民泊投資はやばい?割高?コストが回収できない?

かつて「誰でも稼げる」ともてはやされた民泊投資ですが、今では「やばい」「割に合わない」「儲からない」といった声が目立つようになりました。
実際、物件価格は高止まりのまま、運営コストは右肩上がり。さらに、法規制の厳格化でコスト回収できずに撤退する投資家も少なくありません。

本記事では、民泊と賃貸経営の収益状況をデータで徹底比較しながら、民泊投資の実態を検証していきます。「本当に今、始めるべき投資なのか?」と迷っている方は、ぜひ最後までご覧ください。

民泊投資ブームは終焉を迎えている?

ブーム到来当初、「簡単に儲かる」と華々しく宣伝された民泊投資。インバウンドブームに乗じて、多くの個人投資家が民泊市場に参入しました。

しかし、コロナ禍を経て市場環境が激変し、現在多くの投資家が厳しい現実に直面しています。「月収50万円」「放置していても稼げる」といった甘い謳い文句に踊らされ、高額物件を購入した投資家の多くが、今や収支の悪化や赤字に悩まされています。

インバウンド需要の回復とともに民泊市場も復活の兆しを見せているものの、供給過多と運営コストの高騰により、個人投資家レベルでの収益確保は以前にも増して困難になっているのが実情です。

データで検証する民泊投資の厳しい現実

「簡単に儲かる」という幻想から目覚めた投資家たちは、いま何を思い、どのような選択をしているのでしょうか。

データ・実例を基に、民泊投資の現実を徹底的に検証していきます。

①市場規模・稼働率の実態

住宅宿泊事業(民泊新法)の届出数は、2018年6月15日の法施行以降、着実に増加し続けています。2025年5月15日時点では、その数は50,746件にも達しました。平成30年6月15日時点における届出件数はわずか2,210件だったことを考えると、この7年間で20倍以上に急増したことになります。

同時に、事業廃止(届出取り消し)件数は18,883件と3分の1以上になっています。都道府県ごとの届出状況は、以下のとおりです。

(出典:国土交通省 民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業法の施工状況」)

②収益性の現実

一般的に、民泊の利益は「宿泊料金×客室数-運営コスト」で計算されます。

観光庁の「宿泊旅行統計調査」によれば、2024年の全国平均の宿泊費単価(全施設タイプ)は年間16,927円と、2023年の13,802円から約22.7%の上昇が見られました。四半期別で見ると、2024年4~6月期は前年同期比129.4%増と、特に春から初夏にかけて大きく価格が跳ね上がっています。

このように、宿泊単価が上昇している背景には、

  • インバウンド需要の回復
  • 物価上昇や最低賃金の引き上げ
  • 人手不足による人件費高騰

などがあり、民泊も例外ではなく、宿泊単価は上昇しています。しかし、民泊特有のルール、特に年間180日規制があるため、収益性は期待ほど上がっていないのが現実です。

③コスト構造データ

では、民泊投資における代表的な支出項目とその実態を以下にまとめました。

【民泊運営に必要な主な経費】

清掃費・リネン代1回あたり5,000~12,000円が相場。
運営代行費用(委託費用)業者に委託する場合、売上の15~30%程度が相場。
広告掲載料(OTA)宿泊料金の10~15%前後。
備品・消耗品の補充費トイレットペーパーや洗剤、タオル、アメニティなどを毎回の宿泊ごとに補充。
Wi-Fi通信料1月あたり4,000~6,000円程度が相場。
電気・水道・ガス宿泊者が自由に使用するため、年間で数十万円規模の光熱費がかかるケースも。

【無視できない設備投資・維持費】

スマートロックや監視カメラ設置初期費用として5万~20万円前後。
消防設備法令遵守のため消火器や避難経路などの設置費用。
家具・家電の修繕・取替費用利用頻度が高いため、3~5年ごとの更新が前提。(毎月3,000円程度の積立 )

【見落としがちな税金・保険・各種手数料】

固定資産税所有する物件に対して毎年課される税金。エリアや建物の構造・築年数によって異なるが、年間数十万円規模になることもある。※民泊で減税されることは基本的にない。
住民税・所得税副業扱いでも、確定申告が必要。税率によっては収益の2~3割を納税。 
火災・施設賠償保険料宿泊業としての補償範囲が必要になり、通常の住宅用保険より割高。 
行政への届出委託業者によっては、月額1~3万円前後かかるケースも。

