リノベーション物件投資がやばい?かけた費用を回収できる?

不動産投資を検討する中で、リノベーション物件に興味を持つ方も多いのではないでしょうか。初期費用を抑えつつ、割安な価格帯で投資を始められる点に魅力を感じる人も少なくありません。

しかし、リノベーション投資には独特の注意点があり、失敗に終わるケースも多数報告されています。本記事では「リノベ投資が危ない」と言われる背景や落とし穴について、体験談を交えて詳しく解説します。

「リノベ投資」ブームの裏側

リノベーション投資(通称:リノベ投資)は、「おしゃれな内装で高収入」というイメージが先行しがちです。しかし、実際には多くの投資家が現実とのギャップに苦しんでいます。

たしかにリノベ物件は初期費用を抑えやすい一方で、長く空き家だったり管理が悪いケースがあります。耐震基準を満たさず補強が必要な場合もあるでしょう。

SNSなどで話題になる「成功例」も、一部の良い部分だけを切り取っているケースが多く、過信は禁物です。リノベ物件は「付加価値投資」と呼ばれますが、裏を返せば高リスクな投資でもあるのが実態です。

リノベ投資の厳しい現実【データで解説】

一体なぜリノベ投資が厳しいといわれているのか、本章ではデータを追って解説していきます。

①リノベーション費用・相場の実態

以下の表は、矢野経済研究所が公表する2015~2025年までの住宅リフォーム市場規模の推移と予測を示したものです。

(出典:株式会社矢野経済研究所「住宅リフォーム市場規模推移と予測」)

グラフから読み取れるように、住宅リフォーム市場は2021年から2023年にかけて急伸し、7.4兆円に達した後、2024年以降は一時的に縮小傾向にあります。

(出典:株式会社矢野経済研究所「住宅リフォーム市場規模の2030年までの長期予測」)

2024年は一時的な反動減が見込まれるものの、中長期的には堅調に成長し、2030年には約7.5兆円に回復する可能性があるとされています。

こうした背景には、新築住宅市場の冷え込みも関係しています。特に近年は、建築費の大幅な増加が顕著です。

下の図は、東京都における建築費指数の推移(2015年=100)を示したものです。

(出典:野村不動産ソリューションズ「建築費指数推移」)

集合住宅(RC造)の建築費は2024年時点で130.5と、2015年から約30%も上昇しています。これは職人不足、資材価格の上昇、物流コストの増加など複数の要因が重なった結果です。

資料では築年別の収益データは記載されていませんが、一般的に以下のような傾向が不動産業界で言われています。

  • 築20年以上の物件にリノベを行うと、同エリアの平均よりも5〜15%ほど高い賃料を設定できるケースがある
  • ただし、築40年超の場合、構造補強などのコストがかさみ、賃料の上昇だけでは回収が難しい
  • リノベ効果の持続期間は10年が目安とされるが、デザイン性よりも断熱性・水回りの機能面が長期的な価値維持に寄与する

とはいえ、リノベーション物件すべてが高い賃料や資産価値を生むとは限りません。築年数や構造、立地、工事費の高騰リスクなども踏まえた慎重な見極めが不可欠です。

②収益性と回収期間の目安

リノベーション費用の回収期間は、「リノベーション費用 ÷ 年間家賃収入」で計算できます。一般的には3年程度が目安とされることもありますが、これは十分な家賃アップが実現できた場合に限った話です。

現実には、想定ほど家賃が上がらなかったり、空室期間が長引いたりするケースも少なくありません。特に初年度は工事費の負担が重くなり、収支が赤字になるリスクが高くなります。

たしかに、リノベによって家賃の下落が抑えられたり、空室が埋まりやすくなることもあります。ただし、それがすべての物件に当てはまるとは限らないという点は理解しておくべきです。

③空室リスクと競争の激化

地域によって空室率には大きな差があり、総務省の調査によれば、地方では賃貸用空き家率が20%を超える地域も多く、東京都は17.1%前後と比較的低水準です。

特に地方では、物件供給が過剰なため、いくら内装を整えても賃料を上げにくく、入居がつきづらい状況に直面しやすくなります。一方で都心は家賃が高騰しており、物件価格とのバランスが取れず利回りが出にくいという課題があります。

このように、立地によって空室リスクの質が異なる点は、事前に十分に把握しておくべきです。

④見落としがちな追加コスト

リノベーション投資では、予想外の費用がかかることも少なくありません。

事前に現場を確認して見積もりを出していても、把握しきれなかった部分が見つかり、結果として費用が膨らむケースもあります。また、工期の遅延で賃貸収入の開始が遅れ、収益計画に影響が出る可能性もあります。

さらに、設備の故障やメンテナンスによる固定費の発生など、見落としがちなコストも多く存在します。長期的な視点で運用していても、デザインの見直しや機能の追加などで、再び費用がかかることも少なくありません。

