不動産投資を行う上で十分に気をつけなければならない4つの特徴を紹介します。
景気の影響を受ける
不動産投資は国の金融政策が大きく関わっている
不動産市場もしくは不動産マーケットという言葉を目にしたことがあると思います。
不動産も市場で売買される商品なのです。
取引は売り手(供給)と買い手(需要)が一致したところで成立します。
不動産の価格変動を左右するのは景気の動向です。
景気が良いときは不動産も需要が供給に勝り、つまり物件が品薄状態になって価格も高騰します。
一方景気が悪いときは供給が需要に勝り、物件が過多となって価格が下落します。
景気は回復→好況→後退→不況→回復を繰り返しています。それに伴い不動産の価格も変動しています。
この景気の波を左右するのは住宅ローンの金利や住宅投資などがありますが、その根本的なものは金融機関の融資方針に影響を与える政府や日銀の金融政策です。
不動産投資の取引のメインは投資を目的とする不動産を担保にして、購入資金を金融機関から融資を受けることです。
融資条件が緩和されれば融資がおりやすくなり不動産投資は活発になります。
逆に融資条件が引き締められれば融資が出にくくなり不動産投資は右肩下がりとなります。
このように不動産市場は景気の動向により価格が変動するのです。
低金利だと不動産投資が有利な理由
マイナス金利政策によって融資金利が一段と下がり、不動産投資向けローンの融資条件も緩和されています。それはなぜでしょう。金融機関は日銀に預けると利子を日銀に支払わなければなりません。ですから金融機関は日銀に預金するよりも企業に貸し出したり、他の投資先に投資しようとしたりします。その結果、市場にお金が出回るようになり、お金が借りやすくなります。これが金融緩和です。金融機関の融資方針がお金をより借りてほしいとなっていることは、取りも直さず不動産投資家に物件の購入チャンスが広がることになります。低金利になれば、ローンの返済額も少なくなってその分キャッシュフローが増えます。ローンの総額が減少すれば返済時期の繰り上げ返済も可能となります。次の物件購入もぐっと現実味を帯びてきます。
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築年数で大きく変わる
築年数を把握して割安物件を
都市部の中古のワンルームマンションが手ごろな価格で人気を集めています。不動産投資では築年数や建物の寿命を理解することはきわめて重要です。購入した物件で将来的に安定した家賃収入が得られるかは築年数にかかっているからです。
基本的に築年数が新しいほど物件価格は高く、管理費・修繕積立金などのランニングコストは安い。築年数が古いほど物件価格は安くなりますが、ランニングコストが高くなります。新築物件も2人目の入居者以降は中古物件扱いとなるので利回りは決して良くはありません。一般的に築浅物件は新築物件のおよそ70%位で買え、まだランニングコストも高くないので利回りが良いとされています。
融資期間は物件の構造、法定耐用年数、築年数で決まる
法人税法では資産の種類や建築構造によって資産の耐用年数を決めていて、これを法定耐用年数といいます。住宅でしたら木造が22年、鉄骨・鉄筋コンクリート(SRC)造が47年などとなっています。くわしくは下表を参照ください。
<法定耐用年数>
建築構造 | 耐用年数 |
---|---|
鉄骨・鉄筋コンクリート(SRC)造 | 47年 |
鉄筋コンクリート(RC)造 | 47年 |
重量鉄骨造 | 34年 |
軽量鉄骨造 | 27年 |
木造 | 22年 |
金融機関が融資期間を決めるときは、物件の構造、法定耐用年数、築年数で判断します。
たとえば築25年のRC(鉄筋コンクリート)物件の融資期間は
と、算出されます。
金融機関は法定耐用年数がそのまま融資期間とはならず、通常ではそれよりも短期間の融資になります。
RC(鉄筋コンクリート)の耐用年数 | ー | 築年数 | = | 融資期間 |
---|---|---|---|---|
47年 | 25年 | 22年 |
中古マンションは1981年以降の物件を選ぶ
投資物件で中古マンションの購入を検討されているなら、ズバリ、1981年(昭和56年)新耐震設計法施行以後の物件を選ぶことです。新耐震設計法では震度6強以上の地震でも倒れない建物を基準としています。詳しくは下表をご覧ください。 万が一、大地震が発生した場合でも、新耐震設計法の物件と旧耐震設計法の物件では、地震に対する強度が違うので被害も著しい差が出ます。事実、東日本大震災や阪神・淡路大震災のときでも、新耐震基準で作られたマンションの倒壊被害はゼロでした。
旧耐震基準と新耐震基準の違い
旧耐震基準 (1981年5月以前の建物) |
新耐震基準 (1981年6月以降の建物) |
|
---|---|---|
建築基準法の改正による違い | 震度5程度の地震で倒壊せず、破損した場合、補修することで生活が営める構造基準を定めています | 震度6程度の地震で倒壊せず、破損した場合、補修することで生活が営める構造基準を定めています |
震度5の中程度の地震 | 倒壊しない | 倒壊せず、損傷を受けても軽微なひび割れにとどめられる |
震度6~7の大規模の地震 | 規定なし | 倒壊しない |
1981年6月以前の旧耐震時代の物件を購入する場合は、マンションならマンションの管理組合に、戸建なら売主に耐震診断をしているかを確認しましょう。診断済みで耐震補強などが施されていれば問題はありません。
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継続的なメンテナンスが重要
