不動産投資を始めるためには物件を購入する必要がありますが、最初の一歩をどう踏み出せばよいのでしょうか。適切な物件選びは投資の成否を大きく左右します。
本記事では、物件探しの基本から具体的な探し方まで、成功への道筋を詳しくご紹介します。
1. 物件探しの前に知っておくべきポイント
投資の軸を確立する
不動産投資において最も重要なことは、自分自身の明確な投資軸・目線を持つことです。他人の評価や一般論に振り回されていては、成功する投資はできません。
なぜなら、同じ物件でもその魅力や価値は人によって異なるからです。
自分にとって正しい判断ができるよう、明確な投資軸を確立しましょう。
この投資軸は主に以下の3つの要素から構成されます。

これら3つの要素を明確にすることで、膨大な物件情報の中から自分に合った物件を効率的に絞り込むことができます。それぞれの要素について、以下で詳しく見ていきましょう。
市場分析の基本:エリア選定
土地勘のあるエリアから検討
不動産投資の成功は、適切なエリア選定から始まります。
まずは自分がよく知っているエリアから検討することをお勧めします。
土地勘があれば、道路一本隔てただけで利便性や価値が大きく変わるといった微妙な違いを見極めることができるでしょう。
例えば、同じ国道沿いでも、東側と西側では雰囲気や地価が大きく異なることがあります。
このような知識は、物件が割安か割高かを判断する上で大きな強みとなります。
遠隔地の物件も投資対象として問題ありませんが、初めての投資であれば、まず自分が詳しいエリアで経験を積むことが賢明です。
実際、多くの不動産オーナーは物件を数年に一度見に行くかどうかという程度で、むしろ「見に行かなくてもいい物件」が理想的な投資物件とも言えます。
将来性のあるエリアから検討
一方で、将来性も重要な要素です。少子高齢化が進む日本では、人口減少が予想されるエリアは避け、大都市圏やその通勤圏内を選ぶことが賢明です。
不動産投資は10年、20年と長期にわたって継続するものですから、長い目で見て入居者に困らないエリアを選ぶ必要があります。
さらに、「この大都市の北側のこの区のこの沿線沿い」といったように、具体的なエリアを絞り込んでいくことが重要です。大都市圏といっても、それぞれの方角や区域によって特徴が異なります。
自分の強みを活かせるエリアをピンポイントで絞り込みましょう。
周辺環境の徹底調査
不動産は一度購入すると移動できないため、以下のような周辺環境の調査は必須です。

また、自治体のホームページで将来の地区計画を調べることも重要です。
これにより、エリアの発展性や将来価値を予測することができます。再開発計画や新たな交通インフラの整備などは、物件価値に大きな影響を与える可能性があります。
資金計画と融資条件の理解:予算設定
物件探しで最も重要な条件の一つが予算です。
どんなに魅力的なエリアを見つけても、資金が足りなければ投資は実現しません。手持ち資金と融資可能額を正確に把握し、購入可能な価格帯を決めることが不可欠です。
実際の融資可能額を知るための有効な方法は、具体的な物件に申し込み、銀行に持ち込んで融資の可能性を確認することです。これにより、自分の信用力に基づいた現実的な予算を把握できます。
重要なのは、融資承認が下りたからといって必ず購入する必要はないということです。承認後もさらに価格交渉を進めたり、他の物件と比較検討したりすることも可能です。
予算設定は単に「いくらまで出せるか」ではなく、「いくらなら安全に投資できるか」という観点も含めて考える必要があります。無理な資金計画は、後々の経営を圧迫する可能性があります。
収支計画の精緻化:期待する利回り
投資における重要な指標が利回りです。表面利回りは物件の価値を簡易的に判断する指標として有用ですが、実際の投資判断には詳細な収支計画が不可欠です。
家賃収入から以下の費用を差し引いた実質的な収益を計算しましょう。

これらを考慮した上で、どの程度の利回りを期待するかを明確にしましょう。
物件の種類や地域特性によって運営コストは大きく変わります。例えば、北海道の物件では除雪費や暖房費が追加でかかるなど、地域特有の費用も考慮する必要があります。
余裕のある収支計画を立てることで、空室期間が長引いたり、予想外の修繕が必要になったりしても、安定した運営を続けることができます。
このように、「エリア」「予算」「期待する利回り」の3つが明確になれば、自分が探すべき物件は自ずと絞られてきます。これがあなた自身の投資軸となり、膨大な物件情報の中から最適な選択をするための羅針盤となるのです。
2. 具体的な物件の探し方
オンライン検索と情報収集
物件を探す方法は大きく分けて2つあります。一つは一般に公開されている情報をインターネットで探す方法、もう一つは非公開物件の情報を入手する方法です。
まずはオンラインでの物件探しから見ていきましょう。
インターネットでの物件検索
不動産投資用物件を紹介しているサイトは数多くあります。代表的なものとしては以下が挙げられます。

これらのサイトで物件を探す際に最も重要なのは「スピード」です。魅力的な物件は市場に出るとすぐに買い手がつくことが多いため、新着物件を定期的にチェックする習慣をつけましょう。
一方で、長期間売れ残っている物件には何らかの問題がある可能性が高いことも覚えておきましょう。半年以上も市場に出ている物件は、価格が高すぎる、物件に修復不可能な欠陥がある、融資が通りにくいなど、何らかの理由で敬遠されている可能性があります。
物件情報の見極め方
オンライン情報を活用する際には、以下のポイントに注意しましょう。