 リノベーション投資の7つの落とし穴

リノベーション投資には、把握しておくべき7つの落とし穴があります。

具体的にどのような落とし穴があるのか、詳しく見ていきましょう。

①工事費用の予算オーバー

リノベーション投資では、物件を割安に手に入れたものの十分な費用を用意できなくなってしまい、付加価値を高められなくなってしまうことがあります。

(出典:一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会「2024年度 住宅リフォームに関する 消費者(検討者・実施者)実態調査 報告書」)

上記の調査結果からもわかるように、約3割の人が「予算を上回った」と回答しています。

予想外の追加工事に加えて、コロナ終息後は資材費の高騰でコストが膨らみやすい傾向があります。

②工期の長期化

リノベーション投資では、「想定3ヶ月の工期が6ヶ月に延びた」といったケースも珍しくありません。

下図は、建設工事において「危機感を抱く要因」を示したものです。

上位には「労務費の増大」や「資材費の高騰」と並んで、「現場作業員の減少(人手不足)」や「工期遅延」もランクインしています。

(出典:BuildApp総合研究所によるインターネット調査より)

人的・物的リソースの確保が難しくなる中で、スケジュール通りに工事が進まないリスクも投資判断に含めておくべきでしょう。入居予定者が決まっていたものの工期が延び入居できなくなったことで、キャンセルになってしまうリスクも考えられます。

③過度なデザイン志向による実用性軽視

お洒落さを重視した物件で、機能性が犠牲になることもあります。実際のターゲット層とのミスマッチが起きてしまい、思うように入居者が入りにくくなってしまうことも少なくありません。

さらに、メンテナンスがしにくい造りになっていたり、奇抜な内装がかえって飽きられやすくなるといった予想外の問題が生じることもあります。

④賃料アップの限界

リノベーションで賃料アップを狙う投資家は多いですが、地域相場を無視した価格設定は空室を招きかねません。
家賃は、築年数や広さ、立地によって相場が決まっており、たとえ内装が魅力的でも、その相場を大きく上回る金額では敬遠されやすくなります。

特に回収を急ぎすぎると、実勢より高めの設定に偏り、かえって収益が悪化するリスクがあるため注意が必要です。

⑤高額設備の故障・交換リスク

設備は導入時の見た目や機能だけでなく、運用中の交換・修繕コストも考慮すべきです。

特に10~15年で交換が必要となる給湯器や洗面台などは、長期の維持費として事前に計画に含めておく必要があります。(以下図、参照)

(出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック(事例編)」)

また、メーカーの廃盤により修理が困難になったり、専門業者への依頼が必要になったりとメンテナンスコストに悩まされることもあります。

⑥ターゲットの狭さ

リノベ物件は、おしゃれ志向の若年層に好まれますが、年齢や職業に偏りがあり、市場は限られています。また、長期入居につながりにくく、入れ替わりが早い点も収益の不安要素です。

さらに、退去時には原状回復をめぐるトラブルも起きやすく、事前の契約内容や対応体制が重要です。

⑦ 出口戦略の難しさ

リノベーション物件は個性的なものが多く、売却時に買い手が見つかりにくい傾向があります。空室が続くと金融機関の評価も下がり、次の買主への説明責任も重くなります。

リノベ投資は、他の物件以上に出口まで見据えた投資判断が重要です。

リノベーション投資経験者のリアル体験談

リノベーション投資経験者のリアルな体験談についてご紹介します。

失敗・後悔の事例

30代・会社員の事例

古川一成さん(30代・会社員)は、築25年の1DKマンション(1,500万円)を賃貸用にリノベすることにしました。

「500万円くらいの予定が、配管や床下の修繕で800万円に。駅からも少し遠くて、家賃で回収するには15年以上かかると知ったときは、“やってしまった…”と思いました」と、苦い表情を浮かべます。

内装には自信があり「12万円で貸せる」と期待していたものの、実際には周辺相場と合わず9万円が限界だったそうです。

50代・自営業の事例

真鍋忠司さん(50代・自営業)は、築30年の2LDKマンション(2,000万円)を購入し、1,200万円をかけてリノベーションを実施しました。
「物件自体は安く手に入ったので、その分リノベにしっかり投資しようと思ったんです。デザインにはかなりこだわったんですが、入居後すぐに設備トラブルが続いて…。修理費も重なって、想定以上にお金が出ていきました」

工期も当初予定より6カ月延びたことで収益化が遅れ、年間収支は赤字に。現在は売却も視野に入れているといいます。

40代・投資家の事例

これまで複数の中古物件でリノベーション投資を行ってきた櫻井芳江さん。

「コロナ流行以降、リノベ投資の利回りが悪くなりました。建築費の高騰は分かるんですが、安価な物件の入手も難しく、収益性の限界を感じるようになったんです」

こうした経験から、現在は新築一棟アパートへの投資にシフト。運用の安定性と将来の見通しを重視した結果だといいます。

部分的な成功事例

60代・大家業の事例

岩永道夫さん(60代・大家)は、所有する物件でリノベーションを行い、自身で工事の進行管理まで手がけました。

「業者に任せず自分でやれば無駄がないと思ったんですが…現場に張りつく日が増えて、正直、体力的にもきつかったですね」

立地の良さにも助けられ、家賃設定や入居状況は悪くないものの、「一人でやれる規模には限界がある」とも実感したといいます。

不動産業界における専門家の警鐘

近年、リノベーション物件への投資に関心を持つ人が増えていますが、不動産市場を熟知する専門家たちはリスクへの注意を促しています。なかでも、精緻なデータ分析と実践的なコンサルティングで定評のあるスタイルアクト㈱代表・不動産コンサルタントの沖有人氏は、以下のように警鐘を鳴らしています。

