知っておきたい建築制限「斜線制限・道路斜線」

家やビルを建設する際、建築基準法による建築制限があるために、自分の土地であったとしても「建物の面積や高さを自由に設定」することはできません。道路斜線制限もその中の1つ。道路やその周辺の建物の採光や通風が確保されるため、道路に面した建物の一定部分の高さを制限しています。今回は道路斜線制限を解説していきます。

道路斜線はどんな線なのか

まず最初に見るポイントは、土地(敷地)に面している前面道路の反対側の境界線であり、道路中心線の高さであるAです。ここから一定の勾配で土地(敷地)に向かって線を引きます。このオレンジの矢印の線が表されているのが道路斜線です。斜線の勾配は用途地域によって変わります。

勾配や適用距離は用途地域によって変化する

第1・2種低層住居専用、第1・2種中高層住居専用、第1・2種住居、準住居といった住宅エリア(特定行政庁指定区域を除く)は1:1.25の勾配です。一方、近隣商業、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域などの商業系・工業系(無用途指定区域を除く)のエリアは1:1.5の勾配で道路斜線が引かれます。

また、前面道路の反対側の境界線から適用距離を超える部分に対して、道路斜線の制限を受けることはありません。その際は道路斜線の延長線上を超えた建物を建てることが可能です。この適用距離は用途地域や容積率の限度によって異なりますが、住居系地域では20~35mの範囲として定められています。

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用途地域容積率適用距離
第1種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域
第1種中高層住居専用地域*
第2種中高層住居専用地域*田園住居地域第1種住居地域*第2種住居地域*
準住居地域*
20/10以下
20/10を超え30/10以下30/10を超え40/10以下40/10を超える
20m
25m(20m)
30m(25m)
35m(30m)
* 特定行政庁指定区域については()内の値
近隣商業地域
商業地域
40/10以下
40/10を超え60/10以下
60/10を超え80/10以下80/10を超え100/10以下
100/10を超え110/10以下
110/10を超え120/10以下
120/10を超える
20m
25m
30m
35m
40m
45m50m
準工業地域
工業専用地域
工業地域
20/10以下20/10を超え30/10以下30/10を超え40/10以下40/10を超える20m
25m
30m
35m
用途地域の指定なし20/10以下20/10を超え30/10以下30/10を超える20m
25m
30m

道路斜線制限の緩和

道路斜線制限の基本的なルールは今までお伝えしましたが、それに加えて緩和ルールがいくつかあります。 

高低差による緩和

土地の地盤面が前面道路よりも高いと、本来のルールであれば建築可能な範囲が狭くなってしまいます。そこで高低差が1m以上ある場合の措置が高低差緩和です。道路との高低差から1mをマイナスした数値の1/2で分だけ高い位置を起点として、斜線制限を適用します。その結果、下図のように建てることができる建物の高さの上限が本来のルールよりも高くなります。

例えば高低差が2メートルある場合、(2mー1m)÷2=0.5mという計算になります。前面道路から0.5m高い場所を起点として道路斜線を引くことができます。

セットバックによる緩和

前面道路より建物をセットバック(後退)させて建てた場合も道路斜線制限緩和が適用されます。前面道路から建物まで後退距離であるL分だけ、道路斜線制限の起点が前面道路の反対側の境界線より後ろに移動します。緩和によって道路斜線の起点が従来よりも離れることによって、敷地の上を通る道路斜線が従来よりも高い位置になるため、建物の高さの上限が本来よりも高くなります。

ただし、後退距離は建物の外壁ではなく、最も突出している部分から算出します。屋根に軒が出ている場合、軒の先端からの測定となりますので、軒の出が大きい建物は不利になります。その外にもバルコニーや出窓といった凹凸が建物にはあります。建築物の最も道路に近い部分が後退距離となるので注意が必要です。

後退距離の算定から除外できる建物

その一方、後退距離の算出から除外されるものもあります。物置、カーポート、自転車置き場といった建築物が道路により近いところにあればそこが後退距離の基準になります。しかし、定められている条件を満たしていれば、それらは建築物から除外することができます。

・軒高が道路の中心から2.3m以下
・面積の合計が5㎡以下
・Bの採寸が敷地の間口Aの1/5以下
・道路境界からの距離が1㎡以上

これらの条件を満たすことができれば緩和されますが、カーポートは5㎡よりも広いため、この条件を満たせません。そのため、カーポートを設置する際は注意が必要です。

玄関ポーチの庇や屋根などが壁で囲まれていない箇所も以下の条件が揃えば後退距離の算定から除外することができます。

・庇や屋根の高さが道路の中心から5m以下
・Bの寸法が敷地の間口Aの1/5以下
・道路境界からの距離が1m以上

その外にも道路境界沿いに建てたフェンス、門、塀なども条件が揃えば後退距離の算出から除外できます。

・門や塀の高さが道路の中心地から2m以下
・道路の中心から1.2mを超える部分がフェンスなどの網状の物になっていること

隣地境界沿いに沿って作られたフェンスや塀も後退距離の算出から除外されます。

渡り廊下や歩廊などといった建築物で、特定行政庁がその地域の風土を考慮した上で定めた建築物の部分も後退距離の算出から除外されます。例えば多雪地域などにおける雁木(がんぎ)などが該当します。

テラスやウッドデッキといった、高さが1.2m以下の建築物の部分も後退距離の算出から除外されます。

公園による緩和

前面道路の反対側に公園、川の水面、広場、線路敷などがある場合、これらによって道路に採光や通風の確保ができるため、道路斜線の緩和措置をとることができます。

起点が従来のAポイントから公園などがあることで、反対側の境界線であるBポイントに移動することとなり、結果的に建物を建てられる空間が従来より広がります。仮にセットバックして建てた場合、後退した分をXmとすると起点はBから外側にXm分だけすすんだ場所になります。

2面道路による緩和

角地のように、複数の道路に接している敷地の場合、療法の道路から道路斜線が引かれますので、普通の敷地よりも制限が厳しくなります。そのための緩和策として2面道路による緩和があります。

・左側にある幅広い道路から幅の長さを計測します。(Aに該当)
・Aの幅の2倍か、35mのどちらか小さいほうを敷地内にラインを引きます(赤の点線)
・下側にある幅の狭い道路の中心から10mの距離にラインを引きます(矢印の先にある青の点線)
・「ア」エリアは左側の道路斜線、「イ」エリアは下側の道路斜線が適用されます。

立体にするとこのような図になります。

道路幅員が12m以上の場合の緩和(1.25緩和)

用途地域が第一種・第二種低層住居専用地域意外の住宅系地域において、前面道路の幅が12m以上の場合は緩和措置がとられます。

道路幅の1.25倍までのラインまでは通常の1:1.25の傾斜勾配ですが、1.25倍のラインより向こうでは1:1.5の勾配になります。

天空率による緩和

天空率とは魚眼レンズで天空を見上げた状態で、空が占める割合を計測したものです。

道路斜線ギリギリまで建てた建築物を適合建築物と仮定します。その後、前面道路の反対側を測定ポイントとして計測します。計画建築物が道路斜線を超えていても、緩和措置として天空率が適合建築物よりも大きければ問題はありません。

道路斜線制限のまとめ

今回は道路斜線についての基礎知識を解説してきました。家を新築するとき、増築する時など施工会社について話題になることがあるかもしれません。その場になって慌てないよう頭の中の片隅にでも記憶しておきましょう。

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