害に見舞われてきた歴史があります。
この記事では、伊勢湾台風や東海豪雨といった歴史的な水害被害の記録をもとに、浸水の危険区域や避難の判断基準などを解説していきます。
名古屋市内にお住まいの方、また名古屋市内に引っ越し予定の方は、生活区域における水害のリスクや対策についてチェックしておきましょう。

名古屋市における水害の歴史

まずは、名古屋市で発生した過去の水害被害について詳しく見ていきましょう。

伊勢湾台風

伊勢湾台風は昭和34年9月に和歌山県から上陸した台風15号のことです。
上陸後も勢力を保ったまま本州を縦断したため、愛知県を含む広い地域で大きな被害が発生しました。
名古屋市においては南区や港区の海抜ゼロメートル地帯で特に被害が大きく、水没地域がなくなるまでに半年以上かかるなど復旧にも長い時間を要しました。
伊勢湾台風は「災害対策基本法」制定のきっかけとなった災害でもあり、日本の歴史に影響を与えた台風としてその名を残しています。

被害状況(名古屋市)

死者・行方不明者1,851人
負傷者重症:1,619人 / 軽傷:38,909人
家屋全壊:6,166棟 / 半壊:43,249棟 / 流失:1,557棟
浸水床上:34,883棟 / 床下:32,496棟

台風7号・8号

平成10年の台風7号・8号は、東海地方に記録的な大雨をもたらし、交通機関等に大きな影響を与えました。
また最大瞬間風速として42.6m/秒を記録しており、これは伊勢湾台風の45.7m/秒に次ぐ記録となっています。
愛知県全体の被害総額は約33億円と推定されています。

被害状況(愛知県)

死者3人
負傷者151人
家屋全壊:8棟
浸水床上:8棟

平成20年8月末豪雨

平成20年8月にも東海地方を中心とした記録的な豪雨が発生し、矢田川・天白川・日光川などが氾濫しました。
名古屋市では中村区や中川区で内水氾濫による大規模な床上浸水・床下浸水が発生した他、南区や千種区ではおよそ36万世帯に避難勧告が発令されるなど、様々な被害をもたらしました。

被害状況(名古屋市)

死者・行方不明者3人
負傷者3人
家屋全壊:5棟 / 半壊:1棟
浸水床上:1,175棟 / 床下:9,929棟

名古屋市を飲み込んだ「東海豪雨」を振り返る

続いて、名古屋市で当時観測史上最大の雨量を記録した「東海豪雨」の概要と被害状況を解説していきます。
東海豪雨による被害の復旧に向けた政府や名古屋市の対応、またその後の水害対策などを一通りチェックしてみましょう。

名古屋市全体の約37%が浸水

東海豪雨は平成12年に発生した豪雨災害で、台風14号に刺激された秋雨前線の活発化が原因とされています。
豪雨が発生した9月11日~12日の総雨量は年間降水量の3分の1にあたる567mmを記録し、名古屋市においては市内の約37%が浸水するほどの大きな被害となりました。
この他にも堤防の決壊や河川の氾濫が相次いだことで一時的に都市機能が麻痺した地域もあり、伊勢湾台風に並ぶ激甚災害として歴史に名を残しています。
※激甚災害:地震や台風などの自然災害の内、国からの援助や支援が必要と認められる被害をもたらした災害

復旧に向けた政府・名古屋市の取り組み

東海豪雨による被害の復旧に向けた政府・名古屋市の主な取り組みは以下の通りです。

政府の対応

  • 東海豪雨を激甚災害に指定
  • 自衛隊(延べ9,700名)・海上保安庁(延べ471名)・消防署・警察署を出動させて孤立者救助などの救助活動を実施
  • 全国から排水ポンプ車(20台)を集め排水活動を実施
  • 新川などの決壊した堤防の応急復旧工事を実施(河川激甚災害対策特別緊急事業) 等

名古屋市の対応

9月12日愛知県から災害救助法適用決定の報告
堤防仮復旧の後方支援(土のう調達)
り災証明取扱い各区へ周知 市民相談室に相談窓口を設置
被災者への公営住宅の提供 申込受付
9月13日災害義援金の受入開始
被災中小企業への災害復旧資金融資の実施
9月14日市民へのり災証明、市税減免申請の受付、相談対応開始
災害復旧に関する補正予算の専決処分(手続き)
道路上の土砂、ゴミ撤去着手
住宅の応急修理説明相談、受付、審査 開始

東海豪雨を教訓にした具体的な水害対策

  • 浸水被害が甚大だった地区を対象に、ポンプの増強や雨水貯留施設の建設・設置を実施
  • 水害危険地域の24時間監視を行う監視カメラの導入
  • 浸水被害に基づいた洪水ハザードマップの作成

水害発生時の避難行動目安

名古屋市では、洪水や内水氾濫による浸水が想定される地域をまとめたハザードマップが作成されています。
ここからは、ハザードマップに記載されている「避難行動の目安」に基づき、避難が必要な条件や判断ポイントなどを解説していきます。

最大浸水深別の避難目安

最大浸水深とは、洪水や津波などで浸水した場合における水面から地面までの深さのことです。
一般の家屋では、浸水深が0.5m未満の場合は床下浸水、0.5m以上になると床上浸水する恐れがあります。

