南海トラフ地震はいつ起こる?起きたらどうしたらいいの?

“いつ起きてもおかしくない”と言われ続けている「南海トラフ地震」。
この記事では、南海トラフ地震が起きた場合の被害想定と、地震に備えて今からできることを紹介していきます。
南海トラフ地震が発生する確率が高まったときに発令される「南海トラフ地震臨時情報」の仕組みも解説しているので、こちらもチェックしておきましょう。

南海トラフ地震とは?

まずは、南海トラフ地震の仕組みと、発生時における被害予想について解説していきます。

南海トラフ地震が発生する仕組み

「南海トラフ」とは、駿河湾・遠州灘・熊野灘・紀伊半島の南側・土佐湾・日向灘にわたるフィリピン海プレートとユーラシアプレートが接する海底の溝状地形を形成している区域のことです。

この2つのプレートの境界では、以下の動きが繰り返されることで周期的に大地震が発生します。

  1. フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込んでいく(1年あたり数cm程度)
  2. 2つのプレートの境界は固着しているため、ユーラシアプレートがフィリピン海プレートの動きに合わせて地下に引きずり込まれる
  3. 最終的にユーラシアプレートが引きずり込まれる動きに耐えられなくなり、限界に達して跳ね上がる(=地震)

南海トラフ地震の震源地と被害予想

南海トラフ地震の最大マグニチュードは9.1と想定されており、これは東日本大震災と同程度の大きさです。
しかし南海トラフは関東・東海・四国・近畿・九州などの広範囲にわたるため、発生時の被害規模については東日本大震災を大きく上回ると言われています。

南海トラフ地震によって想定される最悪のケースの被害予想は以下の通りです。

死者(原因の内訳)32万3,000人(津波23万人・建物倒壊8万人・火災1万人)
発生後1週間で避難する人の数最大950万人
建物の倒壊・焼失238万棟
不足する食料9,600万食
経済被害220兆3.000億円(国家予算の2倍以上)

東日本大震災の死者数が1万6,000人であったことを考えると、南海トラフ地震の被害の大きさが伺えます。
また南海トラフ地震は被害範囲が広く、東京・名古屋・大阪といった人口密度の高い地域が含まれる点も被害予想を大きくしている要因です。

愛知県で想定される被害

愛知県においては、特に津波・建物倒壊による被害が大きくと予想されています。

津波(愛知県東部)

※引用1

愛知県東部では、田原市や西尾市で5m~10mの津波被害が予想される他、豊橋市・刈谷市・東浦町・三河湾の内側などでも津波の影響を受ける可能性があります。

津波(愛知県西部)

※引用1

愛知県西部では、伊勢湾の最奥部で津波の被害に注意が必要です。
湾の奥の方は波が重なることで津波が高くなりやすい他、川を遡ってくるケースも考えられます。

建物の倒壊

※引用1

三河湾の沿岸域を中心として、震度6~7クラスの地震が想定されます。
震度6の段階でも木造住宅などの倒壊が起こりうるため、避難経路の確保には十分な注意が必要です。
特に渥美半島は幹線道路が少ないことから、逃げ道が集中し混雑に巻き込まれる可能性が高くなります。

過去に発生した南海トラフ地震

続いて、南海トラフ地震が発生する周期予測と、過去に発生した南海トラフ地震の一覧を見ていきましょう。

南海トラフ地震の周期

南海トラフ地震は、おおむね100年~150年の間隔で繰り返し発生することが明らかとなっています。
そのため、前回の南海トラフ地震(昭和東南海地震・1944年および昭和南海地震・1946年)が発生して70年以上が経過した現在、次の南海トラフ地震の発生確率は着実に高まっていると言えるでしょう。

中央防災会議による「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」では、南海トラフ地震の発生確率について以下のように記載されています。(※引用2)

南海トラフ沿いの地域においては、これまで100~150年の周期で大規模な地震が発生し、大きな被害を生じさせており、政府の地震調査研究推進本部地震調査委員会における長期評価においては、この地域におけるマグニチュード(以下「M」という。)8~М9クラスの地震の30年以内の発生確率は70%~80%(2021年1月1日現在)とされている。

