脱ハンコでどうなる?不動産取引の実印事情

政府が「脱ハンコ」を推進しています。行政手続きの書類に必要なハンコをやめよう、そしてオンライン化を加速しよう、という取り組みです。一方、不動産取引においては実印が必要な場面がたくさんあり、重要な役割を果たしています。ここでは不動産取引で実印が必要なもの、不要なもの、そして今後の取引の簡素化の流れについてご紹介します。

 不動産取引で実印が必要な場面は?

不動産取引において実印が求められるケースは、主に売買契約書を取り交わすとき、金融機関と住宅ローンの契約を結ぶとき、そして登記手続きをするときです。それぞれ見て行きましょう。

売買契約書

不動産の売買契約書には実印を押すことが求められるのが一般的です。法的には売買契約書は認印でも有効ですが、以下のような理由から実印を求められます。

売主が真の不動産の所有者であることを確認するため(取引の安全性を高める目的)

・所有権移転のときに法務局が書類の照合をしやすくするため(登記手続き目的)

・契約の重要性を高めて安易な解除を防ぐため(売買当事者への心理的な影響を高める目的)

・住宅ローン等融資を受けるときに金融機関が本人確認をするため(ローン契約の目的)

 売買契約書に実印を使うことにより、その契約書が添付書類となる他の手続きにおいて照合がしやすくなる、安全性を高めることが目的と言えます。

住宅ローン

次に住宅ローンの手続き時です。不動産売買の買主が住宅ローンなどの融資を利用する場合は審査や申し込みのときに金融機関から売買契約書の原本確認、写しの提出を、住宅ローンの契約(金銭消費貸借契約)のときに実印の押印と印鑑証明書の提出を求められることが一般的です。

不動産登記

不動産の登記にはいろいろな種類があります。種類によって実印が必要なもの、そうでないものがあります。

不動産登記で実印が必要なもの

 

所有権移転登記(売買の売主側に対して)

所有権移転登記は「この不動産が自分のものである」と公示するための大切な手続きです。不動産の売買の売主側が本当の所有者であることを確認する目的で売主側の実印、印鑑証明書が必要です。自分の不動産ではないものを勝手に売って買主から代金を騙し取るといった詐欺事件を防止することを目的に売主側に実印が要求されています。また、贈与の場合の移転登記についても譲る側には実印が必要です。

抵当権設定登記(債務者、お金を借りる側)

抵当権設定は住宅ローンなどでお金を借りたときに家や土地を担保として差し出すときに必要な手続きです。お金を借りる側(債務者)が担保に供する不動産の所有者であることを確認するために実印を要求しています。お金を貸す側(債権者)には要求されていませんし、抵当権抹消登記にはローンが完済したことを証明するための書類等が要求されているかわりに、実印は要求されていません。

土地合筆登記(委任状のため)

土地合筆は複数の土地を合併するときに必要な登記です。登記そのものには実印が要求されているわけではありませんが、土地家屋調査士等に委任して行う際に委任状に必要になります。

不動産登記で実印が不要なもの

次に不動産登記手続きで実印が不要な場合の例を見て行きます。

所有権保存登記

所有権保存登記は建物を新築したときに行うもので、これにより第三者に対して建物の所有権を主張することができます。建物を担保にお金を借りようとするような場合に必要な手続きです。

土地分筆登記

土地の一部を売却するような場合に一つの土地を複数に分けて登記する必要があります。

建物滅失登記

建物が消失したり、取り壊した際に固定資産税がかからないようにしたり、土地の売却をするために必要です。申請義務がある手続きで怠ると過料が課せられる可能性があります。

このように実印が不要な場合は必要な場合に比べて権利者が不利益を受けない場合がほとんどです。

不動産取引も脱ハンコ化!?

不動産取引においても手続きの簡素化が進められています。不動産登記手続における添付書類の簡素化を行うため、令和2年3月には「不動産登記規則等の一部を改正する省令」が出され、要件を満たす場合については印鑑証明書の添付が不要とするケースも出てきました。国の施策の流れは脱ハンコ・オンライン化・簡素化の方向に向かっていることは間違いなく、今後も適正な取引を担保しつつより便利な取引方法の検討が進んでいくと思われます。

まとめ

いかがでしょうか。不動産取引において実印が必要な場合、不要な場合、そして今後の流れを解説してきました。適正な取引を担保するために実印が要求されている状況がお分かりいただけたかと思います。脱ハンコの流れの中で実印の役割を果たす代替手段ができると不動産取引においても実印が不要になる時代が来るかもしれません。安全・簡単・確実な手続きができることを期待しましょう!