政府の家賃補助制度・自民党案まとめ

新型コロナウィルス感染拡大による経済への影響はまだまだ広がっていきそうな気配です。

家賃支援に関しては野党からも案が出ていましたが、与党案がまとまりましたので(令和2年5月8日)、制度をわかりやすくまとめました。また、テナント側、オーナー側双方の視点で評価してみました。

ハイブリッド型の家賃補助制度

今回の与党案では、「ハイブリッド型」を謳っています。その柱は次の通り。

⑴既存の制度である「無利子・無担保の融資」を家賃向けに積極化

前年度比15%以上売上減の中小企業や5%以上減のフリーランス、個人事業主が無利子・無担保で3000万円まで融資を受けられます。また、すでに金利付きの融資を受けている場合でも、この金利なしの融資に借り換えることが可能です。普段お世話になっている金融機関が窓口になってくれます。

⑵「特別家賃支援給付金」の創設

給付率2/3、中堅・中小企業は上限50万円/月、個人事業主は上限25万円/月で年内半年分の家賃についての給付金です。つまり返済不要です。

「持続化給付金」は1ヶ月の売上が前年度比50%以上減った事業者が対象でしたので、ギリギリ達せずに悔しい思いをした事業者も多かったのではないでしょうか。今回はその基準を前提にしながらも、3ヶ月で30%減でも対象にするなどの基準拡大も検討されています。

*「ハイブリッド」とは

⑵の特別家賃支援給付金は⑴の融資の返済に充てることができる、とされています。

つまり、今月家賃が払えなくなる事業者はまず⑴で無利子・無担保の融資を受け、その後⑵の給付金に申請してその中から⑴の元本を返済すればいいのです。⑴は既存の制度ですから、明日にでも銀行の窓口で相談できます。これでずっと言われてきた「スピード感」を出して、すぐにでも現金がないと廃業するしかないテナントを救済することができるという制度になっています。     

   

地方自治体への支援

地方自治体が独自に行なっている家賃に関する支援(家賃減免を行なったオーナーへの支援も含む)に対して「地方創生臨時交付金」を拡充して国から自治体に支援を行ないます。これにより、現在よりも積極的に家賃支援を行なう自治体が増えることが期待できます。

以下に、5月9日の時点で確認できる自治体の家賃支援の取り組みをまとめてみました。

自治体(アイウエオ順) 金額 URL(5月9日時点)
事業者向け
 青森市 月額賃料の8割(最大30万円) 青森市
 熱海市 月額5万円を2ヶ月分 熱海市
 いわき市 家賃2分の1を6ヶ月分(最大月5万円) いわき市
 岩手県 家賃の2分の1(最大30万円) 岩手県
 大分市 月額家賃の5分の4(最大3ヶ月分、月8万円) 大分市
 鎌倉市 家賃相当額(最大2ヶ月分) 鎌倉市
 北九州市 家賃の5分の4(最大40万円) 北九州市
 熊本市 家賃の10分の8(最大28万円) 熊本市
 上越市 月額家賃3ヶ月分(最大30万円) 上越市
 根室市 3、4月に支払った家賃(最大5万円) 根室市
 弘前市 最大10万円 弘前市
 福岡市 家賃の10分の8(最大50万円) 福岡市
 福島市 家賃の2分の1を4ヶ月分(最大20万円) 福島市
 文京区 月額賃料の5分の4以内(最大20万円) 文京区
 別府市 月額賃料の2分の1(最大7万円) 別府市
 横須賀市 3、4月の月額賃料の2分の1(最大月20万円) 横須賀市
 蕨市 家賃が10万円を超える場合、超えた額(最大5万円) 蕨市
オーナー向け
 神戸市 減額した家賃総額の10分の8(最大200万円) 神戸市
 新宿区 減額した家賃の2分の1(最大月5万円、6ヶ月) 新宿区
 四日市市 減免した額の2分の1(最大22万5000円) 四日市市

賃貸借契約の維持への取り組み

今回の新型コロナの影響でテナントが賃料を数ヶ月払えなくても、立ち退き請求は認められませんからオーナーは誠実に対応しなさい、と周知します。

金融機関への柔軟対応の要請

各金融機関は、とにかく速く企業や個人事業主に融資しなさい、というもの。また、家賃の減免や支払い猶予に応じているオーナーに対する融資に関しても、返済期間などの条件変更を柔軟に行なうように金融機関に要請します。

◉テナント側から見ると

テナントが家賃を給付型で助成されることについて不満があるわけありません。ありがたいのひと言です。

これまでいくつかの自治体で行なわれてきたオーナー側への助成や支払い猶予、家賃の減免、というのはテナントとオーナーが話し合いをして減免や猶予を決めることが前提になっていました。ところがオーナーに対して家賃減免や支払い猶予をお願いするのは言いにくい、申し訳ない、というテナントもたくさんいます。そのようなテナントはこれまでに利子付きの融資を受けて家賃を支払ってきました。今回、早い段階で行なわれた融資に対しても無利子・無担保融資に借り換えができ、その後の給付金で返済できるという制度は、とても有難いものです。

ただ、この無利子・無担保融資が本当に速やかに受けられるものなのかどうか。「速く融資しなさいよ」と要請するということは、現状は迅速な融資ではないのでは? という素朴な疑問を持ってしまいます。加えて、「融資を受ける」ということに対して心理的ハードルを感じるテナントも少なくありません。業績や経営状態を全て明らかにする必要があるからです。融資を受けたい事業者は、今すぐ現金が必要な事業者です。その後の給付まで待てない事業者に対してすぐにでも融資が受けられる状況であることが、今回の「ハイブリッド」の前提になるのではないでしょうか。

◉オーナー側から見ると

大家から見ると、月額の賃料は変わらず、回収の不安が減るという点では良い制度と
思います。ただし、途中に金融機関の審査を挟むことで本当にスピードがでるのか
どうか疑問です。また、50万円では対象がかなり限られるように思います。
また、自民党案では、減額や猶予に積極的に応じるようにといったことも求められて
います。しかし、一般の大家は「空室リスク」は自らのリスクとして織り込んで経営を
行っています。減額・猶予よりも退去してもらったほうがいいケースというのは少なく
ありません。
テナントが今回の家賃支援制度を活用したり、減額・猶予する前提として、大家が
テナントの決算書を確認することを求めるなど、信頼確立に向けて明確な指針を
示していただきたいと思います。