【歴史から学ぶ】名古屋市の水害の歴史と浸水実績から見る危険地域

名古屋市は市内を大小さまざまな河川が流れ、古くから洪水や高潮など大規模な水害が発生してきました。
今回は昭和34年の伊勢湾台風や平成12年の東海豪雨など過去の主な水害をデータからとらえ、危険性を説明します。
また、名古屋市が作成した浸水実績図などを活用して、市内の危険区域を詳細についても紹介します。

歴史を知ることで、お住まいの地域やこれから住もうとしている地域の水害の危険度を知ることが可能です。
名古屋市の水害時の避難行動の目安も取り上げました。
人命にかかわることなので、家族で確認しておきましょう。

名古屋市は水害が過去に何度も起こっている


濃尾平野に位置する名古屋市は、庄内川や太白川など大きな河川が流れています。
川はさまざまな恵みをもたらしますが、時には台風や豪雨で氾濫して水害を起こします。
代表的な水害の被害などを紹介します。

伊勢湾台風

昭和34年9月伊勢湾周辺を襲った大型台風。台風による死者・行方不明者の数は現在でも最大級と呼べるものです。
愛知県・三重県を直撃し、名古屋市は暴風や高潮により新川・天白川・山崎川では、堤防が決壊し浸水被害などが起こり異例の災害となりました。
被害総額は愛知県全体で3,224億円と推定されています。

被害状況(名古屋市)
<人的被害>
死者・行方不明者 1,851人
負傷者(重症)1,619人(軽傷)38,909人
<住家被害>
全壊 6,166棟 半壊 43,249棟 流失 1,557棟
浸水(床上浸水)34,883棟 (床下浸水)32,496棟

台風7・8号

平成10年、2日続けての台風の襲来を受けました。
最大瞬間風速は42.6m/秒を記録しました。
伊勢湾台風の最大瞬間風速45.7m/秒に次ぐ記録です。
強風と大雨で鉄道・高速道路・航空は全面的にストップしました。
被害総額は愛知県全体で33億円と推定されています。

被害状況(愛知県)
<人的被害>
死者 3人
負傷者151人
<住家被害>
全壊 8棟
浸水(床上浸水) 8棟

平成20年8月末豪雨

平成20年8月特に東海地方などで記録的な豪雨となり、矢田川、天白川、日光川などが浸水しました。
名古屋市では南区、千種区などでおよそ36万世帯に避難勧告が発令。中村区や中川区などが内水氾濫などで1万2,000棟以上の床上浸水・床下浸水が発生しました。

被害状況(名古屋市)
<人的被害>
死者 3人
負傷者3人
<住家被害>
全壊 5棟 半壊 1棟
浸水(床上浸水) 1,175棟 (床下浸水) 9,929棟

名古屋市を飲み込んだ東海豪雨を振り返る


名古屋市で当時観測史上最大の雨量を記録した東海豪雨にフォーカスをあてて紹介します。
東海豪雨の復旧に向けて、政府や名古屋市の対応やその後の水害対策にどう活用していたのでしょうか。

名古屋市内のおよそ37%が浸水

平成12年9月11日から12日、名古屋市など愛知県は激しい集中豪雨に見舞われました。
11日から12日の総雨量は567㎜を記録しています。
2日間で年間降水量の三分の一という激しいものでした。
名古屋市を流れる庄内川・新川・天白川・境川では、堤防の決壊、浸水被害などが発生しました。
実に市内のおよそ37%が浸水しています。
伊勢湾台風と比較する大きな被害となりました。
被害総額は3、224億円以上と算定され、国が激甚災害に指定したほどの被害でした。

*激甚災害
地震や台風などの災害が起きて人々の暮らしに大きな被害を与え、援助や支援が必要と認められると、激甚災害として指定されます。激甚災害に指定されると、国や地方自治体が被災した地区や人々に援助や支援を行います。

東海豪雨復旧策へ政府の取り組み

政府の対応は、まず東海豪雨を激甚災害に指定しました。
さらに自衛隊(延べ9,700名)、海上保安庁(延べ471名)、消防署、警察署などが出動して孤立者救助などの救助活動を展開しています。
また全国から排水ポンプ車20台を集めて排水活動を行いました。

河川激甚災害対策特別緊急事業を早急に実施し、愛知県では新川など決壊した堤防の応急復旧工事に取りかかりました。
特に被害の大きかった新川流域と天白川流域を中心に整備することになりました。