上記のとおり、民泊は運営維持における固定コストが非常に高額です。これらすべてを踏まえたうえで、利益を出し続けなければなりません。

④法規制・環境変化の影響

住宅宿泊事業法による年間営業日数180日制限に加え、各自治体による上乗せ規制が強化されています。

【地域による制限の一例】

東京都大田区・条例内容:住居専用地域では平日の営業禁止・民泊は基本的に金曜正午~月曜正午までの週末限定営業のみ可能。・一戸建て住宅での営業も、住民説明会や近隣住民の同意が求められる場合あり。
東京都新宿区・条例内容:学校周辺では平日営業禁止
・学校・保育園・児童施設から100m以内のエリアでは、月曜~金曜の営業禁止。
・住居専用地域では年180日の営業上限を守っていても、平日営業が実質難しいエリア多数。
京都市・条例内容:住居地域は1月15日~3月15日以外の期間のみ営業可
・市内の住居専用地域では年間約2ヶ月間(冬季)しか営業できない。
・観光シーズンと営業可能時期がずれるため、民泊収益への影響が大きい。
大阪市・条例内容:地域によっては管理者の常駐義務・特区民泊(旅館業法を使わない独自制度)においても、一部地域では24時間対応可能な管理人の配置が求められる。・集合住宅では住民トラブルが多く、管理規約で禁止されているケースも多い。

この他にも、マンション管理組合による民泊禁止決議も相次いでおり、既存物件での民泊運営継続が困難になるケースが増加しています。

民泊投資経験者のリアルな声

インバウンドの波に乗って始めた民泊投資で、厳しい現実に直面した方は少なくありません。実際に民泊投資を経験した人たちは、何を感じ、どんな壁にぶつかったのか?現場で起きたリアルを紹介します。

賃貸経営への転換事例

平林さん(40代・会社員)は、都心部の1DK物件(2,400万円)を購入し、民泊として3年間運用してきました。
当初は「月収24万円はいける」と期待していましたが、実際には思わぬ壁に直面します。

「1年目こそ良かったものの、利用者の入れ替わりが激しく、意外と室内の使い方が荒いんです。汚れも多くて、自分では掃除が追いつかず、清掃を外注することにしました」

ポータルサイトへの掲載料や管理委託費などを含めると、平均で毎月11万円以上が運営コストに消えていきました。雨漏れによる修繕費も重なり、結果として3年間の収支は非常に不安定な結果に。

現在は民泊をやめ、月12万円で通常の賃貸に切り替えたことで、安定収入と精神的な余裕を手にしたといいます。
「3年目は、本業中も赤字が気になってしまい、精神的にしんどかったですね。」と、当時を振り返ります。

項目期待値1年目2年目3年目合計
宿泊稼働日数1801119080
宿泊単価4.52.13.94.0
売上8104443603201124
運営コスト計447258209186652
∟運営代行162897264225
∟清掃費1801119080281
∟掲載料6536292690
∟光熱費4122181656
∟修繕費・その他01500112262
年間利益3633615122210
利回り15.1%1.5%6.3%0.9%8.75%

初めての民泊投資からの撤退事例

大阪市内の2LDK物件(3,500万円)を500万円かけてリノベーションして民泊事業を開始した新井さん(30代・自営業)。収益力は高くないものの、資産性を期待して15年以内にコスト回収見込みだったといいます。

立地の良さから高い稼働率を期待していましたが、実稼働率は40%程度に留まりました。というのも、インバウンド向けに「民泊ならではの体験」で差別化できると思っていたのですが、思いのほか近隣にある大手ホテルの充実設備・サービスにお客様が流れてしまい、思うように予約が伸びなかったのです。

結果、年間の収支は36万円となり、リノベーション費用の回収だけでも10年以上かかる計算に。

加えて、近隣住民からの騒音苦情が相次ぎ、管理組合からも民泊運営の停止を求められる事態に発展。現在は売却を検討していますが、民泊として運営していたので融資が難しくいまだに買い手が見つかっていません。

新井さんは、「儲かってるのは運営代行会社だけですよ。売上の半分持っていかれますから。賃貸経営と同様、回収期間は10年以内で設定しておくべきだった。投資としては完全に失敗。」と語ります。

項目想定値(年間)実際値(年間)
稼働日数18090
宿泊単価5.64.2
売上1008378
清掃費・リネン代324162
運営代行20276
掲載料7126
光熱費1818
その他固定費
(保険・消耗品等)
2060
経費合計634342
年間収支37436

複数物件運営からの完全撤退事例

相場さん(30代・投資家)は、都内と地方に4件の民泊物件を所有。コロナ前は年間100万円以上の利益が出ていましたが、コロナ後は清掃費・備品代・光熱費の高騰で運営コストが増大。赤字ではないものの、利益がほとんど残らない状態になりました。

「業者に任せていたら収支が合わなくなって、自分で清掃や備品交換を始めました。でも顧客満足度が低下してしまって…」

物件の掲載サイトに悪い評価をされてしまったことで「割に合わない」と判断し、これ以上悪化する前に4件すべてを売却。2024年に民泊事業から完全撤退しました。
「稼働率は戻っても、今の民泊は利益が出づらい。労力に見合わないと感じた」と振り返ります。

