不動産を購入した後、建物についてはリフォームできます。賃料やサービスなどソフト面もあとからでも変更できます。しかし、決して変更できないのが立地。立地については十分検討する必要があります。そこで今回は立地ごとのメリット・デメリットを解説します。
都心
東京23区、大阪市、名古屋市など、日本の中でもごく一部の限られた都心部が該当します。大企業の本社や本部、そしてその取引先の企業も多数ある経済の中心地でもあり、有名学校や博物館・美術館などもよく見かけます。人が集まる機能があるエリアであり、公共交通機関が網の目のように張り巡らされているため、駅から徒歩10分のエリアが格段に広いのが特徴です。複数路線使えるというエリアも広い範囲で存在しています。
メリット :多数の用途から不動産を必要としている人が多く需要が根強いのが特徴です。今後も将来性があるエリアであり、人の流動性が高いため、常に売り物があります。オフィスビル、ホテルから、テナントビル、一棟もの、一軒家、さまざまなバリエーションの不動産があり、非常にレアな物件もでやすいのも都心ならではです。使える金融機関が多いため、他人資本で投資をする環境は整っています。
デメリット:物件の購入価格が高いため、その分利回りが低くなりがちです。そのため、回収に時間がかかることも。多額の資金を必要とするため、融資を受けるとしても買える属性が限られてきます。
おすすめ度:★★★
政令指定都市
各道府県の県庁所在地や、それに並ぶ規模の市が該当し人口が50万人以上の都市です。大手企業や都市銀行の支店、地元金融機関の本店などがあります。学校に関しても道府県を代表する学校があります。地下鉄や路面電車、市バスなどの交通網が発達しており、市内で生活する分には自動車は不要なレベルです。
メリット :各エリアの中においては根強い需要があるエリアです。過疎化が進む中においても、このエリアについては過疎化の心配はそこまでではありません。価格は周辺エリアに比べれば高いですが、東京、大阪、名古屋に比べればまだ手に入りやすい価格です。新幹線、飛行機、高速道路などもこれらの都市を結ばれていることが多く、旅行客も多くいます。金融機関も多く、融資の相談もしやすい環境です。
デメリット:東京、大阪、名古屋に比べれば手に入りやすいとはいえ、高いところは高くなっています。特に繁華街に関してはかなり高いところもあり、見極めが必要です。政令指定都市になるために合併を繰り返した結果、エリアが相当広くなっているところもあります。政令指定都市の住所でも端っこの方ではかなりの山の中になっていることもあります。
おすすめ度:★★★
中核市
地方の中核市であり、人口20万人以上の市が該当します。地元の中心として根強い人気があるエリアです。地域金融機関の支店は必ずあるため、融資の相談先は豊富にあります。昔からの交通の要衝になっているところも多く、大きな国道が通っていることがほとんどです。ロードサイドの発達により、駅前にだけでなく国道沿いの利便性も高くなっています。大きなショッピングモールの立地も重要な要因です。クルマ文化なので、物件を検討するときには駐車場も合わせて検討するのが一般的です。
メリット :エリアの中でも、昔ながらの町並み、新興住宅地、大きな国道のロードサイド、郊外など様々な要素を含んでおり、総じて住みやすいエリアとなっています。賃貸需要、投資用物件の供給量とも安定しています。地元金融機関も複数あるため、意外に融資がつきやすい環境です。不動産管理会社や賃貸仲介業者、リフォーム業者などもすぐに見つけることができるでしょう。金額的にも手頃な物件が多く、経営の安定性も高いことから、大失敗しにくいという特徴があります。
デメリット:地域経済が閉鎖的であり、新しい産業、新しい成長の打ち手が無く、地域の成長としては止まっていることもあります。そういったエリアの場合、不動産の流動性が低く、あまり物件がでてこないことも考慮しましょう。人の出入りが少ないということは賃貸の動きも少ないということであり、安定しているが「低位安定」であることも考えられます。
おすすめ度:★★★★
人口20万人以下の市町村
人口10万人前後の市から、数百人の町までの様々な市町村が該当します。観光資源があるエリアとそうでないエリアなど、人口以外にも様々な違いがあります。例えば「軽井沢」などは町ですが、全国的な知名度があります。その一方で知名度は劣りますが、人口や規模に勝るエリアも多く存在します。地元金融機関、リフォーム業者、管理会社などもエリアによっては複数見つけられるでしょう。
メリット :手頃な物件が多く、値段の絶対値が低いのが特徴です。利回りに関しても高利回り物件を多く見つけられやすいエリアです。
