「ZEH水準の家は高い」という話を、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
断熱材や窓のグレードを上げれば、たしかに建築費は上がります。
ただし性能が高い住宅ほど、入居後の光熱費は下がります。
つまり判断材料として見るべきポイントは、増えた建築費と減った光熱費のどちらが上回るのかという点です。
この視点を分かりにくくしているのが、「ZEH水準」と「ZEH」の混同です。
太陽光発電の設置費用まで含めた金額が語られることで、実態よりも割高な印象が広まっている面があります。
そこでこの記事では、国土交通省が公表している試算をもとに、ZEH水準にした場合の回収年数を計算します。
2028年から変わる住宅ローン控除の要件とあわせて、参考にしてみてください。
ZEH水準にすると建築費はいくら上がる?

まず押さえておきたいのが、ZEH水準がどこまでの性能を指すのかという点です。
ここを取り違えると、必要のない費用まで計算に入れてしまうため注意しましょう。
ZEH水準に太陽光発電は必要ない
名称のよく似た「ZEH水準省エネ住宅」と「ZEH」は、求められる中身が異なります。
| ZEH水準省エネ住宅 | ZEH | |
| 断熱性能 | 断熱等性能等級5以上 | 同等の断熱性能(強化外皮基準) |
| 設備の省エネ性能 | 一次エネルギー消費量等級6以上 | 一次エネルギー消費量を20%以上削減 |
| 太陽光発電などの創エネ | 不要 | 必要 |
| 考え方 | 断熱と設備でエネルギー消費を抑える | 消費を抑えたうえでエネルギーを創り出す |
※断熱等性能等級は外壁や窓などの断熱性能を、一次エネルギー消費量等級は冷暖房・給湯・照明などの設備が使うエネルギー量を評価する指標です
上表を見て分かる通り、両者は創エネ設備を前提とするかどうかが決定的に違います。
「ZEH水準にすると200万円以上かかる」といった説明を見かけることがありますが、その多くは太陽光発電や蓄電池の費用を含んだ金額です。
断熱と設備だけでZEH水準に届くケースであれば、必要な費用はこれよりかなり小さく収まります。
追加費用の目安は40万〜70万円
では、省エネ基準を満たす住宅からZEH水準へ性能を引き上げる場合、実際にいくらぐらいの費用が上乗せされるのでしょうか。
住宅事業者へのヒアリング調査に基づいて国土交通省が示した金額は1戸あたり40万〜70万円程度です。
この費用に含まれるのは、天井・壁・床・基礎の断熱材、窓や玄関ドアなどの開口部、給湯・空調・換気といった設備の性能向上分とされています。
なお、この金額はあくまで全国的な目安です。
建物の規模やもともとの標準仕様、施工会社の調達条件によって上下するため、実際の金額は見積もりで確認する必要があります。
具体的な追加費用を確認するには?
建築費の差を知る最も確実な方法は、検討している住宅会社に省エネ基準仕様とZEH水準仕様の見積もりを並べて出してもらうことです。
その際は、次の3点を明確にしておくと比較しやすくなります。
- 太陽光発電・蓄電池の費用を含むかどうか
- 断熱材と窓(サッシ・ガラス)の仕様がそれぞれどう変わるか
- 給湯器などの設備が変更されるかどうか
同じ「ZEH水準にした場合の追加費用」という言葉でも、含まれる範囲が異なれば金額は大きく変わります。
提示された数字を鵜呑みにせず、内訳まで確認することが大切です。
出典
内閣府「政策課題分析シリーズ23 省エネ住宅(ZEH)の選択に係る要因とその普及促進による経済的影響」(令和5年11月)
国土交通省「住宅ローン減税(ZEH水準省エネ住宅)」
国土交通省「家選びの基準変わります」
環境省「住宅脱炭素NAVI」
【名古屋】ZEH水準にすると光熱費はどれだけ下がる?

