いまさら聞けない暗号資産投資。これからどうなる?

近年、暗号資産(仮想通貨)が話題を賑わせています。今回は暗号資産の説明および、暗号資産投資について解説していきます。

暗号資産って、何?仮想通貨とどう違うの?

暗号資産とは、インターネット上においてやりとりできる財産的価値をもつもののことです。かつては「仮想通貨」とも呼ばれていましたが、2019年5月31日に資金決済法と金融資産商品取引法の改正が可決され、法的には「暗号資産」という呼び方で一本化することになりました。

法的な定義

法的な定義はこうなります。

この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第三項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

法律の定義から、暗号試算は下記の3つの性質を持つ「何か」とされています。

この通り、定義の中には「暗号」であることは出てきません。ではなぜ「暗号」という名前がついているのでしょうか?

その理由は、デジタル技術の進歩によって出てきた課題とそれを解決するために生まれてきたもの、という経緯にあります。

暗号資産に価値がある理由

たとえば、アナログな写真の場合、何度もカラーコピーをしていると、必ず劣化していきます。しかし、デジタルな画像は何度コピーしても絶対に劣化しません。

ここで、「ネット社会で流通できるお札やコイン」を考えてみましょう。アナログなコインと異なり、デジタルで作った画像などのデータはコピーしてしまうと全く同じものができてしまします。

したがって、お札やコインとして流通するデータは「コピーをすると中身が変わるもの」である必要があります。そうでないと、無限にお札やコインが増産されてしまうからです。

しかし、コピーのたびに中身が変わってしまうと、そもそもお金として持たせていた情報が維持できなくなり、いい加減につくったものも「お金だ」と言い張ることができてしまいます。かといって、中身を変更するルールを公開すると、またみんなが一斉に同じルールで自分のお金を増やそうとしてしまいます。

そこで考えられたのが「ブロックチェーン」です。これは、「コピーを作るときには、前のコピーの一部を残す」「コピーの連続した系統は最も長い1本を有効な系統とする」というルールを作りました。これによって、「コピーでありながら違うもの」「誰かが自分のルールでコピーをできない」ことが実現することになりました。このルールを運用するために、暗号生成の技術が使われているので、「暗号資産」と呼ばれています。

このような性質を持っていますので、どこかの国の政府が自分の意思で発行量をコントロールするなどもできません。したがって、暗号資産はどの国にも属しておらず、特定の発行者がいるわけでもないので、誰の管理下にも置かれていない資産、と考えられています。

エルサルバドルでビットコインが法定通貨に

中米にあるエルサルバトルでは2021年9月7日より法定通貨になりました。これは現大統領であるブケレ氏が提案した、ビットコインを法定通貨として採用することを定めた「ビットコイン法」の法案が同国議会にて賛成多数で可決されたためです。

ブケレ大統領は2019年、37歳という若さで大統領に就任。「世界一クールな大統領」と公式に書き込むほど自負していました。そして今年、世界で初めてビットコインを法定通貨にした国家の大統領となりました。

エルサルバドルには、もともと自国通貨として「コロン」がありました。しかしこの「コロン」は価値が不安定であったため使われなくなりました。代わりに2001年1月1日より、米ドルを正式な法定通貨して使っています。コロンも正式に廃止されたというわけではないようですが、今後は米ドルとビットコインの2つが主な法定通貨として運用することになります。エルサルバドルは米国への出稼ぎをしている人が多い国ですが、一方で国内では銀行口座さえ持たない人が多いのが現状であり、送金には苦労をしています。ビットコインはそういった国民に向けて、送金の手数料を抑える効果としても期待されています。

エルサルバドルでは、現地語である「クール」を意味する「チポ」と名付けられたアプリを使って取引をします。スマートフォンさえあれば取引が可能です。一方で、現状ではアプリの不具合や、ビットコインを法定通貨にすることの不安や反発も数多くあがっているとのこと。投機の対象にされやすく、価値が乱高下しやすいビットコインが今後、一国の法定通貨としての役割を担えるのかどうか、これからも注意して見る必要があります。