デメリット:対応できる金融機関が少なく、融資付けに苦労するかもしれません。手頃で高利回り物件を見つけられても、融資が出ないので買えないという事態が考えられます。無事手に入れることができたとしても、投資回収後、自分が売るとなったときには、同様に買い手が融資に苦労することになりますので、出口戦略をとりづらいです。リフォームや管理会社が見つけにくいエリアであれば、不動産管理に苦労することもあるでしょう。値段以外に、何か一つでも「これはいい!」と思える魅力のある物件であることが必要です。
おすすめ度:★★
駅チカ
よほどの地方で、非電化単線区間などでない限り、駅に近い物件というのは根強いニーズがあります。したがって、空室が出ても、賃貸物件を探している人がすぐに見つかります。一般的に駅チカと言われるのは徒歩5分以内であり、遠くても駅10分以内です。駅に近いほど駐車場がセットでない事が多くなります。
メリット :入居者がすぐに見つかるため、空室リスクは低いエリアです。利便性が高いエリアは高い資産価値を維持することが比較的容易であるため、資産価値が値崩れしにくくなります。結果的に出口戦略を行いやすいといえるでしょう。
デメリット:駅のパワーによって、経営状況が左右されます。普通しか停まらない駅はやはり不利ですし、駅前にスーパーやコンビニ、商業施設や医療機関が揃っているかどうかなどでも需要は大きく変化します。電車の音や振動、繁華街がある場合であれば治安の悪さや騒ぎ声などの要因も考慮にいれておきましょう。
おすすめ度:★★★
バス便エリア
駅から遠い物件が該当します。駅からバスに乗り、バス停からの徒歩時間で表記されることが多くなります。しかし、バス便といっても実際にバスを使うかどうかは別問題です。クルマ社会のエリアの場合、入居者はあまり気にしない可能性もあります。
メリット :値段が安く、高い利回りが見込めます。ショッピングモールに近いなどの場合、近隣に住むと便利なこともあります。空気がきれいであり、広い庭など住みやすい環境が揃いやすいエリアです。
デメリット:駐車場が必須になるでしょう。駅から遠いからといって環境が必ず良いというわけでもありません。駅からは遠くて不便であり、環境としてもそれほどよくない、というところもありますので注意が必要です。
おすすめ度:★
崖地
崖ぎわに建っている物件があるエリアです。場合によっては、ハザードマップで地すべりの危険エリアに指定されていることもあります。このエリアは擁壁が作られ、壁側をしっかりと固定されていることがほとんどです。崖側の上、下、両方とも同様の危険性があります。
メリット :値段が安く出ていることが多いでしょう。リスクが可視化されているため、判断はしやすい要因です。かなり昔から崖地のままになっており、その状態で安定していることも多々あります。崖地といっても実際の段差が1m程度しかないこともあります。盛土ではなく切土の場合、比較的安定しています。
デメリット:危険性が完全に排除できず、リスクが極めて高いエリアです。
おすすめ度:★
海沿い
海沿いの物件があるエリアです。日本は島国だけあり、海沿いの土地は非常に多くなっています。あえて、海沿いの物件を求めてくる人も多数います。
メリット :海といった自然への眺めが良いエリアです。癒しを求めている人、サーフィンが好きな人など、一定の需要があります。海が間近に見える、本当の海沿いというのは希少価値も高くなっています。
デメリット:津波の不安は考慮しておかなければなりません。津波の危険エリアの場合、融資が出ないため、現金で買う必要があります。その場合、出口戦略が取りにくくなります。潮風でベランダやサッシなどが錆びることもあり、維持費用が高くつくかもしれません。
おすすめ度:★★
商業地
大都市・中核市・地方等を問わず、商業地はかならずあります。一般的に、路線価は周囲より高くなっていることがほとんどです。人口が流動的であり、常に一定の賃貸需要がある。エリアです。
メリット :賃貸需要があり、地方であっても局所的に人口が流入しているエリアもあるため、賃貸需要の先細り感は少ないでしょう。テナントビルなど、住居用不動産以外の不動産を手に入れることもできます。
デメリット:賃貸需要はあるが、反面、退去が出ることも多いため、客付け費用がかさむことも考慮にいれましょう。
おすすめ度:★★
病院の近く
日本中どのエリアにいっても病院は必ずあります。病院が悪いということではありませんが、緊急病床のある場合は24時間救急車の出入りがあることになります。センシティブな方は、中で人が亡くなることがあることを気にされる方もいるでしょう。
メリット :病院の周りには性風俗店が営業できないなど厳しい制限があります。都心近くであっても、そういった施設が一定規模制限されているエリアです。
デメリット:救急車の出入りは止められず、静かに暮らしたい人にとってはあえて選ばないのではないでしょうか。近くにあるからといって、それほどメリットがあるわけでもなく、特別に安くなっているわけでもありません。
おすすめ度:★
