本来は自分の土地にどんな建物を建てても自由であるべきです。少し広めの土地がある場合など、マンションを建て是非とも土地活用に活かしたいところです。しかし建築基本法では用途地域という規制により、エリアによっては自分の土地であっても自由に建物が建てられない場合があります。
これから家を新築される方や土地を買って家を建てようと考えられている方にとっては、建てられる家が違ってくるので用途地域は是非とも押さえておきたいポイントです。
そこでここでは用途地域に関して説明していきます。
用途地域とは
本来住宅地は人々が静かに安全に暮らすための場所です。しかし住宅地に突然危険物を取り扱う工場が建設されると、そこに暮らす人々の健康をはじめ、生活そのものが危険にさらされることもあります。また戸建て住宅が多い住宅地に高層マンションが建ってしまうと、住民の日照権が奪われるといったことも起こります。
用途地域はさまざまな建築物が混在することで起こるトラブルなどを少なくするために、地域ごとに合理的な規制を行い、誰もが住みやすい環境整備などのために設けられているのです。
用途地域には住宅系、商業系、工業系の3種があります。なおすべての土地が用途地域に指定されているわけでは無いので、土地を購入したり、土地の建物を建てたりする際は確認する必要があります。
住居系について
・第一種低層住居専用地域
住環境を守ることを最優先された地域です。町並みは戸建て住宅がメインで小規模な賃貸住宅、お店や事務所などの兼用住宅を建てることができます。許可されている業種は飲食店やクリーニング店、パン屋、米屋、学習塾などといった日常生活に関わるものに限られ、コンビニエンスストアは設置できません。10メートル又は12メートルの高さ制限があり、容積率の制限もあるので、高い建物を建てることができず、分譲マンションなども3階建てに限定されます。小・中学校、老人ホーム、診療所などを建てることはできますが、大規模な病院などは建てることはできません。また駐車場も青空駐車場が一般的です。
・第二種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域は第一種低層住宅専用地域についで規制の厳しい地域です。第二種低層住居専用地域では第一種低層住宅専用地域で建てられる建物に加え、150㎡までの店舗を建てることができます。許可されているお店は飲食店やクリーニング店、パン屋、米屋、学習塾など日常生活に関わるものに限定され、第1種低層住居専用地域と変わりありませんが、コンビニエンスストアを開くことはできます。店舗は2階以下に限定されています。第一種低層住居専用地域に比べ、少し利便性が高い地域で、第一種低層住居専用地域よりも道幅が広くなっています。
・第一種中高層住居専用地域
低層住居専用地域よりも制限や容積率が緩和され、4階以上のマンションを建てることが認められています。低層住居専用地域で認められているものに加え、大学や専門学校といった教育施設、病院や老人福祉センターなどが認められ、500㎡までの店舗や飲食店の建設も認められ、300㎡以下、2階以下の条件で自動車倉庫なども建てることができます。ただしオフィスビルやホテル・旅館などの建設は認められていません。
第一種中高層住居専用地域では容積率などの制限もゆるくなっているので、町並みは中規模のマンション中心が多く立ち並ぶエリアといえます。
・第二種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域の要件は第1種中高層住居専用地域と大差はありませんが、1500㎡で2階以下の条件付きで店舗や飲食店、事務所の建設が認められています。300㎡で2階以下なら車庫を設置することも可能です。また自家販売食品工場などの設置も認められ、中規模マンションやアパート、一戸建て、店舗、飲食店などが立ち並ぶエリアといえます。
・第一種住居地域
住宅やマンションなどのほかに、3000㎡までの店舗や事務所が建設可能です。ホテル・旅館などのほか、遊戯施設も条件付きで建設可能で、50㎡以下の工場を建てることも可能です。中規模マンションや一戸建て、商業施設、工場などが立ち並ぶエリアといえます。
・第二種住居地域
あくまでも住居エリアながら、大規模な店舗や事務所の建設が可能で遊戯施設の範囲も拡大されるため、マンション、一戸建て、店舗、飲食店、事務所などが混在するエリアといえます。事務所や店舗は10000㎡まで建設可能になり、ホテルや旅館、パチンコ店、カラオケ店、などの立地も認められます。ただし映画館や劇場など人の奥集まる施設や風俗営業店、大規模工場や危険物を扱う工場などは禁止されています。
・準住居地域
道路の沿道で住居と自動車関連施設などが安全に調和することを目的としたエリアです。10000㎡以下で自動車工場やファリミーレストランといった店舗、パチンコ店やカラオケボックス、場外馬券売り場などのも可能です。なお危険物を扱っていたり、住環境を悪化させる可能性のある工場の設置は不可だったりします。