暗号資産投資のやり方

口座開設のための準備をする

暗号資産投資をするには、まず、暗号資産の取引をしているサービス事業者に口座を開設します。口座開設には、一般的に下記のようなものが必要とされています。

・銀行口座・暗号資産を購入するための現金・暗号資産を売買するためのパソコン・スマートフォン・本人確認書類

「暗号資産がメインになると銀行はいらなくなる」という主張をする方もいらっしゃいますが、今後も銀行は必要ですし、暗号資産の取引をするためにも銀行口座は必要です。

本人確認書類に必要なものは以下のものが該当します。

・運転免許証・住民基本台帳カード・マイナンバーカード・パスポート・在留カード・特別永住者証明書・住民票記載事項証明書・印鑑登録証明書

運転免許証・パスポートといった顔写真が付いている本人確認書類であれば、それで問題なく口座開設が可能です。無ければ、住民登録している役所にて住民表記載事項証明書を発行してもらいます。これ以外の書類でも、本人確認書類として使えるものがあります。詳しくは各取引所の公式HPで確認すると良いでしょう。顔写真が付いていない本人確認書類の場合は2点用意しなければならないことがあります。

取引業者に口座を開く

口座開設にあたり以下のステップが必要となります。

・取引所の新規登録フォームよりメールアドレスを登録する・登録後に届いたメールから本登録を行う・本登録に必要な個人情報の記載、本人確認書類を提出する・住所確認が目的のハガキが届くので受け取る・ハガキに登録に必要なコードが記載されているので、そのコードを入力して取引所の口座完了

メールアドレスを登録しても返信メールが届かない場合は、登録したメールアドレスが間違っていないか、迷惑メールフォルダなど他のところに入っていないか確認をします。住所確認のハガキは必要のないDMハガキなどと勘違いして捨てないよう注意しましょう。

アカウントの登録後には暗号資産を保管するウォレットが作成されます。暗号資産の取引は今後ウォレットを通して行うこととなります。

日本円を送金する

次に、取引所の口座へ日本円を入金します。入金方法は大きく分けて3つあります。

銀行入金金融機関の自身の口座から振込をすることで入金が可能
クイック入金取引所が提携している金融機関であればスマホやPCから入金可能
コンビニ入金コンビニから支払いすることで入金が可能

入金方法によって手数料は異なりますので、やり方を鑑みてなるべく安くする方法を考えると良いでしょう。取引所によっても入金する際の手数料が異なりますので、取引所の案内を注意深く見てみます。クイック入金、コンビニ入金の場合SNS認証が必要なことがあります。

資産を購入する

ここまでの手順で暗号資産を取引できるようになりました。いよいよ暗号資産を購入となります。購入場所は「取引所」と「販売所」の2つがあり、仕組みが異なります。

・取引所の仕組み

取引所は暗号資産を保有している他のユーザーとの取引を仲介します。暗号資産を買いたい人はいくらでどれだけほしいのかを注文して、取引所の口座に日本円を入金します。注文した条件が売りたい人とマッチすれば取引は成立し、買い手のウォレットに取引所より暗号資産が送られてきます。買い手と売り手は直接やりとりすることはなく、仲介するという部分では取引所は証券会社と役割が似ています。相場を自分で考えながら売買する必要があり、その分ハードルは高いのですが、販売所よりは手数料を低く抑えることができるため、中級者以上のユーザーに向いています。

・販売所の仕組み 

一方、販売所はユーザーに直接業者が暗号資産を販売します。取引所と同様に口座に日本円を入金し、暗号資産の種類・数量を指定すれば購入が完了し、自身のウォレットに暗号資産が送られてきます。取引所は提示した価格で売りたい人がいなければ取引が成立しませんが、販売所は予め金額がきまっているため欲しい分だけ購入することができます。販売所は通販業者と役割が似ており、初心者にも分かりやすいといえます。

値動きを確認する

暗号資産を購入後は値動きを確認します。暗号資産で利益が出たら売却し、日本円で出金できます。本人確認が終了していないと出金できない場合がありますので、本人確認は済ませておきましょう。また出金する場合も取引所により手数料がかかります。

