投資用不動産の物件概要書の見方

不動産投資を行う上で避けて通れないのが、物件概要書です。物件概要書にはさまざまな情報が記載されており、物件を判断する上で役立ちます。今回はサンプルで架空の物件概要書を作りましたのでこれに沿って説明します。

物件概要書に書かれている情報

物件概要書とは対象としている物件の情報を記載している書類です。決まった形式はないため、誰でも自由な形式で作成することはできます。記載される項目は不動産の住所、価格、面積、構造などがあります。不動産の特徴や価値をまとめたものではありますが、土地の情報も記載されているのが特徴です。物件概要書は「物件情報等報告書」「物件報告書」といった別の呼び方で呼ばれている場合もあります。

物件名

共同住宅の場合は建物名が入ることが一般的ですが、それ以外の場合「売土地」「一軒家」など、ざっくりした書き方になることもあります。

住居表示

郵便などで日常的に使う表示のことです。普通は建築物を建てたときには市役所等から割り当てられます。建物を取り壊したあとで一旦住居表示が不明瞭となっていたり、山林など開発中の土地の場合は、まだ割り当てられていないことがあったりするので「◯◯地先」などの概要の場所で書かれていることもあります。また、売主から非公開を希望されている場合「〇県△市一丁目」など、途中で終わっている場合もあります。

地番

地番表記とは登記簿上の住所のことです。住居表示と全く同一のことはほぼありません。

交通

通常、公共交通機関からの距離を記載しています。徒歩時間は道路80mを徒歩1分にしています。大きな道を渡るために横断歩道や歩道橋を迂回する場合、その距離を含める必要があります。一方で坂道や、信号の待ち時間などは含まれません。駅の出口が複数ある場合最も近い場所からの距離で構いません。売り手側はなるべく有利に表示したいので、最短距離を探っています。物件を買う前には必ず実際に行って、自分で歩いてみるべきです。

地目

不動産登記法により登記官が設定します。全部で23区分あります。主なものは。「宅地」「田」「畑」「山林」「雑種地」です。地目により固定資産税額が変わります。ただし、この地目と実際の利用状況が異なっていることも多く、アパートが立っていても「畑」のままのこともあります。農地になっている場合、売買するためには農業委員会の許可が必要ですが、地目と農地法上の指定が異なっている場合もあります。売買のときには確認するようにしましょう。

取引形態

売主、代理、媒介(仲介)に分かれます。売主以外の場合は、仲介手数料がかかります。

地積・公簿

登記簿上の面積のことです。実際の面積と異なることがほとんどです。しかし、あまり修正されることはありません。測量するためには費用と時間がかかりますので、両方を省きたい場合、合意の上で「公簿上の面積で取引をする」ということがあります。その場合、売買後に測量したところ面積より多かったり少なかったりしても、それによって金額が増えたり減ったりする、ということはされないのが一般的です。

地積・実測

実際に測った面積のことです。公簿面積と実際の面積を比べたときに、公簿面積が小さく表示されている場合、坪単価が高く見えてしまうことがあります。そのため、差が大きいときには測量してから売り出されることがあります。

地積・私道

負担がある場合「負担あり」とされたり、面積が記載してあったりします。

道路

幅員4m以上の道路に2m以上接する必要があります。幅員とは道路の幅のこと。4mない場合はセットバックが必要です。道路と接している部分の幅のことが「間口」です。2mに1cmでも足りなければ建物を建築することができません。

権利

所有権、借地権の2つが一般的です。それ以外の権利関係について細かく記載がある場合は、必ず詳細の説明を求めてください。

建築面積

土地のうち、建物が建っている面積のことです。母屋以外に離れや倉庫がある場合それらも含めます。ただし、倉庫などは登記されていないこともあります。登記されていない倉庫や増築部分などを含めると建ぺい率違反になることもあるので、建ぺい率ギリギリの数字になっている場合、念の為に増築部分がないか確認しましょう。

延床面積

建物全体の面積のことであり、後述する容積率に関係します。建築面積同様、増築など新築後に変更した部分がないか確認しましょう。

構造

通常、木造、鉄骨、鉄筋コンクリート(RC、SRC)のどれかです。時々「コンクリートブロック造」などのことも。主に減価償却費を計算するときの耐用年数を計算するために、使います。免震、耐震構造はここには書きません。

種類

建物の種類のことで11種類あります(居宅、店舗、寄宿舎、共同住宅、事務所、旅館、料理店、工場、倉庫、車庫、発電所及び変電所)シェアハウスなどは「寄宿舎」となっていることもあります。どの種類になるかによって、規制が異なりますので重要な項目です。投資用の場合、ほぼ「共同住宅」ですが、条例や建築などの条件をクリアするために、一部を事務所扱いにすることもあります。

築年

建造された年のことです。減価償却や、ローンの年数などを決定する非常に重要な項目です。登記簿上に記載されている事項であり、こちらはあまりズレていることはありません。なぜか和暦で書かれていることが多いです。令和に30を足すと平成になります。(例:令和4年は平成34年相当)1981年(昭和56年以前) のものは「旧耐震」のことがありますが、最近はだいぶ減ってきました。

