「お金の寿命」から考える 老後の生活、賃貸と持ち家、どっちがいいか?

終の棲家となるかもしれない、老後の住宅。賃貸がいいのでしょうか?それとも持ち家のほうが安心?どういったことに気をつけて検討していけばいいか、そのポイントについて、解説をします。

現在の持ち家比率

現在の年齢別の持ち家比率を見てみましょう。

持ち家世帯の割合を見ると、年齢を重ねるごとに持ち家の割合も高くなっていることがわかります。
なんと65歳以上では、8割の方が持ち家にお住まいです。

多くの方が30代から40代にかけて住宅ローンを組んで家を購入します。一度購入すると20年、30年と住むことから持ち家比率は高齢になるほど高くなるのです。

持ち家のメリット・デメリット

では、その持ち家について、メリットとデメリットをご説明します。

持ち家のメリット

持ち家の最大のメリットは、住宅ローンを支払ったあとは自分のものになること。住宅ローンの返済がなくなるので、固定費が大幅に下がります。現役世代とは違い、収入源が限られる年金世代が安心して住むには、これは非常に重要です。

そして、持ち家の2番めのメリットは売却ができること。老後生活にもさまざまな事が起こります。より快適に暮らしたい、あるいは介護が必要な状態になった時に、それに対応した施設に移動したいというニーズが発生します。施設に入るためには入居一時金などを支払うことがありますが、自宅を売却することでその資金に充てることができるのです。これは大きな助けになります。

持ち家のデメリット

持ち家のデメリットを見てみましょう。
持ち家のデメリットは、修繕費用の負担が自分持ちであること。

住宅ローンを完済した場合、その時点でその建物は築30年以上経過していることも。年数が経つほどに、修繕の負担が発生します。
もう一つの持ち家のデメリットは資産価値が相場動向に左右されること。

建物価格は老朽化とともに価値が低下し、最終的にはゼロやマイナスになります。土地の価格についても、空き家問題が大きくなってきている今、大きな値上がりは期待できないかもしれません。
そのため、物件の価値やエリアを厳選する必要があります。
そして、高齢者に限ったデメリットでいえば、そもそも住宅ローンを組めるタイミングは限られる、ということがあります。

完済時の年齢は80歳が一般的。

たとえば70歳で住宅を購入する場合、住宅ローンを利用することはできるのですが、10年間で返済できる計画にする必要があります。当然、自己資金なども多く求められることになります。

賃貸のメリット・デメリット

次に、賃貸のメリット・デメリットについて見ていきましょう

賃貸のメリット

まず、賃貸のメリットです。
賃貸のメリットはなんといっても、引越しが気軽にできること。収入が減ったのでもっと家賃の安い部屋に住みたい、子どもや孫の近くにいきたい、など、状況の変化に応じて柔軟に引っ越すことができるのが賃貸のメリットです。

また、賃貸の場合、災害に関するリスクが小さいというのもメリットです。

台風で水浸しになって住めなくなったり、地震で壊れたりしても、修繕をするのは大家さんの責任なので、借りているだけのあなたは修繕を待つか、どこかに引っ越すことができます。

賃貸のデメリット

次に、賃貸のデメリットです。
まず、一生家賃を支払う必要があります。これは資金的にもそうですが、心理的にも不安を感じることでしょう。

デメリットの2つめはいくら支払っても自分のものにはならないという点です。住宅ローンの場合、支払い続けていればその分、自分のものになりますので、資産を形成することができます。

デメリットの3つ目は更新です。賃貸物件のオーナーは、貸しているお部屋の中で人がお亡くなりになるなどの事故は避けたいと思っています。そのため、高齢になってくると、入居の申し込みができなくなったり、入居していても更新を断られたりといったことが発生します。

考えるべきは「お金の寿命」

賃貸がいいか、持ち家がいいか。住宅えらびの際に考えるべきことは一体なんでしょうか?
高齢者にとって、住宅えらびで目を向けるべきポイントは総資産と、収入・支出のバランス、という点になります。

総資産額については、生きる年数と生活費から必要な額を計算することができます。

たとえば、現在65歳の方が105歳まで生きる場合、その方の年間の生活費が250万円とすると、合計で1億円必要ということになります。

逆に1億円あれば、賃貸、持ち家どちらでも気にすることはない、ということになります。たとえ年金がゼロだったとしても問題ありません。

しかし、残念ながらほとんどの方はそういった資産を持っていません。十分な資産がない場合、いったいどうしたらいいでしょうか?
それには、収入と支出のバランスを整えることです。