スタイルアクト㈱代表兼不動産コンサルタント 沖有人氏の見解

新築マンション価格の高騰により、「築古リノベーション物件」が注目される中、不動産コンサルタントの沖有人氏はその安易な購入に警鐘を鳴らしています。

沖氏によると、これらの物件は不動産事業者が利益を得るために仕入れ、改装して販売しているものであり、仕入れ原価を抑えるために「相場より安くても売れない物件」が狙われるケースが多いといいます。

さらに、販売やリフォームに関しても、仲介業者が手数料を両取りする「両手取引」やキックバックの構造が背景にあることから、消費者は十分な注意が必要です。

見た目は新築同様でも、再販時には築古物件として扱われ、「手あかのついた中古」として相場価格に戻ることで、結果的に含み損を抱えるリスクが高まります。

沖氏は、「本当に価値ある物件を買うには、中古を適正価格で購入し、自分でリフォームを手配するのが最も堅実な方法だ」と述べています。ただし、例外的に港区や渋谷区など都心の好立地で価格下落しにくいエリアのリノベ物件であれば、資産価値を保ちやすい可能性もあるとしています。

堅実に収益を積み上げるなら「一棟アパート投資」が有力

リノベ物件には魅力もありますが、回収や売却の難しさといったリスクも抱えています。
安定した収益を重視するなら、「一棟アパート投資」を検討するのも一つの手です。

一棟アパート投資には、以下のようなメリットがあります。

  • 複数戸をまとめて運用でき、空室リスクを分散しやすい
  • 管理や修繕を一括で行えるため、コストや手間を抑えやすい
  • 節税や事業拡大など、将来の展望も広がる

長期的に安定した資産形成を目指す方にとって、有力な選択肢のひとつです。

リノベーション投資でよくある質問と回答(Q&A)

最後に、リノベーション投資によくある質問と回答を紹介しましょう。

Q1. リノベーション投資は本当に危険なのですか?

【答え】

リノベーション投資は必ずしも危険というわけではありませんが、「効率が良くない」という側面があります。

工事費や初期設備導入コスト、管理費用は物件によって大きく異なり、常に高い利回りを維持できるとは限りません。収益性を重視するなら、管理や修繕のコントロールがしやすく、長期的に安定した収益を得やすい「一棟アパート投資」がおすすめです。

Q2. リノベ費用が予算オーバーする原因は何ですか?

【答え】

上回る理由は、「予定よりもリフォーム箇所が増えた」「設備を当初よりグレードアップした」「想定外の工事が必要になった」がほとんど。

(出典:一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会「2024年度 住宅リフォームに関する 消費者(検討者・実施者)実態調査 報告書」)

過去の調査を見ても、上記3つの理由が多くの割合を占めています。

Q3. リノベ物件は本当に高い家賃が取れるのですか?

【答え】

リノベーション物件すべてが必ず高い家賃がとれるわけではありません。

たとえ内装をおしゃれにリノベーションしても、その地域の相場を大きく上回る家賃設定は難しいのが実情です。

実際には、「相場より少し高め(+α)」が現実的な上限と考えられます。

Q4. 自分でリノベ工事を管理すれば費用を抑えられますか?

【答え】

自分でリノベーション工事を管理することも可能ですが、かなりの時間と専門知識が求められます。

そのため、管理や交渉、現場確認などの負担を考えると、同じ労力を「一棟アパート投資」の物件選定などに使ったほうが、効率的で再現性の高い成果が見込めます。

Q5. 初心者にはどんな不動産投資がおすすめですか?

【答え】

初心者には、リスクとリターンのバランスが取りやすい「新築」または「築浅」の一棟アパート投資をおすすめします。
将来の収支予測が立てやすく、安定した賃料収入を得やすいという点が大きなメリットです。

まとめ|賢明な投資家の選択

リノベーション物件の投資は、ややハードルが高く工事や管理などのメンテナンスはもちろん、ターゲット層が狭く、賃料を上げるにも限界があります。そのため、初心者の場合、安易にリノベーション物件に手を出してしまい、家賃で回収できないまま手放す人も少なくありません。

一方で、一棟アパート投資は長期的に見て収益を出しやすい方法でもあります。リノベーション物件とどちらにするべきか、特徴やメリット・デメリットも含め十分に検討して選択することをおすすめします。

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