東海豪雨復旧策へ名古屋市の対応

「内閣府災害対応資料集:東海豪雨」より一部抜粋して名古屋市の迅速かつ的確な水害時の初動対応を日別に記載します。

9月12日

愛知県から災害救助法適用決定の報告
堤防仮復旧の後方支援(土のう調達)
り災証明取扱い各区へ周知 市民相談室に相談窓口を設置
被災者への公営住宅の提供 申込受付

9月13日

災害義援金の受入開始
被災中小企業への災害復旧資金融資の実施

9月14日

市民へのり災証明、市税減免申請の受付、相談対応開始
災害復旧に関する補正予算の専決処分(手続き)
道路上の土砂、ゴミ撤去着手
住宅の応急修理説明相談、受付、審査 開始

東海豪雨を教訓にした具体的な水害対策

    • 浸水被害が甚大だった地区へポンプの増強や雨水貯留施設の建設・設置を行いました。

 

    • 監視カメラを導入。水害危険スポットへの24時間監視を始めました。

 

    東海豪雨など浸水被害に基づいた区別に浸水予想地域を表した洪水ハザードマップを平成22年に作成しました。

名古屋市の水害につながる洪水予報河川

洪水予報河川とは

河川の増水や氾濫など水防活動の判断材料や市民の避難行動の指針を目的に、国土交通省や都道府県と気象庁が手を結び指定した河川の水位や流量などの洪水に関する予報を発表しています。

名古屋市では庄内川・矢田川・新川・天白川・日光川の5つの河川を洪水予報河川と認定。愛知県洪水浸水想定区域図に基づいてこれらの河川が氾濫した場合、どこが浸水被害を受けるのか紹介します。

庄内川

庄内川が氾濫すると北区、守山区、港区、東区、西区、中川区、熱田区、中区、昭和区、千種区が被害を受けると想定しています。
(指定の前提となる降雨 庄内川流域の24時間総雨量が376㎜)

矢田川

庄内川水系である矢田川が氾濫すると最大規模で千種区、東区、北区、西区、中村区、港区、熱田区、中川区、守山区が被害を受けると想定しています。
(指定の前提となる降雨 庄内川流域の24時間総雨量が578㎜)

新川

庄内川水系である新川が氾濫すると最大規模で守山区、港区、中川区、中村区、西区、北区が被害を受けると想定しています。
(指定の前提となる降雨 新川流域の24時間総雨量が751㎜)

天白川

天白川が氾濫すると港区、南区、緑区、天白区が被害を受けると想定しています。
(指定の前提となる降雨 天白川流域の24時間総雨量が423㎜)

日光川

日光川が氾濫すると港区、中川区が被害を受けると想定しています。
(指定の前提となる降雨 日光川流域の24時間総雨量が342㎜)

名古屋市の水害時の避難行動目安


名古屋市では洪水や内水氾濫による浸水が想定される地域を表したハザードマップを作成しています。
その中に載っている避難行動の目安に基き、避難を考慮すべきロケーションや豪雨や避難情報が発表された場合、避難が必要な条件や避難の判断などを紹介行います。
現在の住まいが避難行動の指針に該当しない地域でも、万が一に備えて避難できる準備をしておくことは重要です。

避難を考慮すべきロケーション

自宅が川沿いにある、堤防の近くにある場合は洪水で堤防が決壊して家屋の浸水や倒壊の恐れがあります。
避難情報が出たら緊急避難場所もしくは鉄筋コンクリート造の安全な建物へ避難しましょう。

最大浸水深の高さ別避難の判断

最大浸水深とは、洪水・津波などで浸水した場合、水面から地面までの深さのことです。
一般の家屋では、浸水深が0.5m未満の場合は床下浸水、0.5m以上になると床上浸水する恐れがあります。

