洪水被害にあったらやるべきこととは

洪水の被害が毎年のように起きるようになった日本

ここ数年、毎年のように大雨と洪水の被害が報道されています。大雨で川が増水、氾濫して周辺の世帯の1階が水没してしまった、孤立した、大雨で地盤が緩んで土砂崩れが起きて家屋が押しつぶされた、車が流された、など甚大な被害を受けたところもあります。ご自分の家は大丈夫なのかが不安になる方も多いことでしょう。備えていても自然災害の規模は予想できないもの。この記事では洪水で家が浸水したり倒壊したりして被害を受けたときの対処法、洪水を想定してできる対策について解説します。

家に関して想定される洪水被害は?

洪水とは川の水が増えて溢れることです。大雨や雪解け水で川の水量が増し、堤防を越えて周辺に水が及び被害をもたらします。洪水が起きた際、住居の被害として床下浸水、床上浸水、全壊、半壊などが想定されます。床上浸水のような場合、水が引いたとしても汚れや匂いのせいですぐに生活に使えるような状態ではありません。水が浸入することや土砂が流れ込んだりすることで家屋自体が壊れてしまっていることもあり甚大な被害となります。災害におけるそれぞれの被害程度は以下のように定義されており、自治体等の被害認定の際に使われています。

 床下浸水:住居の床の下までの浸水状態をいいます。消防庁の「災害報告取扱要領」によると、床下浸水とは「床上浸水にいたらない程度に浸水したもの」と定義されています。国土交通省の「川の防災情報」によれば、「一般の家屋では浸水深さが50cm未満の場合は床下浸水、50cm以上になると床上浸水する恐れがあります」とされています。これは、建築基準法で「床の高さは45㎝以上とする」と定められたことを根拠にしたものです。 

床上浸水:住居の床の上まで浸水して住居として使えない状態を言います。消防庁の「災害報告取扱要領」によると、住家の床より上に浸水したもの及び全壊・半壊には該当しないが、土砂竹林のたい積により一時的に居住することができないものとする」と定義されています。

全壊・半壊:全壊や半壊という言葉は罹災証明書(り災証明書)による災害の程度で用いられます。罹災証明書とは、地震、台風、津波などの天災によって住民が被害を受けた場合に、その被害の程度に応じて、自治体が被害認定して発行する証明書です。罹災証明書の申請をすると専門の調査員が住居の場所を訪れ、現地調査をしたうえで住宅の被害の程度を認定します。床下浸水の場合は半壊に至らない(損害割合20%未満)、床上浸水の場合は損傷の程度によって半壊に至らないものから全壊までとされています。(出典:内閣府 災害に係る住家の被害認定基準運用指針<被害認定フロー(水害による被害  木造・プレハブ)>http://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/r303shishin_all.pdf)より)

洪水被害に遭ってしまったら(床上浸水の場合)

では実際に洪水被害に遭ってしまい床上浸水してしまった場合、どのように対応すればよいのか、順に解説します。

床上浸水でまず始めにやることは避難と安全の確保

今年から、避難指示の方法が変更になっています。「高齢者等避難」で、高齢者は確実避難。それ以外の方も、避難指示を待つのではなく、積極的に動くようにしましょう。

‘(出典・内閣府・消防庁)

まずは身の安全を確保します。不幸にして床上浸水になるかもしれない事態になった場合、移動ができるうちに避難所に移動しましょう。2階がある家の場合は2階で生活できる可能性もありますが、床上浸水したような場合には電気、ガス、水道のようなライフラインに問題が生じていることが考えられます。

炊事場、トイレ、風呂などの水回りが1階にあるような場合、設備が使用できなくなるでしょう。床上浸水後、復旧が完了するまでは自宅には住めないことを想定し、一時的に避難所に移ることが得策です。ご家族にお子さんや高齢者がいらっしゃる方は、移動に時間がかかることを考えて早めに避難を行うようにしてください。車を所有している場合、避難所へ車で移動するかどうかは迷うかもしれません。しかし、急に水かさが増した場合には車が水没して、車の中に閉じ込められてしまうようなことも考えられます。冠水の状況や浸水の速度によっては車での移動はしないようにしましょう。避難所に移動したら当座の生活ができる環境が確保し、洪水の状況を確認します。洪水が収まり水が引いて家の付近に近寄れる状態になるまで待ちましょう。

