名古屋市では、2018年10月から「名古屋市子どもライフキャリアサポートモデル事業」として、モデル校へのキャリアコンサルタント常駐をスタートさせました。
この記事では、学校におけるキャリアコンサルタントの役割と、名古屋市の取り組み内容について解説しています。
幼少期からキャリア教育を行うことの意義などもまとめているので、名古屋市にお住まいの方や引っ越しを予定している方はぜひ参考にしてみてくださいね。
名古屋市が力を入れる“キャリア教育”とは
まずは、子どもたちにキャリア教育が必要とされる背景と、名古屋市が実施しているキャリア教育の概要について詳しく見ていきましょう。
キャリア教育の必要性
文部科学省では、キャリア教育が求められる背景として以下の項目を挙げています。
- 少子高齢社会の到来、産業・経済の構造的変化や雇用の多様化・流動化
- 就職・就業をめぐる環境の変化
- 若者の勤労観、職業観や社会人・職業人としての基礎的・基本的な資質をめぐる課題
- 精神的・社会的自立が遅れ、人間関係をうまく築くことができない、自分で意思決定ができない、自己肯定感を持てない、将来に希望を持つことができない、進路を選ぼうとしないなど、子どもたちの生活・意識の変容
- 高学歴社会におけるモラトリアム傾向が強くなり、進学も就職もしなかったり、進路意識や目的意識が希薄なまま「とりあえず」進学したりする若者の増加
出典:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/05062401/001.htm
多様化する社会の中で、自分の目標や進路が決められずにいる子どもが増えているというのが現状です。
そこで、キャリアを形成するための意欲・態度・能力を育てる教育として、小学校からの段階的なキャリア教育が推進されるようになりました。
児童一人一人が勤労観・職業観を身に付け、自分の意思で将来に向けた行動ができるようになることを目標としています。
名古屋市子どもライフキャリアサポートモデル事業の概要
名古屋市では、キャリア教育の一環として「名古屋市子どもライフキャリアサポートモデル事業」を展開。
2018年10月から名古屋市内の6校を対象に、キャリアコンサルタントの常駐が実施されています。
対象となった6校は以下の通りです。
小学校 | 矢田小学校(東区)・植田東小学校(天白区) |
中学校 | 長良中学校(中川区)・東星中学校(千種区) |
高校 | 北高校(北区)・工芸高校(東区) |
内容としては、キャリアコンサルタントの資格を持つ職員(キャリアナビゲーター)が学校に常駐し、教師と連携しながらライフキャリアに関するサポートを行うというものです。
具体的な業務内容には以下のようなものがあります。
キャリアナビゲーターの業務内容 | |
児童生徒 | ライフキャリア形成相談(個別相談) ライフキャリア形成に関する授業の実施 など |
保護者 | ライフキャリア形成相談(個別相談) ライフキャリア形成に関する講演会の実施 など |
教師 | 職業体験授業のコーディネート キャリア教育にかかるコンサルティング など |
その他 | ライフキャリアサポートに関する情報収集・提供 ライフキャリア形成支援に関する広報 キャリア啓発環境作り支援 など |
モデル校の6校では、実際に以下のような取り組みが行われました。
学校 | 取り組み内容 |
矢田小学校 | 児童の居場所作りやライフキャリア形成支援の場として相談室を整備 職業紹介に関する動画の放映 など |
植田東小学校 | 特定の生徒への付き添い支援 商店街への訪問授業 など |
長良中学校 | 面接対応力の向上を目的とした模擬面接・講義の実施 不登校生徒・保護者に対する個別支援 など |
東星中学校 | 児童100人分の職場体験先の提供 コミュニケーションに課題のある生徒を中心とした集団支援 など |
北高校 | 文理選択で悩む生徒に対する面接・進路選択の支援 職業を通じた自己理解を育むOHBYカード(写真やイラストを使った職業紹介カード)での実践授業 など |
工芸高校 | 進学・就職で悩む生徒に対する進路選択の支援 「自分が本当にしたいこと」を考えさせる模擬面接の実施 など |
(http://www.city.nagoya.jp/kodomoseishonen/cmsfiles/contents/0000120/120694/02_siryou1.pdfより一部抜粋)
これらの成果を踏まえ、名古屋市は2020年度のモデル事業対象校を6校から30校まで拡大。
またこれに伴う関連経費としておよそ3億円が計上されています。
名古屋市内の小中高校および特別支援学校の数は400校近いため、今後は規模拡大に伴う予算の工面などが課題と言えるでしょう。
キャリア教育の今後
名古屋市の姉妹都市であるロサンゼルスでは、約460の職業分野からいくつかの科目を選択し、専門家による指導が受けられる「キャリアパスウェイ」という制度があります。
この制度に目を付けた名古屋市教育委員会は、2020年度中に米国でのキャリア教育の調査研究に乗り出すことを発表しています。
今後はロサンゼルスで実施されている「キャリアパスウェイ」の取り組みを参考に、新たなキャリア教育の導入が行われるかもしれません。
まとめ
今回ご紹介した「名古屋市子どもライフキャリアサポートモデル事業」以外にも、名古屋市では学校教育に対する様々な努力目標を掲げ、実践しています。(参考:http://www.city.nagoya.jp/kyoiku/page/0000050781.html)
これらの制度を活用するためにも、名古屋市内へ引っ越しの予定がある方は、地域ごとの取り組み内容を事前に知っておくことをおすすめします。