定期的なメンテナンスが資産価値を守る
建物は年が経つにつれ劣化していきます。しかし、同じ築年数でも新築同様のものがあれば、かなり老朽化したものもあります。
物件の外観の印象などは入居の決定に大きな影響を与えます。
ですから、購買物件の資産価値を保持するには定期的なメンテナンスが必要です。不動産投資では入居率の維持、家賃の値下げなどを防ぐことを目的に継続的なメンテナンスを行います。
不動産投資においておろそかにしがちなのがこのメンテナンスの部分です。
なぜならば、不動産投資では投資金額に対して収益(家賃収入)、そこから発生するコストを差し引いた利回りに注目してしまい、あまりメンテナンス費用には予算をかけたくないからなのでしょう。
でも、長期的に発生する補修やメンテナンス費用という部分も計算しておかなければなりません。また予期せぬアクシデントで急遽メンテナンスしなければならないこともあります。そのためのキャッシュフローの用意も怠りないように。
築後10年が最初のメンテナンスの目安
一棟物件で新築マンションを購入した場合は、一般的に10年過ぎた頃から、外壁補修や塗替え、屋根や屋上の防水加工などのメンテナンス時期です。戸建も10年がメンテナンスの目安となっています。ワンルームマンションなど区分所有物件のメンテナンスは、住戸部分(専有部分)はオーナーが各自で行い、共有部分(建物本体、エントランス、廊下、階段など)はオーナー共同で行います。そのために修繕積立金はあるのです。中古物件を購入する場合は、事前にかかるメンテナンス費用を試算してもらいましょう。試算額を見すえて投資の判断材料にしてください。
きちんと定期的にメンテナンスを施せば、物件の資産価値を維持することができ、入居率の減少を防ぎ、長期的に安定した収益(家賃収入)を得ることができます。
税金に注意
不動産投資では実にたくさんの種類の税金を支払います。基本的な税務の知識も不動産投資の上では不可欠なものです。どの段階でどのような税金を払わなければならないのか、解説します。
不動産購入時には不動産取得税、登録免許税(移転登記)、印紙税
不動産購入時には不動産取得税、登録免許税(移転登記)、印紙税がかかります。不動産取得税は不動産を取得した際に必要です。物件を購入して引き渡しと同時に登記の申請をしますが、そのときに必要なのが登録免許税です。契約時に使う印紙の印紙税もかかります。また不動産購入には消費税が課税されますが、この消費税は建物の部分のみが対象です。土地は消費するものでとみなされないので消費税はかかりません。
不動産取得税の算出方法
- 土地:固定資産税評価額×1/2×3%
- 建物:固定資産税評価額×3%
登録免許税(移転登記)の算出方法
登記内容 | 登録免許税 |
---|---|
売買により所有権移転 | 課税標準額の2.0% |
抵当権の設定 | 債権額×0.4% |
印紙税
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
100万円超500万円以下 | 1000円 |
500万円超1000万円以下 | 5000円 |
1000万円超5000万円以下 | 1万円 |
5000万円超1億円以下 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 6万円 |
不動産保有時には固定資産税と都市計画税
不動産を保有している間は、毎年、固定資産税と都市計画税が発生します。固定資産税とは、土地・家屋および償却資産、これらの固定資産に対し、その価格をもとに課される税金のことです。都市計画税とは、都市計画事業にかかる費用に充てるための税金で、どちらも土地・家屋が課税対象です。
固定資産税と都市計画税の算出方法
取得対象 | 1年間の税率 |
---|---|
固定資産税 | 固定資産税評価額(課税標準)×1.4% |
都市計画税 | 固定資産税評価額(課税標準)×0.3% |
所得に関する税金は所得税と住民税
不動産を賃貸していると、不動産所得として、国税である所得税、地方税である住民税がかかります。一定規模以上の不動産を賃貸し、所得が一定額以上となると事業税がかかります。
売却時の税金は譲渡税
不動産を売却した際には譲渡税(所得税・住民税)が発生します。不動産取得時より高値で売れた場合に、すなわち売却益が出たときにかかる税金です。譲渡損失が発生する場合は課税されません。
譲渡税の算出方法
- 譲渡所得計算式 譲渡所得 = 譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)
- 税額計算式 税額 = 譲渡所得 × 税率(所得税・住民税)
税率表
所有期間 | 税率 |
---|---|
短期(譲渡年の1月1日で5年以下) | 税率 39.63%(所得税30% 住民税9%) |
長期(譲渡年の1月1日で5年超) | 税率20.315%(所得税15% 住民税5%) |
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まとめ
不動産投資における大事な注意点をまとめました。キーワードは「築年数」、「メンテナンス」、「税金」です。いずれも不動産投資では知っているのが当然のことばかりです。同じ物件を購入する場合も時期が異なれば景気の風向きで価格も融資条件も変わってきます。こまめにメンテナンスをしている物件は多少古くても人気物件です。不動産投資にはさまざまなリスクがあります。しかし事前に熟知して対策を講じておけばリスクを乗り越えることができます。その向こうには成功が待っています。