告知物件、それは特別な事情を抱える不動産のこと。一見他と変わりないように見える物件でも、告知事項があるだけで不動産価値が相場よりも大きく下落することがあります。
この記事では告知物件、いわゆる「事故物件」は実際にどれほど安いのか、告知物件の全体像とともにその真実に迫ります。不動産の裏側に潜む心理的瑕疵から物理的な欠陥まで、みなさんが知っておくべき知識や情報をお伝えしていきましょう。
【この記事で分かること】 ・告知物件にみられる「心理的瑕疵」以外の3つの瑕疵とは何でしょうか。 ・告知事項がある物件は、どれほど価格が安くなるのでしょうか。 ・告知物件のメリットとデメリットが分かります。 |
告知物件とはどんな物件?
不動産を購入または賃貸する際、物件の特性を詳しく知ることは非常に大切です。
物件を探していると稀にポータルサイトなどで「告知物件」という記載を目にしますが、これは一体どのような意味を持っているのでしょうか。
告知事項とは「物件に伝えなければいけない欠陥がある」こと
「告知事項」とは、物件に隠れた瑕疵(欠陥)がある場合に、それを購入者や借り手に伝えるべき事項のことを指します。この告知事項には、構造上の欠陥だけではなく、過去に物件で起きた事故や事件などの情報も含まれることがあります。
売主および買主ともに公正な取引を行うために重要なものであり、隠されていた場合には取引後に高額の損害賠償請求をするトラブルに発展することも少なくありません。これらは宅地建物取引業法35条により、購入前の説明が義務付けられています。
告知事項ありでも全てが事故物件ではない
告知事項があるからといって、必ずしもその物件が「事故物件」とは限りません。告知事項には具体的に4種類あり、一般的に人々が思い描くような過去の重大な事件や事故だけではないのです。
瑕疵の要因 | 内容例 |
心理的瑕疵 | 室内での自殺・事故死・殺人、また遺体発見に時間を要した、など(※) |
物理的瑕疵 | 雨漏り、アスベスト、土壌汚染、地盤沈下、ひび割れ、など |
法的瑕疵 | 違法建築、再建築不可、防災設備が古い、崖地で土砂災害警戒区域に指定されている、など |
環境瑕疵 | 悪臭や騒音の原因となる公害施設、火葬場や宗教施設など住民が不快になる施設が近所にある、など |
※寿命や病気による自然死は、原則として心理的瑕疵には該当しません。ただし、1人暮らしなどで遺体発見までに一定期間放置された場合は、心理的瑕疵となります。
したがって、告知物件の購入や賃貸を検討する場合には、告知事項の内容を正確に理解し、物件としての実際の価値を冷静な視点で評価するようにしましょう。
一般的な事故物件とは「心理的瑕疵」
告知物件と言われ、一般的に多くの人が連想するのは「心理的瑕疵」のある事故物件でしょう。心理的瑕疵には物理的な欠陥はなく、室内で人が亡くなったり、犯罪が行われたりといった出来事によって、その物件が精神的に受け入れがたいものと見なされる場合を指します。
心理的瑕疵の告知期間は概ね3年
心理的瑕疵は刑事事件に関連するものや、自死によるものであることが多く、このような事実が告知されることで恐怖心や不快感から嫌厭され、一般的には需要が落ち込みます。
ちなみに、告知義務の期間は賃貸であれば概ね3年です。これは、国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」に記載されています。
一方、不動産売買では告知義務の期限は設けられていません。契約金額が大きく、買主がすぐに引っ越しできないケースも考えられ、与える影響や損害が大きいためです。
心理的瑕疵の場合は物件に問題はない
このような心理的瑕疵のある物件は「部屋で人が亡くなった」などの過去が告知されますが、物理的には何の問題もない場合がほとんどです。実際、これらの物件は設備面や構造面で通常の物件と全く変わらないことが多いのです。
心理的瑕疵を理由に安価になることは、投資物件を購入する側にとってチャンスとも考えられるかもしれません。賃貸では3年程度で告知義務が消滅するので、それ以降の入居付けにはさほど影響しないと考えられるためです。