追加費用の目安が見えたところで、次は下がる側の金額を確認してみましょう。
国の試算では年間4.6万円の差
国土交通省は、住宅の省エネ性能ごとに年間の光熱費がどう変わるのかを試算し、公表しています。
そのなかで示されている「東京都23区等」の例は、名古屋市と同じ6地域にあたる条件です。
6地域(東京都23区等の例)における戸建住宅の年間光熱費は次のとおりです。
| 住宅の性能 | 年間光熱費 | 省エネ基準との差 |
| 今の省エネ住宅(省エネ基準) | 239,000円 | ― |
| ZEH水準の省エネ住宅 | 193,000円 | 46,000円の削減 |
| 太陽光パネル付の省エネ住宅 | 153,000円 | 86,000円の削減 |
省エネ基準を満たすだけの住宅とZEH水準の住宅を比べると、年間4万6,000円の差が生まれることが分かります。
月あたりにすると約3,800円で、電気代やガス代の請求書で体感できる程度の金額といえるでしょう。
太陽光パネルを載せた場合はさらに4万円下がりますが、これを実現するには創エネ設備の費用負担が必要となるため、ZEH水準だけを目指すのであればこの点は考えなくて構いません。
試算の前提を確認しておく
この数字を自分の家に当てはめる前に、いくつか前提を知っておく必要があります。
国土交通省の試算は、電気27円/kWh、都市ガス156円/㎥、灯油88円/Lという単価をもとに計算されています。
これは令和4年11月時点の条件で、現在のエネルギー価格とは差がある点に注意してください。
エネルギー価格が上がれば削減額はこの試算より大きくなり、下がれば小さくなります。
また、この試算に太陽光発電の売電収入は含まれていません。
発電した電力はまず自家消費に充てるものとして計算されており、売電による収入は考慮されていない前提です。
実際の光熱費は、世帯人数や在宅時間、冷暖房の使い方によっても変わるため、あくまで同条件で性能だけを変えた場合の比較として捉えてください。
愛知県内でも地域区分は一律ではない
省エネ基準の地域区分は、市町村ごとに定められています。
愛知県内では名古屋市をはじめとする大半の市町村が6地域に該当しますが、山間部では区分が異なります。
たとえば豊田市の一部・設楽町・東栄町・豊根村は4〜5地域に区分されており、より高い断熱性能が求められる地域です。
寒冷な地域ほど暖房に使うエネルギーが多いため、断熱性能を高めたときの削減額も6地域より大きくなります。
建築予定地がどの区分にあたるかは、着工前に住宅会社へ確認しておくようにしましょう。
出典
国土交通省「年間の光熱費も節約できる!|家選びの基準変わります」
国土交通省「地域区分新旧表(建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令における算出方法等を定める件)」
ZEH水準化にかかる追加費用は何年で回収できる?

ここまでに出そろった数字を使って、回収年数を計算してみましょう。
回収年数の求め方は、上乗せされた建築費 ÷ 年間の光熱費削減額です。
今回は追加費用40万〜70万円、年間削減額4万6,000円を当てはめます。
補助金を使わない場合は約9〜15年
まず、支援制度を一切使わない前提で計算します。
| 追加費用 | 年間削減額 | 回収年数 |
| 40万円 | 46,000円 | 約8.7年 |
| 55万円 | 46,000円 | 約12.0年 |
| 70万円 | 46,000円 | 約15.2年 |
追加費用が下限の40万円で収まれば9年弱、上限の70万円でも15年程度で回収できる計算です。
住宅ローンの返済期間が35年であることを踏まえると、返済期間の半分にも満たない年数で元が取れることになります。
回収を終えたあとは、光熱費の差額がそのまま家計に残ります。
35年間で見た場合、削減額の累計は161万円となり、ここから追加費用を差し引いた分が実質的な手残りです。
補助金を使えば回収年数はさらに縮む
ここに補助金を加えると、負担額は大きく変わります。
2026年度の「みらいエコ住宅2026事業」では、愛知県が該当する5〜8地域の場合、ZEH水準住宅の新築に1戸あたり35万円が交付されます。
