大規模修繕とは

マンションはどれだけ頑丈に作られているとはいえ、雨風や日射の影響を受ければ少しずつ建物は劣化していきます。建物の保全と資産価値を維持するためにも修繕が行われますが、その中でも足場を組んで行われる大規模な工事のことを大規模修繕と呼ばれています。そこで今回は大規模修繕工事の概要や定義、平均実施時期などを解説していきます。

概要

大規模修繕工事は、経年劣化を防ぐことを目的に行われる工事です。建築基準法に沿ってマンションも建築されていますので、最低限の耐震性や防水性は担保されています。建築当時、どんなに優れた建築資材を使ったマンションであっても、時間の経過による劣化は避けようがありません。

分譲マンションの場合、管理組合が修繕を主導して行われるのが一般的です。対象となる場所は共用部分であり、主な工事として鉄部等塗装工事、外壁塗装工事、屋上防水工事、給水管工事、排水管工事などがあります。

定義

建築基準法

大規模修繕工事の定義は建築基準法と国土交通省のガイドラインによって異なります。建築基準法において大規模修繕は第二条第十四号及び十五号で記述されています。

第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。十四 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。十五 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。

主要構造部は壁、柱、床、はり、屋根、階段を指します。つまり大規模修繕とは、壁、柱、床、はり、屋根、階段のうち、一種類以上その半分以上の修繕、模様替えをする工事です。

建築業界での一般的な「修繕」とは、「同じ材料を使い、同じ形状、同じ寸法で作り替えて元の状態に戻し、建築当初の性質や品質を回復させる」です。マンションで言えば、古くなった箇所を最初の状態に戻すことになります。

一方、「模様替え」は部屋の模様替えのようなイメージを持たれるかもしれませんが、建築上での「模様替え」とは「既存の材料とは異なる材料や仕様で造り変えて、性能や品質を回復する」工事です。

一般的なマンションの大規模修繕工事では、塗装や防水を修繕することはあっても、主要構造部への修繕はそれほどありません。マンション修繕工事の大部分は建築基準法でいう大規模修繕とは異なります。

国土交通省

国土交通省は建築基準法に基づきながら、マンションの改修・模様替えについてのガイドラインを提出しています。

国土交通省による大規模修繕とは、以下のように言及されています。

マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物および設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間に渡るものなどをいう。

また、修繕を「部材や設備の劣化部の修理や取り換えを行い、劣化した建物又はその部分の性能・機能を実用上支障のない状態まで回復させる行為」としています。

大規模修繕は共用部分を対象とし、通常は共用部分の管理行為として計画されるが、大規模修繕工事・改修工事は、その規模・内容・程度等から共用部分の変更工事となるのが一般的であるとする

などの記述もあり、建築基準法よりもより現実に即した内容になっています。

義務

法律ではありませんが、国土交通省が分譲マンションの標準的なモデルとして作成したものに標準管理規約があります。修繕積立金はこの標準管理規約第25条、27条に記載されており、今回取り上げている大規模修繕を行うときなどに限り取り崩すことができるとされています。

これにより、修繕積立金を集めている以上大規模修繕を行うことは実質義務となっています。

主な大規模補修工事内容

外壁塗装工事

外壁が紫外線や風雨などによる、変色・退色、ひび割れ、チョーキング現象・白亜化、塗膜のはがれ・膨れ、藻・コケ、カビの繁殖・自然汚染、錆びの発生などを防ぐために、劣化部分を補修し新たな塗料を塗装すること

鉄部等塗装工事

風雨によって酸化し錆びてしまう鉄の部分に、錆びを除去し酸化を防ぐ塗装をする工事

屋上防水工事

屋上に施工されている防水層が経年劣化によって、ひび割れ、剥がれ、膨れ、水たまり、雨漏りなどが起こることを防ぐためにする工事

給水管工事

給水管に錆び、腐食を防ぐ工事

排水管工事

詰まり、漏水を防ぐ工事

平均実施時期

外壁塗装工事10.8年
鉄部等塗装工事8.2年
屋上防水工事10.3年
給水管工事14.2年
排水管工事14.2年

大規模修繕工事の平均実施時期はこのようになっており、10年前後で行われています。

大規模修繕工事の実施状況を見た場合、外壁塗装工事、外壁補修工事、屋外防水工事の比率が高くなっています。

工事総額

大規模修繕工事とはいえ、工事総額が6千万未満のものが全体の63.6%も占めているのが現状です。修繕積立金を原資としているものも多いですがが、一時徴収金や借入金も一定割合を占めています。

計画的に実施することが重要

マンションの経年劣化や不具合に対して大規模修繕などを計画的に実施していくことが重要です。しかし、全体的にみれば工事総額は低く、資金の調達方法も修繕積立金で賄いきれていない実態もあるのが現状です。

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