しかし、SNSやネットで過去の情報が飛び交う現代では、告知義務の期間が過ぎても、入居者が情報をどこからか入手してしまうケースも考えられます。価格に見合った価値があるか、長期的視点で考えた場合に採算が取れるのかということは、検討すべき重要なポイントです。また、心理的な負担を感じない入居者にとっては、告知期間中でも割安な物件として魅力的に感じるでしょう。
告知物件は本当に安価?一般的に市場より2~3割安い
告知事項のある物件は、多くの方が「お得である」というイメージを抱いています。不動産市場において告知物件は、何らかの特別な事情を持つ物件として扱われ、それが価格に直接的な影響を与えていることは確かです。
上記で挙げた4つの要因の中でも、告知物件の価格は相場の20~80%程度と、問題の内容によって大きく異なります。例えば、心理的瑕疵ではテレビやネットニュースで事件が大きく取り上げられ、事件の悲惨さが大きいほど、価格は下がります。
【告知物件の相場価格】心理的瑕疵:市場相場の約50~90%物理的瑕疵:市場相場の約20~30%法的瑕疵:市場価格の約50%環境的瑕疵:市場価格の約70~80% |
このように、心理的瑕疵よりも建築物自体に問題がある「物理的瑕疵」や「法的瑕疵」の方が、告知物件の価格は下がります。総合的に見ると、告知物件の相場価格は、市場価格の2~3割減が一般的でしょう。
不動産投資で告知事項ありの物件は避けるべき?
不動産投資をする上で「告知事項の有無」は、重要なポイントです。告知事項がある物件への投資はリスクを伴いますが、その一方でチャンスを秘めているとも言えます。
告知事項ありの物件でよく知られているのは、前述した通り「心理的瑕疵のある物件」です。しかし、このような物件を一概に避けるべきかというと、必ずしもそうとは言えません。投資のプロの中には、告知事項がある物件を上手に活用し、高いリターンを狙う方もいるのです。
告知事項ありの物件で不動産投資をするメリット
告知事項のある物件では、その内容に応じて、価格交渉の余地が広がる傾向にあります。
告知事項ありの物件は、多くの不動産投資家から敬遠されがちです。また、物件によっては、売主も早期に売却を済ませたいと考えるため、その結果、通常よりも価格を引き下げて提示される場合があります。
このような状況を見極めて、適切な交渉を行うことができれば、市場価格よりも低い投資額で、将来性のある物件を手に入れることができるでしょう。実際の価格交渉の際には、購入者側はリスクを織り込んで、売主を納得させることが有効的です。
告知事項ありの物件で不動産投資をするデメリット
一方で告知事項ありの物件を選ぶと、さまざまな問題に直面します。
先述したように不動産価値が下がるだけではなく、売却活動で大きな障害になることがあります。告知事項の内容次第では買い手が見つかりづらく、理想の出口戦略の実行が難しくなるでしょう。
また、告知事項がある物件を取得するには、保険やローンの適用にも影響を与えるケースがあります。たとえば、保険の加入ができなかったり、加入できても他の物件よりも割高になったりします。同様にローン審査において、金融機関から告知事項を重視され、融資承認を受けづらくなるでしょう。
売却活動でも、せっかく現れた購入希望者がこのような事態に陥り、計画に狂いが生じるかもしれません。告知事項ありの物件を購入する際には、事前に保険やローンの取り扱いについても十分な情報収集が必要です。
まとめ
この記事では、告知事項をテーマとして一般的によく知られている「心理的瑕疵」とその他の瑕疵との違いや、告知事項がある物件の相場価格について解説しました。
物件探しで「告知事項あり」という備考を見つけても、それが「心理的瑕疵」による恐ろしい事件性のあるものとは限りません。人の死によるものなのか、それとも物件に問題があるのか、はたまた周辺環境や法律に問題があるのか、内容はさまざまです。
告知物件ありの物件を購入して不動産投資を行う場合、物件自体に問題がないケースはチャンスにもなりえます。しかし、実際の運用には十分な知識と注意が必要ですので、はじめて告知物件の購入をする際には慎重な判断を下しましょう。