①まずは何よりも先に「写真を撮る」

身の安全が確保できたら、家の被害状況を記録して罹災証明書の発行に備えましょう。罹災証明書は国の災害補助金の申請や保険の申請に必要になるもので、自治体の担当者が現地を訪れて被害状況を確認して全壊、半壊、などの認定をします。浸水の状況などは日を追って変わっていくことから、被害が最もひどかったときに自治体の担当者が見に来てくれるとは限りません。客観的に被害の状況を理解してもらうために写真を撮影しておくことはとても有効です。写真を撮るときのポイントは次のとおりです。

1.建物の全景を撮る

・遠景で建物の4面を撮影します

2.浸水した深さを撮る

・メジャーを使って水が浸かった深さが分かるようにして撮影します

・測定場所がわかるように遠景を撮影

・メジャーの目盛りがわかるように近景も撮影する

3.被害を受けた箇所個別に撮る

・被害箇所ごとに遠景と近景の2枚セットで撮る(被害箇所がわかるように指を差して撮る)

②インフラの被害の確認

次にやることは家の片づけです。まず、ガス・水道・電気が使える状態かどうかを確認します。ガス漏れがないか、ブレーカーが落ちているかを確認して、ガス漏れしていたり電線から火花が散っていたりなどの危険な状況があれば近づかないようにして消防署、ガス会社、電気会社に連絡して復旧を待ちます。家に近づける状態になったら次は片付けです。水道と電気が使えると片付け作業は楽になります。

③床上浸水した家の泥を掻き出す

次は家の中に流れ込んだ泥の処理。実は洪水後の片づけで一番大変な作業は泥の処理なのです。単に泥をかき出すという作業ではなく、臭気を放つヘドロを除去しカビが繁殖した家屋を消毒します。泥が放つ強烈な臭いと感染症リスクを伴う泥の片付け作業は肉体的・精神的に非常に苦痛をもたらします。無理をしすぎないよう、互いに助け合い、ボランティアなどに頼れる状況であれば積極的に頼りましょう。

・屋内にカビが発生している可能性があるためドアと窓の開放する

洪水後数日して自宅に戻った場合、屋内にカビが発生している可能性があります。室内に入ったら早急にドアと窓を開放して屋外に出て、30 分以上換気した後に改めて家の中に入るようにします。片付け、清掃、消毒が完了するまでは子供やペットは室内に入れないように注意しましょう。

 ・片付けで怪我をしないように万全の装備を

泥の掻き出し作業を始める際には怪我を防ぐために厚手の丈夫なゴム手袋、底の厚い靴やゴム長靴、目の保護のためのゴーグル、マスクを着用して作業をします。特にカビや細菌を吸い込まないようにすること、手や足でガラス片や突起物に触れて切り傷、擦り傷を作ってしまわないようにすることが感染症対策にはとても重要です。

 ・泥(ヘドロ)の掻き出し

室内の泥の除去はスコップや板切れなどで掻き出します。大方掻き出せたらバケツに汲む、ホースで水を流すようにして家の外に出します。高圧洗浄機があれば隙間の泥やこびりついた泥も簡単に除去して流すことができますので、電気が使える場合はまず調達したいツールです。清掃中から強烈な臭いがあるような場合、希釈した消毒液を撒いておくことで多少緩和されます。屋外に出した泥は土嚢などに入れておき、後々自治体が回収してくれるまで庭に置いておきます。側溝に流したりするとヘドロが詰まり下水が使用できなくなる恐れがあるためです。泥は乾燥するとホコリとして舞います。窓を開けて乾燥させる間も部屋の中にホコリとして積もるため、定期的に掃きだすことが必要です。

④浸水した車や被害を受けた家財道具の運び出し

泥を掻き出したのち、浸水して動かなくなってしまった車や、使えなくなった家具等を移動します。動かなくなってしまった車は、買った販売店やJAFに連絡して回収してもらい、代車を手配するようにします。販売店も同じように浸水していたりすれば回収の手配は難しい場合もあるでしょう。そのときはJAFに連絡して相談しましょう。使えなくなった家財道具については家の外に運び出し、自治体が指定する収集場所に持っていき回収してもらいます。金属性のものや陶器の食器などは消毒して使うことはできるかもしれませんが、木や畳のような材質のものは消毒も難しく、捨てるしかありません。自治体の収集とは別に回収業者が回ってきて回収を手伝ってくれるようなことがありますが、悪徳業者である場合があり、後に高額請求をされるケースがありますので利用しないほうが良いでしょう。

家の修理を行う

室内の泥の除去と使えないものの移動が完了した後、本格的に家の修理を手配します。床上浸水して濡れてしまった壁や床はすぐカビが生えてしまい、乾燥して消毒をすればすぐ使えるようなるレベルとは程遠い状況です。

