不動産統計集をご存知でしょうか。公益財団法人不動産流通推進センターが年に2回、4月と10月に更新している不動産業に関連する統計集のことです。地価や人口、不動産業界の状況などの数字が年度ごと、地域ごとにまとめられていて推移を確認することができます。2020年はコロナ禍に見舞われた年でしたが、土地の値段はどのように推移しているのでしょうか。ここでは不動産統計集からわかる公示地価の推移について解説します。
地価変動率(公示価格)
公示価格は国土交通省が発表する毎年1月1日時点での1㎡あたりの価格で一般的な土地取引の基準のこと。不動産統計集ではこの公示地価を地域別、年度別でまとめて資料として提供しています。住宅地、商業地の地価について全国と東京圏、大阪圏、名古屋圏の傾向を順に解説します。
住宅地の公示価格、名古屋圏は1%の下落!
下の表は公示価格の変動率です。令和3年の全国の平均の公示価格の変動率は-0.4%。平成30年、31年、令和2年の3年間は0.3~0.8%で増加から転じて減少しています。東京圏の変動率は-0.5%で過去3年は1.0~1.4%で増加していたものの転じて減少しました。大阪圏の変動率は同じく-0.5%。過去3年は0.1~0.4%で推移していましたが減少しています。名古屋圏は-1.0%の減少です。過去3年は0.8~1.2%の増加でしたが1%も下落してしまいました。このことから上昇傾向だった公示地価もコロナ禍においては減少に転じていること、東京圏では過去の伸びに比べると-0.5%と比較的小さい下落率だが、大阪圏、名古屋圏、地方に関しては前年の増加を打ち消すくらいの下落率となっており、東京圏以外ではコロナ禍の土地価格への影響が大きい可能性がうかがえます。
住宅地の公示価格変動率(%)
公示年 | 平成30年 | 平成31年 | 令和2年 | 令和3年 |
東京圏 | 1.0 | 1.3 | 1.4 | -0.5 |
大阪圏 | 0.1 | 0.3 | 0.4 | -0.5 |
名古屋圏 | 0.8 | 1.2 | 1.1 | -1.0 |
地方平均 | -0.1 | 0.2 | 0.5 | -0.3 |
全国平均 | 0.3 | 0.6 | 0.8 | -0.4 |
商業地の公示価格 名古屋圏は1.7%の下落!
商業地については住宅地と同じく令和3年は下落に転じています。住宅地との違いは、東京圏、大阪圏、名古屋圏とも過去3年の公示価格は毎年3~6%のコンスタントな上昇が続いていたこと、そして今年の下落率は過去の伸びに比べれば小幅に留まっていることです。コロナ禍においては商業地の地価は下がっているものの大都市においては下落の影響は限定的であること、東京圏は特に小幅な減少であることが分かります。一方、地方都市においては過去の公示地価は上昇しているものの大都市圏とは違って2%未満の上昇。今年はコロナ禍において地価は下がっているとはいえ、下落率も小さく住宅地と同じように小幅な変化率であることが読み取れます。
商業地の公示価格変動率(%)
公示年 | 平成30年 | 平成31年 | 令和2年 | 令和3年 |
東京圏 | 3.7 | 4.7 | 5.2 | -1.0 |
大阪圏 | 4.7 | 6.4 | 6.9 | -1.8 |
名古屋圏 | 3.3 | 4.7 | 4.1 | -1.7 |
地方平均 | 0.5 | 1.0 | 1.5 | -0.5 |
全国平均 | 0.3 | 0.6 | 0.8 | -0.4 |
東京圏の地域別地価変動率
下の表は東京都の地域別の公示価格の変動率です。住宅地の変動率に関しては多摩地区を除いて令和2年は大幅に上昇しました。一方今年は減少に転じていますが幅は1%未満と小さくなっています。商業地についても傾向は同様で、多摩地区を除いて令和2年は大幅に増加しています。一方今年は減少に転じていますが影響は限定的です。東京都の地価はコロナ禍の影響を受けにくかったということができるでしょう。
東京都の公示価格の変動率(%)
住宅地 | 商業地 | |||
公示年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和2年 | 令和3年 |
東京都区部 | 4.6 | -0.5 | 8.5 | -2.1 |
区部都心部 | 6.4 | -0.4 | 9.6 | -2.8 |
区部南西部 | 3.7 | -0.5 | 7.0 | -1.1 |
区部北東部 | 5.0 | -0.5 | 7.7 | -1.5 |
多摩地区 | -0.8 | -0.7 | 2.5 | -1.1 |
東京都 | 2.8 | -0.6 | 7.3 | -1.9 |
名古屋圏の地域別地価変動率
下の表は名古屋圏の地域別の公示価格の変動率です。住宅地の変動率に関しては令和2年の増加が今年は減少に転じています。名古屋市は令和3年の減少が比較的少なく、影響を受けにくかったといえます。商業地については令和2年に名古屋市が大きく増加して、今年の減少があったとはいえ他の地域と同じかやや大きな減少率となっており、都市部の地価はコロナ禍の影響を受けにくかったということができるでしょう。
名古屋圏の地域別公示価格変動率(%)
住宅地 | 商業地 | |||
公示年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和2年 | 令和3年 |
名古屋市 | 2.0 | -0.8 | 7.7 | -2.1 |
尾張地域 | 0.7 | -1.0 | 1.2 | -1.4 |
西三河地域 | 1.9 | -1.1 | 1.4 | -1.5 |
知多地域 | -0.1 | -1.5 | 0.0 | -1.9 |
愛知県 | 1.2 | -1.0 | 4.4 | -1.8 |
まとめ
不動産統計集から東京圏、大阪圏、名古屋圏の公示地価の推移を住宅地、商業地ごとに解説しました。東京都や名古屋市のような都市部においてはここ数年地価上昇が続き、特に商業地の地価上昇は大きいものでした。去年から続いているコロナ禍においては全国的に地価が下がったものの都市部の下落は限定的であるということができそうです。地価の観点からは都市部の人気と資産価値は高いものであるということができるのではないでしょうか。今後の地価の推移に注目です。公益財団法人不動産流通推進センターの不動産業統計集もご参照ください。
出典:公益財団法人不動産流通推進センター 不動産業統計集 (3月期改訂)6土地
https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/toukei/202103/202103_6tochi.pdf