自宅を民泊で貸すには?

自宅を使って民泊業を営む場合、法律に基づいた届出や運営ルールの順守が求められます。
そこで今回紹介するのが、近く施行される民泊新法(住宅宿泊事業法)の内容や民泊の始め方、事業を行う建物の構造上の注意点などについて。また、届出手続きや名古屋市内で開業する場合の独自ルールも含めて解説していきます。

新法民泊について

民泊新法とは

民泊新法(住宅宿泊事業法)とは、「既存の住宅」を1年間で宿泊させる日数が180日を超えない範囲で、1日単位で利用者に貸し出すという住宅宿泊事業について、「ホテル営業」、「旅館営業」「簡易宿泊営業」、「下宿営業」、「特区民泊」という4つの営業形態を定めた従来の旅館業法が適用されない事業を規定する法律です。

この1年間あたり180日以下および1日とは、国土交通省令・厚生労働省令で定められている宿泊可能日数となる算定方法の根拠となっています。

これらの省令によれば、1年間とは「毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで」を指し、1日は「正午から翌日正午まで」とされています。
また、同一の事業者が複数の住宅を民泊事業として供する場合、届出住宅ごとに算定されています。

民泊新法の由来

民泊新法(住宅宿泊事業法)の由来ですが、急速に拡大する民泊へのニーズに対して安全面や衛生面の確保、騒音やゴミだしによる近隣とのトラブルといった社会問題が懸念されます。
これの対処を目的とするほか、多様化している観光客の宿泊ニーズへの対応などを行うために、一定のルールの下、健全な民泊サービスを普及させる目的で新たに制定されました。

民泊新法は2017年(平成29年)6月9日に成立した法律で、実際の施行日は2018年(平成30年)6月15日です。

民泊新法が対象としている事業者は「住宅宿泊事業者」、「住宅宿泊管理業者」、「住宅宿泊仲介業者」の3つです。
上記の事業者を監督する行政庁はそれぞれ異なり、住宅宿泊事業者は都道府県知事等、住宅宿泊管理業者は国土交通大臣、住宅宿泊仲介業者は観光庁長官とそれぞれ監督されています。

なお、住宅宿泊事業者の場合については都道府県知事に代わり、保健所設置市の長(政令市、中核市等)、特別区の長(東京23区)が届出の受理や監督、条例制定事務を処理できます。

この中で、自宅などの「住宅」を民泊で貸す事業者は「住宅宿泊事業者」に該当します。
また、民泊新法が住宅で民泊事業を営めることを定めていることの意義として、住居専用地域でも宿泊事業が営めるようになったことが挙げられます。

従来の旅館業法におけるホテルや旅館などの場合は用途地域の制限があり、それらの建物の建設が許されている地域でしか営業できないことになっています。
そのため、制度的にかなり要件面で緩和されているといっても過言ではありません。

住宅の定義については後述する「構造上の注意事項」という項目にて詳細が説明されていますので確認してみてください。

なお、後述する名古屋市の例のように自治体によってはこのような住宅専用地域での民泊について条例で制限を設けているところもありますので注意しましょう。

民泊の始め方


次は、自宅などを民泊で貸すために事業をする場合の始め方です。
事業者となる方が、民泊新法では都道府県知事等に当該事業を営む旨の届出をすることにより開始することができます。
この届出の際、同時に入居者募集のための広告など住宅が居住要件を満たしていることの証明となる書類や貸し出す該当の住宅の図面などを添付することが必要です。

このほかに添付する書類については住宅の登記事項証明書など事業者が法人と個人とで共通する書類や両者で異なる書類など様々な書類の添付が必要となっていますので注意が必要です。
また、届出書への記載事項については、商号、名称または氏名、住所のほか、マンションやアパート名といった住宅の所在地、住宅の規模など様々な項目を記載する必要があります。

なお、民泊に関する法律が制定される前は簡易宿泊を事業として営むには民泊新法の「届出」ではなく、「旅館業法」による行政の「許可」が必要でした。

旅館業法における許可制では、許可を得るために通常の住宅より厳しい消防設備の設置や居室部分の最低床面積などの厳しい要件をクリアしなければなりません。
そのため、行政から許可が下りずに営業できないルールでした。

民泊新法の届出制では、違法行為などにつながる証拠がなければ届出を却下することは許されません。
つまり、民泊新法のおかげで民泊事業は非常に始めやすくなってきているのが実情です。

ただし、届出をすれば営業に関する指導など、行政からの関与が一切ないという訳ではありません。
民泊新法では、家主居住型ないし家主非居住型の民泊を問わず、必要に応じて行政庁は報告徴収や立入検査を行うことができます。

これは違法な営業が行われている場合、その実態調査を行いその後の指導等を行うための根拠となる事実確認のために行われるものです。

構造上の注意事項


民泊新法において民泊事業を行うための「住宅」は、設備要件と居住要件の2つの要件を満たしていることが求められます。
設備要件で必要な設備としては「キッチン」、「浴室」、「トイレ」、「洗面設備」です。
このほかにも民泊を開始するには事業用の住宅の床面積などに応じて、消防用設備等の設置が義務付けられています。