南海トラフ地震の歴史

過去に発生した南海トラフ地震の名称とマグニチュードの推定値は以下の通りです。

発生日地震の名称規模(推定値)前の地震から
の間隔
684年11月29日白鳳(南海)地震M8 1/4
887年8月26日仁和(南海)地震M8 1/4203年
1096年12月17日永長(東海)地震M8.0~8.5208年
1099年2月22日康和(南海)地震M8.0~8.32年2ヶ月
1361年8月3日正平(南海)地震M8 1/4~8.5262年
1498年9月20日明応東海地震M8.2~8.4137年
1605年2月3日慶長地震M7.9106年
1707年10月28日宝永地震M8.6103年
1854年12月23日安政東海地震M8.4147年
1854年12月24日安政南海地震M8.432時間
1944年12月7日昭和東南海地震M7.990年
1946年12月21日昭和南海地震M8.02年

過去の南海トラフ地震で最も被害が大きかったのは1707年に発生した宝永地震で、最大マグニチュードは8.6、最大余震はM6.5~7.0とされています。
震害は駿河中央部から九州まで及び、東海道・伊勢湾沿岸・紀伊半島では過去最大の被害となりました。

南海トラフ地震が起きた場合はどうすればいい?

ここからは、今後南海トラフ地震が発生したときのために知っておくべき知識や必要な備えを解説していきます。

避難するタイミング

<h4>南海トラフ地震臨時情報とは

地震発生時に避難すべきか迷ったときは「南海トラフ地震臨時情報」の発令内容に目を向けてみましょう。
南海トラフは影響を受ける範囲が広いため、東側と西側で地震発生までの時間差が生じるケースがあります。

つまり、南海トラフに該当するいずれかの地域で地震が発生した場合、その他の地域でも時間差で地震が発生する可能性があるということです。
これは、地震の発生をかなり高い確率で予知できることにつながります。

そのため、南海トラフにおいて地震が観測された時、この時間差を利用した「南海トラフ地震臨時情報」が発表されることになっているのです。

※引用3

南海トラフ地震に関連する情報として発表される内容には以下の2種類があります。

情報名情報発表条件
南海トラフ地震臨時情報・南海トラフ沿いで異常な現象が観測され、その現象が南海トラフ沿いの大規模な地震と関連するかどうか調査を開始した場合、または調査を継続している場合
・観測された異常な現象の調査結果を発表する場合
南海トラフ地震関連解説情報・観測された異常な現象の調査結果を発表した後の状況の推移等を発表する場合
・「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の定例会合における調査結果を発表する場合(ただし南海トラフ地震臨時情報を発表する場合を除く)
※すでに必要な防災対応がとられている際は、調査を開始した旨や調査結果を南海トラフ地震関連解説情報で発表する場合があります
※引用4

また情報発令の際に付記されるキーワードは以下の通りです。
(キーワードの表示例:「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」など)

キーワード各キーワードを付記する条件
調査中下記のいずれかにより臨時に「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を開催する場合
・監視領域内(下図黄枠部)でマグニチュード6.8以上の地震が発生
・1カ所以上のひずみ計での有意な変化と共に、他の複数の観測点でもそれに関係すると思われる変化が観測され、想定震源域内のプレート境界(下図赤枠部)で通常と異なるゆっくりすべりが発生している可能性がある場合など、ひずみ計で南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる変化を観測
・その他、想定震源域内のプレート境界の固着状態の変化を示す可能性のある現象が観測される等、南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる現象を観測
巨大地震警戒想定震源域内のプレート境界において、モーメントマグニチュード8.0以上の地震が発生したと評価した場合
巨大地震注意・監視領域内において、モーメントマグニチュード7.0以上の地震が発生したと評価した場合(巨大地震警戒に該当する場合は除く)
・想定震源域内のプレート境界面において、通常と異なるゆっくりすべりが発生したと評価した場合
調査終了(巨大地震警戒)、(巨大地震注意)のいずれにも当てはまらない現象と評価した場合
※引用4

上記の内容・種類によっては、自治体から避難指示が出される可能性があります。
また避難指示が出ていない場合でも、避難所が開設されるなど自主的な避難が可能となるケースもあるため、現在どの情報が発令されているのかを確認できるようにしておきましょう。

事前避難の場合は長期化への備えも必要

南海トラフ地震臨時情報を受けて事前避難を行う場合は、避難生活が長期化するリスクへの備えが必要です。
地震が発生したあとの避難生活と異なり、事前避難の場合は「地震が発生するかもしれないが、発生しないかもしれない」という状況の中で過ごすことになります。