最大浸水深避難目安
0.5m未満自宅の安全なところに待機もしくは念のため最寄りの緊急避難場所へ避難
0.5~3.0m未満住まいが1階なら緊急避難場所もしくは鉄筋コンクリート造の安全な建物へ避難
2階以上なら自宅の安全なところで待機
3.0~5.0m未満住まいが2階なら緊急避難場所もしくは鉄筋コンクリート造の安全な建物へ避難
3階以上なら自宅の安全なところで待機
5.0m以上住まいが3階以下なら緊急避難場所もしくは鉄筋コンクリート造の安全な建物へ避難
4階以上なら自宅の安全なところで待機

洪水予報河川について

洪水予報河川とは、国土交通省・都道府県・気象庁から発表される「洪水予報」に含まれる河川のことです。
洪水予報の情報は、主に水防活動の判断材料や避難行動の指針として活用されています。
名古屋市内で洪水予報河川に認定されている河川の一覧と、氾濫時における浸水危険区域は以下の通りです。

 被害予想区域(最大)河川流域の降雨量目安(24時間)
庄内川北区、守山区、港区、東区、西区、中川区、熱田区、中区、昭和区、千種区376mm
矢田川千種区、東区、北区、西区、中村区、港区、熱田区、中川区、守山区578mm
新川守山区、港区、中川区、中村区、西区、北区751mm
天白川港区、南区、緑区、天白区423mm
日光川港区、中川区342mm

河川が氾濫した場合は広範囲にわたって被害が発生する可能性があるため、区単位ではなく河川単位で情報をチェックすることが大切です。

浸水実績図でみる要避難地区

浸水実績図とは、過去に水害の被害があり、今後も浸水などの可能性がある地域を図にしたものです。
名古屋市の浸水実績図は平成12年に発生した東海豪雨以降の大きな浸水被害を反映しています。(https://www.city.nagoya.jp/ryokuseidoboku/page/0000021585.html
洪水予報河川別の要避難地区は下記の通りです。

庄内川

庄内川は、上流の志段味水位観測所と下流の枇杷島水位観測所で基準を設定し、それぞれ対象地区を決めています。

庄内川・志段味水位観測所

北区辻・清水・金城・東志賀・城北・光城・川中・味鋺・西味鋺・楠・如意・楠西
守山区守山・西城・白沢・鳥羽見・二城・志段味西・瀬古・志段味東・吉根・下志段味・小幡・小幡北

庄内川・枇杷島水位観測所

北区、西区、中村区、中川区、港区区内全域
千種区大和・上野・富士見台・千代田橋
東区山吹・矢田・明倫・砂田橋
熱田区千年・船方・野立・大宝
守山区守山・西城・白沢・廿軒家・鳥羽見・二城・瀬古・志段味西・志段味東・吉根・下志段味・小幡・小幡北

矢田川

千種区大和・上野・富士見台・千代田橋
東区山吹・矢田・明倫・砂田橋
北区六郷・六郷北・飯田・宮前・名北・辻・杉村・大杉・清水・金城・東志賀・城北・光城・川中
西区那古野・幅下・江西・城西・榎・南押切・栄生・枇杷島・児玉・上名古屋・庄内・稲生
中村区区内全域
熱田区千年・船方・野立・大宝
中川区野田・常磐・愛知・広見・露橋・八熊・八幡・玉川・昭和橋・篠原・荒子・中島・西中島・正色・正反田・長須賀
港区中川・東海・成章・大手・港西・稲永・小碓・正保・明徳・当知・港楽・高木・神宮寺
守山区守山・西城・白沢・廿軒家・鳥羽見・二城・瀬古

新川

新川は、水場川外水位観測所と新川下之一色水位観測所で基準を設定し、それぞれ対象地区を決めています。 

新川・水場川外水位観測所

北区味鋺・楠・如意・楠西・【辻・西味鋺】
西区山田・平田・比良・大野木・浮野・比良西・中小田井
中川区豊治・戸田・春田・明正・千音寺・赤星・万場
守山区【小幡・守山・西城・白沢・小幡北・瀬古・二城】

新川・新川下之一色水位観測所

北区味鋺・楠・如意・楠西・【辻・西味鋺】
西区山田・平田・比良・大野木・浮野・比良西・中小田井
中川区正色・五反田・豊治・戸田・春田・明正・千音寺・赤星・万場・長須賀・西前田
港区南陽・福田・福春
守山区【小幡・守山・西城・白沢・小幡北・瀬古・二城】

【】内の地域は、基準水位を超え、かつ洗堰から新川に流入した際に対象となります。

天白川

瑞穂区弥富・中根
南区桜・菊住・春日野・笠寺・星崎・笠東・白水・千鳥・柴田
緑区鳴海・片平・浦里・長根台
天白区平針北・原・植田南・大坪・八事東・天白・山根・野並・表山

日光川

中川区戸田・豊治・明正・千音寺・赤星
港区西福田・南陽

まとめ

名古屋市は水害による被害が大きくなりやすい地域であり、これまで伊勢湾台風や東海豪雨などの大規模災害に見舞われてきた歴史があります。
現在はこれらの災害を教訓としたハザードマップや洪水予報などが公開されているので、生活区域およびその周辺の情報をチェックし、すばやく対応できるように備えておきましょう。

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