間取り・戸数

複数の間取りがある場合 1LDK・5戸、2LDK・3戸、などと内訳がかかれていることもあります。なお、入居中は中を確認することはできません。物件が何度か売買を繰り返されてきた場合、退去後に実際に中に入ってみたら間取りが違った、ということもありえます。

駐車場

住居に付属の駐車場の場合、最低これだけのサイズを確保しなさいという規定はありません。国土交通省による指針では軽自動車で2.0m×3.6m、普通乗用車は2.5m×6.0mとされています。ただ、前面道路が狭いなどのばあい、これでは入れにくいことも。購入する場合には現地を確認したいことのひとつです。

設備

この内容が実際と異なる場合は後から必ず費用がかかります。ガスは都市ガスが来ているエリアでもあえてプロパンにしていることもあります。下水が浄化槽の場合、メンテナンス費用が余分にかかります。

都市計画

土地利用、都市施設の整備、市街地開発事業に関する計画のことを指します。都市計画の最も大きなくくりが、都市計画区域と準都市計画区域の2つであり、これ以外は規制のないエリアです。

都市計画区域:さまざまなルールが課せられているエリア準都市計画区域:都市計画区域とまではいわなくてもある程度規制がかかるエリア

さらに都市計画区域は以下の3つに分けることができます。

市街化区域」積極的に市街化を行う区域市街化調整区域:基本的には市街化を行わない区域非線引き区域:特にプランを定めていない区域

用途地域

建築基準法で用途地域という法律により建てられる建物が決まっています。これはさまざまな建築物が混在することで起こるトラブルを少なくするために、地域ごとに合理的な規制を行い、誰もが住みやすい環境整備のために設けられています。用途地域は以下のようなエリアがあります。

第一種低層住宅専用地域

住環境を守ることを最優先にしている地域です。戸建て住宅がメインであり、小規模な賃貸住宅、お店や事務所などを兼用した住宅を建てることが可能です。

・クリーニング店

・パン屋

・米屋

・学習塾

・小中学校

・老人ホーム

・診療所

などは問題ありません。

10メートル、もしくは12メートルの高さ制限があり、容積率の制限もあるため高い建物を建てることができませんし、大規模な病院は建てることができません。

分譲マンションも3階建てまでに限定されるエリアです。

第二種低層住宅地域

第一種低層住宅専用地域で建てられた建物以外にも、150㎡までの店舗は可能になります。コンビニエンスストアも開くことができますが、店舗は2階以下に限定されています。建ぺい率や容積率などの制限が厳しいため、隣地にギリギリまで建物が建てられることはありません。庭や駐車場が2台分とれるような敷地に、余裕をもった2階建ての戸建てが多く見られます。

第一種中高層住宅専用地域

中高層住宅専用地域になると、低層住宅地域よりも制限や容積率が緩和されます。町並みは中規模のマンションが中心のエリアです。あくまでも住むことを目的とした住居専用地域のため、それほど建物が密集したエリアではなく、オフィスビルも許されてはいません。

・4階以上のマンション・大学

・専門学校

・病院

・老人福祉センター

・500㎡までの店舗や飲食店

・300㎡以下、2階以下の自動倉庫

これらが可能になります。

第二種中高層住居専用地域

第一種中高層住居専用地域に加えて以下のものも可能になります。

・1500㎡で2階以下の条件付きの店舗、飲食店、事務所

・300㎡で2階以下の車庫

・自家販売食品工場

中規模マンション、アパート、店舗、飲食店などが立ち並ぶエリアです。

第一種住居地域

中規模マンション、一戸建て、商業施設、工場が立ち並ぶエリアです。昔からある比較的狭い街の住宅地や、中高層住宅専用地域の周辺であれば主要道路沿いにそれぞれ指定されています。戸建てやマンションが密集したエリアが形成することが多くなる地域です。

・3000㎡までの店舗、事務所

・ホテル、旅館

・遊戯施設(条件付き)

・50㎡以下の工場

これらの建設が可能です。

第二種住居地域

住宅エリアでありながら大規模な店舗や事務所が可能であり、遊戯施設の条件も緩和されているエリアです。

・10,000㎡までの事務所、店舗

・パチンコ店

・カラオケ店

これらが建設可能となり、駐車場がある中規模のスーパーマーケットも建てることもできます。

準住居地域

道路の沿道で住居と自動車関連施設などが調和することを目的した地域です。戸建て住宅などの住居の他、店舗、飲食店、事務所などが立ち並んでいます。住居専用地域ではないため、ある程度の高さを必要とするマンションなども建築しやすく、実際にマンションが多いのが特徴です。店舗や事務所は面積の制限なしで建てることが可能です。

近隣商業施設

住宅地の近隣にあり、主に日用品を販売する店舗が集まっているエリアです。駅周辺や商店街、商業地域周辺の国道や県道といった幹線道路沿いが指定されます。大規模商業施設やショッピングモールだけでなく、小規模な工場を建てることも可能です。