また、セミナーや不動産会社からの紹介物件も検討の価値があります。ただし、こうした紹介物件が必ずしも良い条件とは限りません。
時には割高な物件が紹介されることもあるため、必ず自分の投資軸に照らし合わせて判断することが重要です。
投資において他人の評価に振り回されるべきではありません。自分の設定した「エリア」「予算」「期待する利回り」という3つの基準に照らして、冷静に判断することが成功への近道です。
非公開情報へのアクセス
市場に公開される前の未公開物件は、良い条件の掘り出し物が見つかる可能性があります。他の投資家が目にする前に検討できるため、それだけで大きなアドバンテージとなります。
こうした情報を入手するには、ネットワーク構築が欠かせません。
大家同士のネットワーク
他の不動産投資家との交流は、貴重な情報源となります。不動産投資家同士では、市場に出ていない物件情報を交換することがよくあります。
個人的な事情で売却を考えているオーナーの物件や、相続で手放す予定の物件など、一般に公開される前の情報を得られる可能性があります。
不動産投資セミナー、交流会、SNSのコミュニティなどに積極的に参加し、同じ志を持つ投資家とのネットワークを広げましょう。経験豊富な投資家からは物件情報だけでなく、投資のノウハウや失敗談なども学べます。
不動産会社とのネットワーク
良質な物件情報を得るもう一つの方法は、不動産会社との良好な関係構築です。複数の不動産会社に自分の希望(エリア、予算、利回り)を常に伝えておくことで、条件に合った物件の情報をいち早く得られる可能性が高まります。
具体的には以下のアプローチが効果的です。

不動産会社は真剣な購入意欲を持つ顧客を大切にします。あなたが明確な投資軸を持ち、迅速な判断ができる買い手だと認識されれば、優先的に良い物件を紹介してもらえる可能性が高まります。
データと専門知識の活用
不動産投資の世界でもAI技術の活用が進んでいます。大量のデータを分析し、物件の良し悪しや将来性を予測するAIツールが登場しています。こうしたツールを活用できる立場にあれば、積極的に取り入れましょう。
また、不動産アナリストや投資コンサルタントなどの専門家の意見も参考になります。ただし、最終的な判断は自分自身の投資軸に基づいて行うことが重要です。
継続的な知識のアップデート
不動産市場は常に変化しています。法改正、税制変更、金利動向、人口動態など、投資判断に影響を与える要素は数多くあります。最新の情報を得るために、セミナーや勉強会に定期的に参加しましょう。
また、不動産投資関連の書籍、専門誌、ウェブサイトなどを通じて、常に知識をアップデートすることも重要です。新たな知識や情報は、あなたの投資軸をより洗練させ、物件を見る目を養うことにつながります。
3. 物件選びの実践
資料請求から内見まで
気になる物件が見つかったら、まずは資料請求をしましょう。
詳細な資料を取り寄せ、自分の投資軸に照らし合わせて検討します。重要なポイントとしては以下のような点が挙げられます。

資料で確認して問題がなければ、実際に物件を見学しましょう。内見では、資料だけでは分からない細かな部分をチェックします。
建物の全体的な管理状態、設備の劣化具合、共用部分の清潔さなどを確認しましょう。また、周辺環境も実際に歩いて確認することで、より正確な判断ができます。
デューデリジェンス(物件精査)
投資判断の前に、物件の法的・財務的・物理的な側面を詳細に調査するデューデリジェンスを行うことが重要です。

特に中古物件の場合は、将来発生する可能性のある修繕費用を正確に見積もることが大切です。必要に応じて建築士や不動産鑑定士などの専門家に調査を依頼することも検討しましょう。
交渉と契約
物件の価値を見極めたら、価格交渉に移ります。交渉の際には、自分の投資軸に基づいた明確な理由を持つことが重要です。例えば、「この物件なら家賃収入から諸経費を差し引いても○%の利回りを確保したい」といった具体的な根拠があると、交渉が円滑に進みます。
また、価格だけでなく、引き渡し時期や設備の修繕、既存入居者の取り扱いなど、様々な条件について交渉することも可能です。契約前には必ず専門家(弁護士や税理士)に内容を確認してもらい、リスクを最小限に抑えましょう。
まとめ
不動産投資の成功は、適切な物件選びから始まります。そのためには、明確な投資軸を持つことが何よりも重要です。「エリア」「予算」「期待する利回り」という3つの要素を明確にし、それに基づいて物件を選ぶことで、自分にとって最適な投資判断ができます。
オンライン情報と人脈を駆使して理想の物件を見つけ、徹底した調査を行った上で投資判断をしましょう。そして、常に知識をアップデートし、自分自身の目で物件を判断する力を養うことが、長期的な成功への鍵となります。
不動産投資は短期的な投機ではなく、10年、20年と続く長期的な資産形成の手段です。焦らず、自分の投資軸に忠実に、一歩一歩着実に進めていくことが、将来の安定した収益につながります。