お寺・お墓の近く
お寺・お墓も日本中あちこちにあります。気にする人は気にしますが、気にならない方もいるのが現状です。お寺によっては鐘をつくこともありますが、回数はそれほど多くないことがほとんどです。
メリット :気にする人が多いことから、安く出ていることがあります。一方、お墓が見えることを気にする人はそれほど多くありません。
デメリット:入居付の際に窓からお墓がはっきり見えると、やはり敬遠する人はいます。
おすすめ度:★★★
大学の近く
大学の近くは新学生が毎年来るため、安定的な需要が見込めます。その需要を見込んで物件が作られているため、中古物件も一定程度あり、流動性も高く手に入れやすくなっています。
メリット :学生が入退去を繰り返してくれるため、安定した経営を行うことができます。
デメリット:近年、学生の減少で大学も常に経営を見直ししています。地方にキャンパスを移転したり、主要な学部だけ地方部から都心部のキャンパスに戻したり、と様々な効率化を図っています。大学が移転すると、学生も住宅を変えることになります。結果的に、同規模の空き部屋が一斉に出ることになり、一挙に経営が不安定になることも考えられます。自分でコントロールできない需要に頼るのはよくありません。
おすすめ度:★
大きな企業の近く
地方都市で大きな企業の工場の誘致が決まった場合、そこで働くひとへの住居共有を見込んで多くの物件が建てられます。それらの物件は一定規模ごとにオーナーが入れ替わることがほとんどです。
メリット :その企業がある間は一定の需要が見込めます。勤め人の場合、一度住むと比較的長い間同じ場所に住んでくれるということも考えられます。
デメリット:大学と同じく、企業も常に工場の運営について見直しを図っています。巨大な工場が、ある日突然移転することもあります。移転すると、同規模の空き部屋が一斉に出ることになり、一挙に経営が不安定になってしまいます。特殊な需要環境に頼りすぎないようにしましょう。
おすすめ度:★
土地勘のある場所
大都市、地方都市、郊外問わず、自分にとって土地勘のある場所、というのがあります。土地勘があると、道が一本違うだけでも便利さが大きく異なることを知っていたり、あまり人気がないところでも実はとても住みやすいところ、なども知っていたりします。不動産屋さんに聞くまでもなく、周辺の土地の売買価格や部屋の賃貸価格の相場がわかっていたりします。
メリット :相場観があるため、大きく外すこと無く納得して物件を買うことができます
デメリット:わかっている分、「自分が住むなら」という視点で考えがちです。しかし、実際には自分が住むわけではなく、借りる人はそれぞれに事情があります。自分の思い込みで、過大評価したり、逆に過小評価したりすることも起こりやすいでしょう。第三者的な目線で判断をするのがやや難しくなります。
おすすめ度:★★★
土地勘のない場所
ほとんどの人にとって、日本中の土地は土地勘のない場所、です。しかし、利回りや収益性、経営の安定性を求めるのであれば、物件は全国に目を向けて探すほうが望ましいのです。その結果、必然的に土地勘のない場所が候補に入ってくることとなります。
メリット :思い込みがないので、第三者的に物件を評価することができます。地元の不動産会社さんや金融機関の人の話も素直に聞くことができます。
デメリット:知らない土地ですので、十分な調査が必要になります。
おすすめ度:★★
海外
日本以外にも様々な土地があります。不動産投資を極めている人は国内だけではなく海外にも目も向けていることがほとんどです。長期的に資産を作っていく上で、選択肢として考える人は増えています。
メリット :利回り、収益性において、日本では出会えない物件に出会えることがあります。
デメリット:融資が難しいです。海外での情報や商取引が分からないため、誰かにアレンジをしてもらわないと購入そのものが難しいです。一方、紹介してくる業者の中にはいい加減なところも多いようです。物件を見極める前に、業者を選択するところから始めなければならず、難易度は極めて高いといえます。
おすすめ度:★
ここまで様々なエリアの特徴を説明をしてきましたが、万人にとって完璧な立地、というものはありません。たとえ、隣り合った土地であったとしても値段が倍ほど違っては全くその立地の意味合いが異なってきます。
どんな物件でも、「価格」と「内容」のバランスで決まります。少々難ありでも、価格が安ければ短期間に収支が大きなプラスになることもありますし、誰から見ても抜群の立地の場合、価格は当然高くなり収支が合うまで時間がかかります。土地の利用目的によっても許容できる価格は異なります。同じ立地・同じ値段であっても人によって値打ちは変わりますので、自分なりの価格目線を持つことが大切です。
自分なりの価格目線を確立するのが難しい人は、TSONのクラウドファンディングで。プロの目利きを賢く使いましょう。