老後の収入が支出よりも多ければ
心配なく老後を過ごすことができます。

逆に、老後の収入が支出よりも少ない場合、足りない分は貯蓄を取り崩す必要があります。

わかりやすく図にしてみましょう。
65歳まで働き、その後は貯蓄を切り崩す、という場合、その方の貯蓄額はこのように変動します。

65歳までは上昇し、それ以降は減っていきます。

もし貯蓄が十分でない場合、あるタイミングで貯蓄が底をついたあとは、赤字になってしまいます。
この、貯蓄を使い尽くす年齢のことを「お金の寿命」と呼びます。

このお金の寿命、いったいどれぐらいの長さなのでしょうか。
具体的に計算してみましょう。
例えば、65歳独身で、貯金額が600万円、年金が170万円、1年間の生活費が250万円というケースで考えてみます。

この場合、毎年の赤字額は80万円。貯金で賄える年数は7年半なので、お金の寿命は72.5歳ということになります。
平均年齢は男性が81歳、女性は89歳ですので、これはかなり短めということになります。

お金の寿命の計算式

自分が死ぬ前に貯金が尽きてしまわないようにするには一体どうしたらいいでしょうか?
99%の方は、105歳までにお亡くなりになります。

したがって、自分が105歳まで生きるとして、貯蓄が0円にならないようにするには、いくらまで使えるのか?を計算してみましょう。

実際の計算式がこれです。

まず、105歳から現在の年齢を引きます。これが残り寿命の年数です。
この年数で、現在の貯蓄額を割ります。
その金額を収入見込額に足します。
これが、あなたが1年間に使っていいお金の上限額です。
1年間に使うお金をこの金額以下に抑えれば、自分の寿命よりも先にお金の寿命が尽きることはありません。

さて、その収入見込額や支出額は将来的にも一定でしょうか?
老後の生活の主な収入源は年金です。

年金支給額は経済状況によって変動します。このことをマクロ経済スライドと言います。
年金額は一定ではなく、経済動向によって切り上げられたり、切り下げられたりするのです。
そして、支出額も一定ではありません。

高齢になると、病気や怪我、親族の介護など、予想していなかった費用が発生します。
生活にかかる費用に加え、これら一時的にかかる費用のことも考える必要があります。

「お金の寿命」から考える賃貸と持ち家

さて、そのお金の寿命から見た時に、賃貸と持ち家、どちらがいいでしょうか?
賃貸と持ち家、それぞれのリスクを見てみましょう。

賃貸の場合

まずは賃貸の場合
支出について、家賃の値上げが発生する可能性があります。

その場合、もっと安い賃貸へ引っ越したり、親族の家に身を寄せたり、別の収入源を確保したり、といったことをする必要があります。

持ち家の場合

次に持ち家の場合、持ち家で怖いのはなんといっても災害です。修繕にお金がかかるばかりでなく、最悪の場合、住めなくなる可能性もあるのです。

南海トラフ地震は今後30年以内に70%から80%という高い確率で起こると予測されています。
また、風水害についても近年、毎年のように発生しています。持ち家の方がこういった災害に巻き込まれた場合、その負担を強いられることになるのです。

また持ち家は資産ですので、金利の動向にも影響があります。

住宅ローン利用中の場合、金利の上昇とともに返済金額が上がることがあります。固定金利の場合は返済額は変わりませんが、変動金利型、期間指定 固定金利型の場合、返済金額は変動します。

また、金利上昇中のときは不動産の価格が相対的に安くなります。そのため、売却を考えたとしても、売りたい値段で売れない可能性もあるのです。

このように、賃貸、持ち家、どちらの場合でもそれなりに変動リスクがあります。

しかし、お金の寿命という観点から見た場合、それらの変動はあっても、やはり持ち家が有利です。
家賃が重くのしかかる賃貸に対して、持ち家はそれがない分、将来の変動に備えることができるのです。

まとめ

シニアの住宅、持ち家がいいか、賃貸がいいかというテーマについて。
資産が十分ある場合、どちらを選んでも構いません。また、収入を増やすために投資へ挑戦することもおすすめです。

資産が十分ない、という場合、「お金の寿命」から考えましょう。
持ち家のほうが支出が少なく、お金の寿命を長く伸ばすことができます。
ただし、災害のリスクなどにはしっかり備える必要があります。例えば不動産投資などをして、第2、第3の資産を持っておくことはリスクヘッジにつながるでしょう。

動画で解説

今回の内容は動画でもわかりやすく解説をしています。

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