暗号資産の税金

暗号資産をただ持っているだけでは税金はかかりません。しかし、以下の3つに関しては税金が発生します。

所有していた暗号資産を売却し利益を確定させた

暗号資産を売却し利益が出た時点で税金がかかります。

所有していた暗号資産を別の暗号資産と交換した

ビットコインからリップルといった別の暗号資産に交換する場合も利益が発生した時点で税金がかかります。

所有していた暗号資産でなにか商品を購入した

暗号資産を使って商品を購入することも可能です。

ビットコインを使って最初に購入されたものは「ピザ」だったとして有名ですが、それ以外の商品を購入することも可能です。最近ではNFTなどの「アートの証明書」が売買されています。

このようにビットコインで商品を購入する場合にも税金がかかります。所有していた暗号資産を一度現金化するという手順を踏んでいるためです。「モノを暗号資産で購入すれば非課税」という噂が拡がりましたが、それはデマだと言えそうです。

これら3つが該当しても年末調整をしている給与所得者の場合、年間で得た利益が合算で20万円以下であれば所得税の非課税の対象になります。

暗号資産取引の所得は雑所得になる

所得の種類として大きく10に分けることができますが、暗号資産取引によって発生した利益は雑所得として計上されます。

・利子所得預貯金や公社債の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得
・配当所得株主や出資者が法人から受ける配当、投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託以外のもの)及び特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得
・不動産所得土地や建物などの不動産、借地権など不動産の上に存する権利、船舶や航空機の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含みます。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除きます。)
・事業所得農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得(不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は原則除く)・給与所得給与所得とは、勤務先から受ける給料、賞与などの所得
・退職所得退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当や厚生年金基金等の加入員の退職に基因して支払われる厚生年金保険法に基づく一時金などの所得
・山林所得山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得
・譲渡所得土地、建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得、建物などの所有を目的とする地上権などの設定による所得で一定のもの
・一時所得上記のいずれの所得にも該当しないもので、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のものであって、労務その他の役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得
雑所得上記の所得のいずれにも該当しない所得

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1300.htm

暗号資産投資の危険性

暗号資産詐欺やトラブルに巻き込まれる可能性

暗号資産は一時大きく注目されたことから、一気にお金が流れ込み、相場全体が数千倍に上がった、という経緯があります。そのことから暗号資産をうたった詐欺が多数報告されています。

暗号資産に関するトラブルについては金融庁で詳しくわかりやすい情報が提供されています。暗号資産への投資話などを持ちかけられたときには、ぜひこのページを参考にしてみてください。

https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency/index.html

暗号資産は盗まれることがある

暗号資産投資には危険性もあります。所有していた暗号資産が盗まれたという事件の他、詐欺にあったというもの多々あります。

2014年3月Mt.Gox(マウントゴックス)事件2010年より東京でビットコイン取引所を運営、2014年に発覚するまで何年も窃盗行為を繰り返し、約390億円を失った
2016年6月The Dao事件約65億円相当のイーサリウムが盗まれた
2016年8月Bitfinex事件約73億円相当のビットコインを失う
2017年1月Coincheck(コインチェック)事件約580億円相当の仮想通貨「NEM」が流出

2017年12月
NiceHash事件約76億円相当のビットコインが流出
2018年9月Zaif不正アクセス流出事件約42億5000万円相当のビットコイン、約6億7000万円相当のモナコイン、約21億円相当のビットコインキャッシュの合計約70億円相当が盗まれた

事業者が破綻することがある

暗号資産が流出するといったことから事業者が時には破綻、またはサービス停止することがあります。

2014年2月28日マウントゴックス民事再生適用申請顧客ら約2万4700人が届け出た債権の総額が約2兆6630億円になったと破産管財人が発表
2019年11月22日ビットマスター破産手続き開始決定負債総額は約109億4439憶円
2019年8月22日テックビューロ 暗号通貨交換業を廃業暗号通貨取引所である「Zaif」を運営していたが、ハッキングによって70億円が流出
2020年3月2日VALU サービス停止