設置が必須となる消防設備として、後述する例外を除いてほぼ全ての住宅で「自動火災報知機」と「誘導灯」が該当します。
自動火災報知機とは、火災発生時において火災により生じた熱や煙、炎を感知器が感知すると、その感知器が受信機に送られる火災信号をもとに、受信機がベルなどの警報を鳴らして建物内の人に火災発生を知らせる仕組みを持つ機器です。

一方、誘導灯とは、非常時発生の際に屋外へ安全に避難できるように屋外に通じている扉や避難口に通じている通路に設置される標識のことです。
一般的な誘導灯としては、人が避難しているマークを表示している避難口誘導灯や矢印が表示されている通路誘導灯などがあります。

なお、自分が住んでいる居住用の住宅の一部を民泊で貸す場合です。
また、民泊に使用する面積が建物全体の半分未満で、かつ宿泊客の寝室部分が50㎡以下の場合は自動火災報知機も含めた消防設備等の設置は不要です。

反対に50㎡を超える寝室部分の場合、住宅用火災報知器については設置が義務付けられます。
上記以外にも民泊部分の床面積が150㎡以上の場合、消火器の設置が義務付けられているので覚えておきましょう。

また、ほかに営業する面積や共同住宅といった建物の形状などにより、消防用設備等の要件が異なりますので事前に十分な確認が必要です。

居住要件については、「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」、「入居者の募集が行われている家屋」、「随時その所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋」の3つの要件があります。

このうち、「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」とは、特定の人が住民票上の住所として暮らしているといった継続して生活しているような家屋を指します。
一時的に生活しているような家屋は該当しません。

「入居者の募集が行われている家屋」とは、民泊事業を行っている間も売却中の物件であったり、賃貸の募集をかけていたり、人が居住するために入居者を募集している最中の家屋を指します。

あくまで売却や賃貸などを前提として、その間に民泊が行われていることが条件となります。
「人が入居しないような不利な条件で募集を行っている家屋は該当しない」、この点に注意する必要があります。
「随時その所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋」とは、最低年に1回以上は使用されている、かつ生活の本拠として使われていない家屋のことです。
そのため、全く使用履歴のない民泊専用の投資用新築マンションやアパートなどは適用対象外です。

愛知県担当部署

区域 場所名
一宮市、稲沢市 一宮保健所
瀬戸市、尾張旭市、豊明市、日進市、長久手市、東郷町 瀬戸保健所
春日井市、小牧市 春日井保健所
犬山市、江南市、岩倉市、大口町、扶桑町 江南保健所
清須市、北名古屋市、豊山町 清須保健所
津島市、愛西市、弥富市、あま市、蟹江町、大治町、飛島村 津島保健所
半田市、東浦町、阿久比町、武豊町、美浜町、南知多町 半田保健所
常滑市、東海市、大府市、知多市 知多保健所
碧南市、刈谷市、安城市、知立市、高浜市、みよし市、豊田市 衣浦東部保健所
西尾市、幸田町、岡崎市 西尾保健所
新城市、設楽町、東栄町、豊根村 新城保健所
豊川市、蒲郡市、田原市、豊橋市 豊川保健所

【出展:愛知県民泊について

愛知県における民泊事業開始のための手続きの流れについて簡単に説明します。
民泊新法や条例で規定されている要件について、確認して事業の可否を検討したらあとに、建物の図面を準備して安全措置の確認が必要です。

次に、保健所に事前に相談するとともに周辺住民へ事前に事業について周知が必要です。

また、管轄の消防署に消防法令適合通知書の交付を行い、交付を受けたらほかの申請に必要な添付書類とともに、届出書を県内の管轄保健所宛て(名古屋市の場合、原則として民泊制度運営システムを通じて管轄保健センター宛て)に提出を行います。
届出書に不備がある場合は差し戻されますので、不備となる該当箇所を修正の上で再提出をしましょう。

最終的に不備なく受理された場合、標識が掲示されますので事業開始となります。
なお、一連の手続きはペーパーベースの書類による手続きのほか、民泊制度運営システムによるインターネット上でも可能です。

名古屋には独自ルールあり

民泊事業を行う場合、民泊新法という法律のほかに各地方自治体により施行されている条例が適用されている場合があります。
その場合、事業者は法律と条例に従わなければなりません。
名古屋市の場合、独自のルールが条例で定められていますので次にご紹介していきます。

名古屋市では「名古屋市住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例」が施行されており、住宅宿泊事業を実施する区域・期間に制限が加えられています。
条例の内容ですが、制限される区域として住居専用地域(第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域)です。
同地域で民泊事業を行う場合、月曜日の正午から金曜日の正午まで(国民の祝日に関する法律に規定する休日の前日の正午から当該休日の翌日の正午までを除く)は事業が制限され、事業を行うことができません。
【参照:名古屋市(住宅宿泊事業(民泊)届け出)

まとめ

民泊新法に基づき自宅を使って民泊事業を行う場合、概要や要件などについて解説してきました。
法令上の要件に加え、名古屋市の条例など各自治体によってもルールが異なります。
もし、事業を開始される場合は紹介した内容を確認してから行いましょう。

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