条件限定・少数派の継続事例

相場と対照的に、一定の成果を上げているケースもあります。
八田さん(60代・男性)は、長年賃貸経営を行ってきた専業大家で、自宅近くに購入した戸建てを民泊として運用中です。

「家から近いので、清掃など運用を委託しなくていい。管理の手間はかかりますが、時間的な余裕があるのでストレスは少ないです」と語ります。
立地も用途地域を見ながら厳選し、予約単価や稼働率のデータを日々チェックして調整。さらに、ゲストの満足度向上のために、地元民ならではの観光情報や飲食店の情報を提供する施策を施しました。

また、将来的に民泊運営が難しくなった場合に備えて、「いざとなれば息子夫婦に土地として譲ることも視野に入れている」と話し、出口戦略も明確です。

ただし八田さんも、「副業や片手間ではまず難しい。我流の運営は専業だからこそ成り立っている」と語っており、こうした成功例はごく限られた条件下でのものといえます。

結局強いのは賃貸経営|民泊投資と比較で見えた差

民泊投資の厳しい現実を受け、多くの投資家が安定性を重視した賃貸経営に回帰しています。長期契約による収入安定性、法的保護の手厚さ、シンプルな管理体制など、賃貸経営の優位性が改めて評価されています。

特に一棟アパート投資は、民泊投資にはない以下のような魅力を持っています。

  • 複数戸による収益安定化
  • 高いレバレッジ効果
  • 管理・運営の自由度
  • スケールメリットの活用(規模が大きくなることで効率・コスト面が有利になること)

資産価値の維持・向上という観点でも、賃貸物件の方が優位性があります。

実質利回りで比較すると、民泊投資は表面利回りは高く見えても、運営コストを差し引いた実質利回りでは賃貸経営を下回るケースが大半です。リスク調整後リターンを考慮すると、その差はさらに顕著になります。

民泊投資に関するよくある質問(Q&A)

最後に、民泊投資に関するよくある質問とその答えを紹介します。

Q1. 民泊投資は本当にもう儲からないのですか?

【答え】

「絶対に儲からない」というわけではありません。ただ、個人で手軽に始めてうまくいく時代は終わった、というのが正直なところです。

以前は稼働率さえ取れれば利益が出ましたが、今は物価高でコストがかさみ、運営もラクではありません。副業レベルで始めると、「思ったより手間が多い…」と感じて撤退する方も少なくないのが現実です。

Q2. 民泊を辞めて賃貸に転換する場合、どんな手続きが必要ですか?

【答え】

まずは民泊の届出を取り下げる手続きが必要です。そのうえで、民泊仕様のままだと賃貸には不向きなので、原状回復や住宅仕様へのリフォームを行うケースが多いです。

費用は物件にもよりますが、100〜300万円ほどかかることも。ただ、長期的に安定した家賃収入を見込めるなら、切り替えは十分検討に値します。
不安な場合は、不動産管理会社や建築士に相談するのがおすすめです。

Q3. コロナが落ち着けば民泊も復活するのでは?

【答え】

確かに、円安やインバウンド需要の回復で、訪日外国人は増えています。とはいえ、「民泊が再びチャンス!」と高収益は期待しない方が良いかもしれません。

供給はすでに過剰気味で、各自治体による規制も強化傾向にあります。個人レベルの運営では、以前のような高い利益率は難しいのが実情です。

Q4. 民泊投資で成功するにはどうすればよいですか?

【答え】

立地選定、価格設定、運営品質、マーケティングすべてでプロレベルの対応が必要です。

それに加え、法改正や近隣住民との関係にも気を配る必要があります。「片手間でできる投資」と思って入ると、想像以上に大変です。

同じ時間や労力をかけるなら、管理を任せられる通常の賃貸経営の方が安定しやすいと感じる方も多いです。

Q5. 初心者が不動産投資を始めるなら何がおすすめですか?

【答え】

今の市況で初心者におすすめするとしたら、一棟アパートなどの賃貸経営です。

家賃収入は安定しやすく、空室が出ても複数戸あるのでダメージは分散できます。民泊と違って突発対応が少ないですし、管理を外注すれば手間もグッと減ります。

また、物件によっては将来売却しやすいものも多く、“資産として残す”という意味でも安心感がある投資だと思います。

まとめ|堅実な投資家が選ぶべき道とは

データと実例が示すように、個人投資家レベルでの民泊投資は、高いリスクと重い管理負担を伴う割に、収益性は期待ほど高くありません。

  • 法規制の強化
  • 運営コストの高騰
  • 市場競争の激化

上記の要因から、民泊投資を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。一方で、伝統的な賃貸経営は安定性と収益性のバランスに優れ、長期的な資産形成により適しています。

「短期間で大きく稼ぐ」という誘惑に惑わされず、堅実な投資戦略を選択することが、長期的な成功につながっています。民泊投資の厳しい現実を直視し、より確実な投資手法への転換を検討することが、今求められる賢明な判断なのです。

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