ただし対象は子育て世帯または若者夫婦世帯に限られる点に注意が必要です。
補助金を差し引いた場合の回収年数は次のとおりです。
| 追加費用 | 補助金差引後の負担 | 回収年数 |
| 40万円 | 5万円 | 約1.1年 |
| 55万円 | 20万円 | 約4.3年 |
| 70万円 | 35万円 | 約7.6年 |
補助金が使える世帯であれば、長くても8年程度で回収できる計算になります。
また古家を解体して建て替える場合は20万円が加算されるため、負担はさらに軽くなるでしょう。
なお、この補助金には申請期限と予算上限があります。
注文住宅でZEH水準住宅として申請する場合、交付申請の期限は2026年9月30日とされており、他の区分より早く設定されています。
また予算枠を確保する「交付申請の予約」の受付は2026年8月17日で終了しているため、これから着工する住宅は対象外となる可能性が高い点に注意しましょう。
2027年度以降の制度は現時点で公表されていませんが、例年後継となる事業が設けられているため、着工時期が来年以降になる場合は最新の発表を確認してください。
住宅ローン控除の差も見逃せない
回収年数の計算には含めていませんが、住宅ローン控除の借入限度額にも大きな差があります。
2026年以降に入居する新築住宅の借入限度額は、ZEH水準省エネ住宅が3,500万円であるのに対し、省エネ基準適合住宅は2,000万円であり、その差は1,500万円にのぼります。
控除率0.7%・控除期間13年で計算すると、控除額には最大136万5,000円の差が生まれる計算です。
なお、この金額はローン残高が限度額に達している場合の最大値です。
借入額が2,000万円であれば両者の控除額は変わらないため、自身の借入予定額と照らして考えてください。
追加費用が40万〜70万円であることを踏まえると、借入額の大きい世帯にとっては、控除額の差だけで追加費用を上回るケースも十分にあり得ます。
出典
国土交通省「住宅を新築したとき・建築後使用されたことのない住宅を取得したとき|住宅ローン減税」
みらいエコ住宅2026事業「対象要件の詳細【注文住宅の新築】」
費用対効果だけでは測れない判断材料

回収年数は判断材料のひとつですが、それだけで性能を決めるべきものでもありません。
ここからは、金額に表れにくい2つの視点を補足します。
2028年以降はZEH水準が住宅ローン控除の前提条件になる
2028年(令和10年)以降に建築確認を受ける新築住宅では、省エネ基準適合住宅が住宅ローン控除の対象外となります。
つまりこの時期以降、控除を受けるにはZEH水準以上の性能が必須になるということです。
なお経過措置として、2027年12月31日までに建築確認を受けた住宅、または登記簿上の建築日付が2028年6月30日以前の住宅は対象に残ります。
ただしその場合の借入限度額は2,000万円、控除期間は10年と、通常の13年より短くなる点に注意が必要です。
土地探しからプランの確定、建築確認の取得までには一定の期間がかかります。
2028年以降の入居を考えているのであれば、ZEH水準を前提に計画を立てるほうが確実といえるでしょう。
制度変更の詳しい内容は以下の記事で解説しています。
ZEH水準はすでに特別な仕様ではない
「ZEH水準は上位グレード」という印象があるかもしれませんが、供給の実態は変わってきています。
環境省の集計によると、2024年度に新築された戸建住宅のうち、ZEH水準を満たす住宅の割合は注文住宅で61.8%にのぼります。
すでにZEH水準の住宅が6割を超えており、標準的な選択肢になりつつある状況といえるでしょう。
一方、分譲住宅(建売住宅)では17.5%にとどまっています。
注文住宅と比べて普及が遅れているため、分譲住宅を検討する場合は個別に性能を確認してください。
なお、国は2030年度以降に新築される住宅について、ZEH水準の省エネ性能を確保することを目指す方針を示しています。
現在の「上位グレード」は、数年後には最低ラインへと位置づけが変わっていく見通しです。
出典
国土交通省「住宅ローン減税」
環境省「住宅脱炭素NAVI(事業者向け情報)」
ZEH水準の住宅に関するよくある質問
Q 太陽光発電を載せないとZEH水準にはなりませんか?