商業地域

大型店舗、飲食店、事務所といった商業ビル・オフィスビルの他、高層マンションが混在するエリアです。ターミナル駅周辺や大都市の都心部に指定されやすく、オフィス街を形成することが多いです。住居専用地域ではないため、日当たりなどの各種制限も緩い基準であるため、高層ビル、高層マンションが密集しやすくなっています。現在、空地であっても将来的にその土地に高い建物が建つ可能性は高くなります。各種さまざまな用途の建物を建てることができるため、物件としては売れやすい地域です。

準工業地域

小規模工場、戸建てに加え、マンション、店舗、飲食店、事務所、オフィスビルなど小規模~中規模の様々な用途の建物が密集しているエリアです。工業地域の一種とはいえ、公害発生などの恐れが大きい工場建築は禁止されています。

工業地域

大規模な工場が立地しているエリアであり、住宅やお店は建てることができますが、学校や病院は不可な地域です。どんな工場でも建てられるといった、工場優先のエリアであるため、住宅を建てることができても住居のために優先されることはありません。

工業専用地域

戸建てやマンションなどの全ての住宅を建てることができないエリアであるため、住むことはできません。お店、学校、病院、ホテルも不可であり、海沿いや川沿いに指定されることが多い地域です。

建ぺい率

敷地の面積に対して建物が建てられる広さが決められています。これを建ぺい率と呼びます。建ぺい率は以下の式で計算できます。

建ぺい率(%)=建築面積÷敷地面積×100

もし、お隣同士が敷地面積一杯の建物を建てたとすると、隙間がまったくありません。これでは火災などが起きてしまうと、隣の住居に延焼してしまいます。それを防ぐために決められており、率は用途地域ごとに異なっています。

用途地域と建ぺい率の例

用途地域建ぺい率(%)
第1種低層住居専用地域第2種低層住居専用地域第1種中高層住居専用地域第2種中高層住居専用地域30, 40, 50, 60
第1種住居専用地域
第2種住居専用地域
準住居地域
60
近隣商業地域
商業地域
80
準工業地域
工業地域
60
工業専用地域住宅建築不可

防火地域内の耐火建築物であれば追加で10%、特定行政庁が指定した角地の場合も追加で10%、両方に該当していれば20%をそれぞれ追加することができます。ただし、建ぺい率が80%地域の場合、変更はありません。

容積率

敷地面積に対する各階の床面積の合計の割合のことを容積率と言います。

容積率(%)=延べ床面積÷敷地面積×100

で表すことができ、容積率も用途地域によって決まります。

用途地域容積率
第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域50・60・80・100・150・200
第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域100・150・200・300・400・500
商業地域200・300・400・500・600・700・800・900・1000・1100・1200・1300
工業地域、工業専用地域100・150・200・300・400
高層住居誘導地区(住居部分の床面積が延床面積の3分の2以上のもの)都市計画で定められた数値の1.5倍
用途地域の指定のない区域50・80・100・200・300・400

ただし、同じ用途地域においても容積率の指定は何通りかあります。実際の容積率を調べるためには、用途地域を知るだけでなく、その場所の容積率を調べる必要があります。

高度地区

建物の高さの制限を定めている地区のことです。建物の高さの最低限度を定める「最低限度高度地区」と最高限度を定める最高限度高度地区の2つがあります。すでに建っている物件の場合はほとんど気にすることはありません。新築物件を作る場合や更地にして売却することを考えている場合のみ、気にする必要があります。自治体によってことなるので、設定がないこともあります。

防火指定

建物が密集している都市部においては、万が一に火災が起きてしまった時に延焼しない目的のために都市計画法で定められている地域です。役場、銀行、交通ターミナルといった都市機能が集中している市街中心地や幹線道路沿いの商業地域などが指定されています。これもすでに建っている物件の場合、ほとんど気にすることはありません。

日影規制

冬至の日を基準とし、全く日が当たらないことのないよう建物の高さを制限する規制であり、建築基準法の1つです。冬至は一番影が長くなる日であるためこの日が適用されています。冬至の午前8時から午後4時までの間に、一定時間影を生じないようにしなければならなりません。規制を受ける建物は建ててある場所の用途地域と高さで決められています。

これもすでに建っている物件の場合、ほとんど気にすることはありません。

その他

ここに書かれている内容は必ず確認しましょう。

物件価格

通常は税込表記です。土地には消費税はかかりませんが、建物にはかかります。

満室想定利回り

表面利回りのことであり、年間の家賃収入の総額を物件価格で割った数字です。

表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件価格×100

年収 

年間の収入となりますが、あくまで想定です。マンションの屋上に携帯電話の基地局がある場合、月額で設置料収入があることも。それらもすべて含んだ金額です。

賃料

家賃のことです。

管理費

家賃と管理費は分かれていないことも多いです。分けている理由は、賃貸情報サイトなどでは、家賃順に表示されることが多いためです。そのほうが上位に表示され見つけてもらいやすく、成約しやすくなるためです。

駐車場

地方では「駐車場付き」として、別途賃料を取っていないこともあります。

備考

ここに書かれていることは重要なことの場合が多いです。一見して意味がわからなくても必ず説明を聞きましょう。

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