商業系について
・近隣商業地域
近くの住民が毎日の買い物をする店舗などが営業しやすく規制された地域で、近くの住民が買い物をするための店舗やスーパーなどがたくさんあるエリアです。パチンコ店やマージャン屋、場外馬券売り場、カラオケボックスなど一部の風俗店以外は可能で、学校や病院などの公共施設、運動施設、車庫や倉庫、畜舎などの建設も可能です。また150㎡までも工場の設置も可能と、商業施設の制限はほとんどありません。主に中心市街地周辺に該当します。
・商業地域
商業地域は店舗や事務所などが業務をしやすくすることを目的とされた地域です。都心部や主要駅の中心部など、地域の中心的な地域が指定されています。商業施設は風俗施設を含め、ほぼすべての商業施設が可能で、危険物を取り扱い工場などには規制がかけられています。
容積率の基準もゆるく建ぺい率は80%で、防火地域内に耐火性のある建物を建てる場合は建ぺい率の制限はなく、日影規制もありません。地価が高く、戸建て住宅よりは中高層のビルやマンションが数多く建設されているエリアです。
工業系について
・準工業地域
工場などの業務の利便性の向上を目的とし、住宅、商業施設、中小の工場などがある地域です。昔ながらの町工場などが多い地域で、商業地域と同様、さまざまな用途での利用が可能ですが、商業地域で禁止されている工場の立地を緩和しているほか、一部風俗店に関しては禁止されています。建ぺい率などは住居系地域と同様で、現在では昔ながらの町工場とマンションが共存している地域が多いです。
・工業地域
主に工場の利便性を最優先に考慮した地域です。環境を悪化させたり、危険物を取り扱っている工場も認められたりしているのに対して、学校、病院、ホテルや旅館、劇場、映画館、一部の風俗店は認められていません。
同地域では近年は大型のマンションなどがたくさん建てられているが、工場による環境の悪化や大型トラックなど道路事情も危険なため、特に子供や高齢者がいる家庭では、住宅を購入する際は周辺環境を調べる必要があります。
・工業専用地域
工場の利便性に特化した地域です。専用・兼用に関わらず住宅の建設が認められないのは工業専用地域だけで、コンビナートや工業団地などが該当します。住宅だけでなく、店舗や学校・図書館・病院など公共施設や運動施設、カラオケボックスなどを除く遊戯施設も禁止され、工場のなかの診療所は可能となっています。
敷地と道路の関係により新築不可能な場合も
今住んでいる一戸建てを建て替えする際や土地を買って家を建てる際、または古家付きの土地を安く購入し建て替えをする際は、場合によると家を建てたり、建て替えたりすることができないので、敷地と道路のことについても知っておく必要があります。なぜなら土地計画区域内に家を建てる際は幅4m以上の道路に2m以上接した土地でなければ住宅が建て慣れないからです。これは建築基準法で定められた「接道義務」にある制約で、火災などが起きたときに速やかに非難するためや消防車や救急車が通る道の確保のために設けられています。
特に注意したいのは今の建築基準法が適用される前に建てられた建物の建て替えです。「接道義務」に対応していない住宅が多く、リフォームは可能ですが、土地を更地にして建て替えをすることはできないので注意してください。
ただし建築基準法が施行された昭和25年11月23日、または土地が都都市計画区域になった時点で、今の家が建っている場合は、「敷地のセットバック」を行うことで新築が可能になります場合もあります。「敷地のセットバック」とは道路には2m以上接しているが、道路幅が4m未満の場合に適用され、土地が接している道路の中心線から2mの位置まで建物を建てずに開けておき、土地のスペースを合わせて道路の幅を4mにしてしまうのです。
土地が「接道義務」に対応しているかどうかを含めて、家を建て替えや、土地を購入する際は、土地と道路の関係について役所で確認することをおすすめします。
建築条件付き土地とは?
建築条件付き土地とは不動産会社が指定する施工会社により一定期間内に住宅を建てることを義務付けられた土地のことを言います。通常の注文住宅の場合は土地と施工会社が切り離され、施主は自分で決めた施工会社で、法令の範囲内で建築プランなどを自由に決めることができます。しかし、建築条件付き土地では施工会社も建築請負契約を締結する期間もほぼ決められているので、施主の自由度がすこし下がります。ただし、その分土地代が安くなるというメリットや施工会社を探す手間が省けるなどのメリットもあります。多少条件があっても、土地を安く仕入れて、その分、構造や間取り、設備にお金をかけたい、という方にはオススメの土地です。
まとめ
土地にはさまざまな規制があり、たとえ自分の土地であっても自由に住宅を建てることはできません。不動産を購入して家を建てる際や、今の家を建て替える際などは、必ず役所で土地がどのような条件になっているのかを調べることをおすすめします。