ハザードマップで最大浸水深が0.5m未満の地区

自宅の安全なところに待機もしくは念のため最寄りの緊急避難場所へ避難。

ハザードマップで最大浸水深が0.5~2.0m未満の地区

住まいが1階なら緊急避難場所もしくは鉄筋コンクリート造の安全な建物へ避難。
2階以上なら自宅の安全なところで待機。

ハザードマップで最大浸水深が2.0~5.0m未満の地区

住まいが2階なら緊急避難場所もしくは鉄筋コンクリート造の安全な建物へ避難。
3階以上なら自宅の安全なところで待機。

ハザードマップで最大浸水深が5.0m以上の地区

住まいが3階以下なら緊急避難場所もしくは鉄筋コンクリート造の安全な建物へ避難。
4階以上なら自宅の安全なところで待機。

浸実績図でみる洪水予報河川別要避難地区

浸水実績図は過去に水害があって、今後浸水の可能性がある地域を図にしたものです。
名古屋市浸水実績図はコチラ
名古屋市の浸水実績図は平成12年東海豪雨以降の6件の大きな浸水被害を反映しています。
洪水予報河川別要避難地区は下記の通りです。

庄内川

庄内川は、上流の志段味水位観測所と下流の枇杷島水位観測所で基準を設定し、それぞれ対象地区を決めています。

庄内川・志段味水位観測所

北区

辻・清水・金城・東志賀・城北・光城・川中・味鋺・西味鋺・楠・如意・楠西

守山区

守山・西城・白沢・鳥羽見・二城・志段味西・瀬古・志段味東・吉根・下志段味・小幡・小幡北

庄内川・枇杷島水位観測所

北区、西区、中村区、中川区、港区

全区

千種区

大和・上野・富士見台・千代田橋

東区

山吹・矢田・明倫・砂田橋

熱田区

千年・船方・野立・大宝

守山区

守山・西城・白沢・廿軒家・鳥羽見・二城・瀬古・志段味西・志段味東・吉根・下志段味・小幡・小幡北

矢田川

千種区

大和・上野・富士見台・千代田橋

東区

山吹・矢田・明倫・砂田橋

北区

六郷・六郷北・飯田・宮前・名北・辻・杉村・大杉・清水・金城・東志賀・城北・光城・川中

西区

那古野・幅下・江西・城西・榎・南押切・栄生・枇杷島・児玉・上名古屋・庄内・稲生

中村区

全学区

熱田区

千年・船方・野立・大宝

中川区

野田・常磐・愛知・広見・露橋・八熊・八幡・玉川・昭和橋・篠原・荒子・中島・西中島・正色・正反田・長須賀

港区

中川・東海・成章・大手・港西・稲永・小碓・正保・明徳・当知・港楽・高木・神宮寺

守山区

守山・西城・白沢・廿軒家・鳥羽見・二城・瀬古

新川

新川は、水場川外水位観測所と新川下之一色水位観測所で基準を設定し、それぞれ対象地区を決めています。

新川の水場川外水位観測所

北区

味鋺・楠・如意・楠西・【辻・西味鋺】

西区

山田・平田・比良・大野木・浮野・比良西・中小田井

中川区

豊治・戸田・春田・明正・千音寺・赤星・万場

守山区

【小幡・守山・西城・白沢・小幡北・瀬古・二城】

新川の新川下之一色水位観測所

北区

味鋺・楠・如意・楠西・【辻・西味鋺】

西区

山田・平田・比良・大野木・浮野・比良西・中小田井
中川区…正色・五反田・豊治・戸田・春田・明正・千音寺・赤星・万場・長須賀・西前田

港区

南陽・福田・福春

守山区

【小幡・守山・西城・白沢・小幡北・瀬古・二城】

【】内の地域は、基準水位を超えて、さらに洗堰から新川に流入した際、対象となります。

天白川

瑞穂区

弥富・中根

南区

桜・菊住・春日野・笠寺・星崎・笠東・白水・千鳥・柴田

緑区

鳴海・片平・浦里・長根台

天白区

平針北・原・植田南・大坪・八事東・天白・山根・野並・表山

日光川

中川区

戸田・豊治・明正・千音寺・赤星

港区

西福田・南陽

名古屋市の場合、水害が起こりにくいといわれる土地は隣接する長久手市エリアです。
名古屋東部丘陵地域に位置しており、家を建てることを検討している人におすすめします。

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まとめ

名古屋市の歴史の一側面は水害との戦いの歴史でもありました。
もはや伝説と化した伊勢湾台風や記憶に新しい東海豪雨も再度被害などデータで見ると、その規模の大きさに驚きます。
総合的な治水対策の一環から生まれたハザードマップで市内の各区を見て危険区域が判断しましょう。
どこに家を建てるのか、住むのか。
浸水の有無も踏まえて住まい選びの参考にしていただければ幸いです。

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