2021年8月27日
デジポケ破産手続き開始決定 債権者は約2000人、負債総額は約101億円預かっていた暗号資産の一部がハッキングや誤送信によって喪失

資産価値が全くなくなることがある。

暗号資産は急に価値が大幅に下がり、そのまま戻らなくなることもあります。暗号資産TITANは突如暴落してほぼ無価値になりました。2021年6月16日午後2時に最高値である1TITAN=64.19ドルを記録したのち、5時間後には33ドルという半値に。翌日にはほぼ0円となり、42億分の1まで下がり資産価値が全くなくなってしまいました。

暗号資産の種類と特徴

主要な暗号資産の種類と特徴を紹介していきます。

ビットコイン

ビットコインとは世界で初めてブロックチェーンを基盤とした暗号資産です。2008年10月、「サトシ ナカモト」と名乗る人物がネット上に国家や銀行を介さない分散管理型の通貨についての内容の論文を投稿しました。2009年1月にはこの論文を基盤としたオープンソースのソフトウエアが作られ公開され、ビットコインの誕生しました。ビットコインは当初から発行枚数が2100万枚と決められています。これはビットコインは管理する中央組織が存在しないため、漠然と発行しては市場にビットコインが供給過剰となり価値が下がることを防ぐためでもあります。発行上限が決まっていることもあり、将来的に値上がりすると期待される向きがあり、投機的に考えられることが多くなっています。

イーサリアム

イーサリウムは仮想通貨そのものの言葉ではなく、分散型のアプリケーション(DApps)のことを意味しています。ビットコインは通貨の取引情報がブロックチェーン上に登録されているのに対し、DAppsであるイーサリウムはブロックチェーン内にいつ、誰が、誰に、いくら支払ったといった基本情報の他、スマートコントラクトと呼ばれる様々なアプリケーションプログラムを記録・実行することができます。スマートコントラクトを利用することで、事業における取引に対しても応用でき、企業間の重要な書類の契約、サービスの売り買いなどもできることから拡張性のあるシステムとして期待されています。

Cardano

Cardano(カルダノ)もプラットフォームのことで、ADA(エイダ/エーダ)という暗号資産が使われています。暗号資産はブロックチェーンの技術を活用し、ユーザー同士の取引の記録の整合性・認証を行う際、マイニング(採掘)と呼ばれる作業を行いますが、このマイニングのコストが低いのがADAです。その他にも分散型金融であるDeFiが浸透していくと銀行や生命保険などの仲介業務が必要なくなるといわれていますが、ADAは活用することができるとされています。

Tether

Tether(テザー)はテザー社が発行している暗号資産のことで単位はUSDTです。ビットコインのように供給量が決まっている暗号資産は需給の増減によって価値が著しく変化します。しかし、テザーは同じブロックチェーン技術を使った暗号資産でありながら、米ドルとの等価交換を謳っておりほぼ1USDT=1米ドルの相場を維持しています。テザーは価値の保存、交換媒介物として使うことができ、従来の不換紙幣の性質も持ち合わせていることから、一般の路面店にとっても客からの支払い手段としても受け入れられやすいのが特徴です。

XRP

従来の銀行経由の国際送金には送金手数料の高さや送金速度に問題がありました。XRP(リップル)は暗号資産の中でも処理コストが安い上に、取引処理がわずか数秒で完了できる特徴を持っています。ビットコインとは違い、リップルはリップル社という管理主体が存在し、大量のリップルを保有しています。リップルの取引はブロックチェーンにおける分散処理ではなく、リップ社が管理すしているサーバーで行われるため、他の暗号資産に比べて中央集権型といえます。

モナーコイン

モナーコイン(Monacoin)は日本初の暗号資産で、インターネット上の掲示板、2チャンネルで使用されているアスキーアートであるモナーをモチーフとしています。モナーコインの発行上限は1億540万コインとされ、約3年ごとに新規発行量が半減する。投機以外にもユーザーによって神社が建立されたりと、他の暗号資産ではあまり見られない文化が存在している。

これからどうなる

2021年9月10日現在、暗号資産の時価総額1位から10位をすべて合計すると182兆円にもなります。これだけの金額が日々値上がりと値下がりを繰り返していますが、今後も既存の資産を補完する存在として、独自の取引が行われていくと考えられます。

時価総額一覧 https://coinmarketcap.com/ja/

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