壁と床を外し、骨組みだけにした上で乾燥させ、壁と床を取り替える必要があります。早めに家を施工した工務店等に連絡して見積もりをお願いし、修理に入ってもらう段取りを整えましょう。床下についてはシロアリ業者も乾燥の施工ができることがありますので、問い合わせをしてみるのも方法です。修理の依頼が殺到して、すぐに着工できないような場合も考えられます。そのような場合でも修理の見積もりだけは取るようにし、自治体の補助金の申請の場合の補助資料として用意しておくようにしましょう。すぐに着工できない場合は自分で施工するしかなくなります。知り合いの方で詳しい人がいなければ、工務店の方やDIYのお店の方に伺う、Youtubeやブログ等で調べて対応しましょう。

⑤罹災証明書の申請を行う

自治体の罹災証明書申請の受付が始まったら申請を行います。自治体に問い合わせて手続きを確認してください。罹災証明書は行政の支援金や保険の申請に必要になります。損害の状況により支援金や保険の支給額が変わることから被害状況を正確に伝えることが大事です。被害を受けた後に撮っておいた現場の状況写真が活きてきます。

⑥支援金が支給されるか問い合わせてみる

行政から支給される支援金は、「被災者生活再建支援制度」が中心です。これは全壊・大規模半壊・中規模半壊など被害の状況によって支給額が決定される仕組みです。下の表のように基礎支援金と加算支援金があり、合計すると全壊なら150-300万、大規模半壊なら100-250万、中規模半壊なら25-100万支援されます。「被災者生活再建支援制度」以外にも自治体によっては支援策を用意しているところがあるので問い合わせをしてみるといいでしょう。

※家の主要な構成要素の経済的被害の住家全体の価値に占める割合であり、市町村による被害認定調査により判定され、罹災証明書における「全壊」「大規模半壊」等の記載に反映されるもの。 

保険の申請を行う

行政の支援のほかに火災保険等に加入している場合は保険の申請をします。通常家を建てた場合には火災保険に加入していることがほとんどだと思います。保険のプランによっては洪水被害が補償されるものもあります。加入している保険が洪水被害についても補償されるものかどうかを確認したうえで保険会社に保険の請求をしましょう。自治体の罹災証明書に基づいて被害規模が判断されます。車に関しても同様です。自動車保険の補償範囲を確認して請求。新車の場合はほぼ全額補償される場合もあります。

洪水被害に遭う前にできることもある

ここまでで洪水被害にあった場合、特に家屋が床上浸水した場合の対応方法について解説しました。これから洪水被害に遭う前にできる対策について解説します。

ハザードマップの確認

ご自分の住まいがある自治体が用意しているハザードマップを確認しておきましょう。ご自分が住む場所+ハザードマップで検索すれば自治体が提供するハザードマップが表示されます。浸水する可能性がある地域が色で示されていますからご自分の住居がある場所の浸水想定を確認しておきましょう。

保険の補償内容確認と見直し

ハザードマップを確認したら、家屋につけている保険の補償内容を確認しましょう。浸水想定があるのに保険に補償がついていないような場合や補償の範囲が十分でないような場合は契約の内容の見直しを検討しましょう。

必要な物資を準備しておく

ハザードマップの確認と保険の補償内容の確認のほかにできることは、洪水が起こったときにするべきことをまとめておき、必要な物資を準備しておくことです。例としてはどのくらいの規模の洪水警報が出たときには何を持ってどこに避難する、というように行動を決めておき、飲料水や非常食、最低限必要な洋服等を決めて準備しておくことがオススメです。家族がそろっているときに洪水が起こるとは限りませんので、家族がバラバラになってしまった場合の連絡の方法(親戚に必ず連絡するようにする、など)を決めておくと安心です。あとは、洪水被害に遭ってしまった後の片付けのことを想定して、高圧洗浄機や泥を収納する袋、スコップなどを装備すれば万全と言えるのではないでしょうか。

洪水被害をシュミレーションしておくことも意義がある

洪水被害を経験したことがある方は多くはないかもしれません。それだけに被害に遭ってしまってからやるべきことを一度はシミュレーションしてみて必要な対策を考えておくことは有意義なことです。準備次第で、被害を最小限に押さえ、復旧を早めることが可能です。少しでも被害を少なくして家族を守る、財産を守るためにも一度洪水対策を検討してみることをオススメします。以下の関連記事も参考にしてみてください。

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