太陽光発電がなくてもZEH水準は満たせます。
ZEH水準省エネ住宅の要件は、断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上という2点です。
断熱材や窓の性能を高め、高効率な給湯器や空調を採用することで到達できる水準となっています。
Q 分譲住宅でもZEH水準かどうかを確認できますか?
確認できます。
新築の分譲住宅には、省エネ性能を示す「省エネ性能ラベル」が表示されており、断熱性能の等級やエネルギー消費性能、年間の目安光熱費等が記載されているため、複数の物件を同じ基準で比べられます。
より確実に確認したい場合は、販売事業者に建設住宅性能評価書または住宅省エネルギー性能証明書の有無を尋ねてください。
いずれも住宅ローン控除の申請時に必要となる書類で、断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級が記載されています。
Q 断熱性能を上げることで光熱費以外にもメリットはありますか?
冬の室温を保ちやすくなる点が挙げられます。
世界保健機関(WHO)は、冬季の室内温度を最低でも18℃以上に保つことを強く勧告しています。
室温が18℃を下回ると、血圧の上昇や呼吸器系疾患のリスクが高まるとされているためです。
国土交通省の調査では、この勧告を満たさない住まいが全国の約9割を占めるという結果が示されています。
夏の暑さが厳しい名古屋エリアでは冷房効率に目が向きがちですが、冬の室温を安定させる効果を同時に得られる点も大きなメリットといえるでしょう。
Q 断熱等級6まで上げたほうが得ですか?
等級6以上にする場合の追加費用については、国が公表している試算がありません。
そのため等級5と同じように回収年数を計算することは難しいのですが、補助金の面では差があります。
断熱等級6以上などの要件を満たす「GX志向型住宅」は、みらいエコ住宅2026事業で110万円(5〜8地域)が交付され、これには世帯要件がありません。
子育て世帯・若者夫婦世帯に限られるZEH水準住宅の35万円と比べると、条件次第では負担の逆転もあり得るでしょう。
まずは等級5と等級6それぞれの見積もりを取り、補助額を差し引いた実質負担で比較してください。
出典
国土交通省「住宅を新築したとき・建築後使用されたことのない住宅を取得したとき|住宅ローン減税」
国土交通省「省エネ性能ラベル|家選びの基準変わります」
みらいエコ住宅2026事業「対象要件の詳細【注文住宅の新築】」
まとめ
- ZEH水準化の追加費用は40万〜70万円程度とされ、名古屋と同じ6地域の試算では光熱費が年4万6,000円下がるため、約9〜15年で追加費用を回収できる試算になる
- 子育て世帯・若者夫婦世帯なら補助金35万円が使えるほか、住宅ローン控除の借入限度額もZEH水準は3,500万円と省エネ基準適合住宅の2,000万円を大きく上回る
- 2028年以降に建築確認を受ける住宅では、ZEH水準を満たさないと住宅ローン控除が原則使えなくなる
「ZEH水準は高い」という印象の多くは、太陽光発電の費用まで含めて語られていることに起因します。
断熱と設備だけでZEH水準に届くのであれば、追加費用は想像より小さく収まる可能性があるでしょう。
まずは検討中の住宅がどの水準にあるのかを確認し、性能を上げた場合の見積もりと補助制度をあわせて比較することが大切です。
なお、ZEH水準に太陽光発電を組み合わせた場合、年間の光熱費はさらに4万円程度下がる試算です。
発電と蓄電を備えた住宅であれば、停電時にも電力を確保することができます。
南海トラフ地震への備えが求められる愛知・名古屋エリアでは、平時の家計と非常時の安心を同時に満たせる選択肢といえるでしょう。
東新住建の「発電シェルターハウス」は、こうした創エネ・蓄エネを取り入れた住まいです。
実際の性能や仕様については、コチラのページからご確認いただけます。




