そのため事前避難をしてから3日以上経過すると、自分たちで“地震は起こらない”と判断して元の生活に戻っていく方も少なくないのです。
また避難所に残っている方も、「自分たちも戻るべきか?でも戻ったあとで地震が起きたら?」と迷いを抱えるようになります。

このような不確定な状況は心理的・肉体的な負担が大きくなる他、更なる長期化で経済的な問題を併発する可能性もあるでしょう。
事前避難の場合は移動前に準備時間を確保できるので、食料・水・着替えなどの日用品を多めに用意し、ある程度長期化しても生活できるよう備えてから避難することが大切です。

南海トラフ地震に対する家庭での備え

南海トラフ地震の発生直後は、避難所・自宅ともに食料や物資などが不足する可能性が極めて高いと言えます。
通常は自治体からの支援を受けられますが、被害状況によっては自治体もすぐに動けなかったり、支援が行き渡るまでに時間を要したりすることが考えられるでしょう。

こうした状況でもある程度自分たちでやり繰りができるよう、日頃から以下の備えを意識することが大切です。

  • 自宅の耐震診断・耐震改修、家具類の固定、窓ガラスの飛散防止
  • 家族どうしの連絡手段、避難場所の確認
  • 可能な限り1週間分程度、最低でも3日分程度の飲料水(1人1日3リットル以上)・食料等の備蓄、携帯ラジオ・懐中電灯等の準備
  • 地域等で行われる防災訓練への積極的な参加

※引用1

なお避難経路については、地震の被害によって道が塞がれたり、ひどい渋滞に巻き込まれたりする可能性もあるため、複数の行き方を検討しておきましょう。
また避難所自体も大勢の人で混雑することから、家族の集合場所を決める際はなるべくピンポイントで指定しておくとスムーズです。

ネット上のデマ情報に注意!

南海トラフ地震に限らず、災害が発生した際にはSNSなどで情報を得ることもあるでしょう。
しかし、SNSには真実と合わせて様々なデマ情報も流れているため、目に入る情報を鵜吞みにせず、きちんと事実関係を行う必要があります。

実際、過去には以下のようなデマ情報がSNSで拡散され、多くの人に誤解を与えました。

発生日地震の名称SNSで拡散されたデマ情報
2011年3月東日本大震災うがい薬で放射能の被曝を防ぐ・外国人の犯罪が増えている
2016年4月熊本地震動物園のライオンが逃げた・朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ
2018年9月北海道胆振東部地震携帯電話があと4時間しか使えない

こうしたデマ情報で混乱することがないよう、SNSで災害情報を確認する際は以下の点に注意しましょう。

  • 情報の発信元に信頼性があるか(政府・役所・警察など)
  • 情報が最新ものであるか
  • ラジオなどの報道機関でも同じ情報が出ているか など

参考として、政府や警察などが運営しているSNS(Twitter)アカウントをいくつかご紹介します。

NHK生活・防災@nhk_seikatsu(https://twitter.com/nhk_seikatsu)
首相官邸(災害・危機管理情報)@Kantei_Saigai(https://twitter.com/kantei_saigai)
内閣府防災@CAO_BOUSAI(https://twitter.com/CAO_BOUSAI)
総務省消防庁@FDMA_JAPAN(https://twitter.com/FDMA_JAPAN)
防衛省・自衛隊@ModJapan_jp(https://twitter.com/ModJapan_jp)
気象庁@JMA_kishou(https://twitter.com/jma_kishou)
警視庁警備部災害対策課@MPD_bousai(https://twitter.com/MPD_bousai)

まとめ

南海トラフ地震は今後30年以内に70~80%の確率で発生すると言われています。
災害に直面した場合はパニックに陥りやすいため、いざという時に慌てることのないよう、今のうちから準備を進めておくことが大切です。
水や食料の備蓄を定期的に見直す・家具の転倒防止・避難経路の確認など、できることから少しずつ始めていきましょう。

※引用1 愛知県庁業務継続計画[愛知県南海トラフ地震想定]https://www.pref.aichi.jp/uploaded/life/121885_81785_misc.pdf

※引用2 中央防災会議

http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/pdf/nankaitrough_keikaku_honbun.pdf)”

※引用3 高知県 南海トラフ地震臨時情報について

https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/010201/2020062900139.html

※引用4 気象庁 南海トラフ地震に関連する情報の種類と発表条件

https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/nteq/info_criterion.html

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