謄本・抄本・権利書・登記事項証明書とは?それぞれの意味と違いについて

不動産を扱っていると「謄本」「権利書」「抄本」「登記事項証明書」などと呼ばれた書類を扱うことが多いもの。本稿ではこれらの内容について整理・解説をしていきます。

謄本、抄本の意味

謄本は写本、手書きで書き写した本や文書のこと。一方、抄本とは一部を書き写した本や文書のことを指します。謄本、抄本の違いは全部を写したのか一部を写したのかという違いです。

「登記簿謄本」「登記事項証明書」はどう違うの?

「登記」とは所有している不動産の権利を保有していることを証明するものであり、取引を円滑に行うためにしています。不動産の権利者、過去に登録されていた権利は何かといったものが登記情報に記載されており、法務局に登録されています。

「謄本」の「謄」は「謄写(とうしゃ)」という言葉でも使われます。これは「コピーする」という意味です。

かつては、登記情報はすべて何十冊ものノートに書きつけられていました。そのノートのことを「登記簿」と言います。これは市民全てにとって極めて重要な文書であり、もちろん原本を持ち出すことはできませんでしたから、登記簿に名前の名前が書いてあることを外部に証明したい人は、該当のページをコピーしてもらう必要がありました。

その、役所でコピーしてもらったもののことを「登記簿謄本」と呼んでいました。

現在、登記情報は電磁気的データで管理されています。したがって、役所(法務局)が登記簿を直接閲覧させることはなくなりました。代わりに記録されている情報をプリントアウトして渡すようになりました。これは「国が管理する登記情報には確かにこの内容が記録されていることを証明します」という意味で、登記事項証明書、と呼ばれています。

しかし、長年の慣習で、コピーではなくプリントアウトとなった現在でも「登記簿謄本」という言葉が使われることが今でもまだまだあるようです。

会社の「履歴事項証明書」ってなに?

国が管理する登記情報は不動産だけではなく「商業・法人登記簿」があります。

「会社の謄本」とよく呼ばれているものは、「現在事項証明書」や「履歴事項全部証明書」を指すことが多いようです。

この証明書には会社の住所や役員の名前、資本金の額、設立年月日、社長が住んでいる場所などが記載されています。

「現在事項証明書」は現在有効なものだけ。「履歴事項全部証明書」は過去からの変更履歴を含めてすべての事項が記載されています。

「現在事項証明書」「履歴事項証明書」とも、その会社の関係者だけではなく、誰でもが取ることができます。現在事項証明書には社長の住所が書かれているなど、重要な情報が記載されています。個人情報の管理に厳しい現在、なぜそのような情報が公開されているのでしょうか?

それは、取引の安全を図るためです。

法人とは、「法律で人と同様の権利主体として認めた存在」ということで、人がいなければ、法律がなければ存在しないものです。(反対に、人間のことを「自然人」と呼んだりします)そのように、自然界に存在しない、概念的な存在であることから、それをきちんと定義する必要があります。たとえば、法人名はいつでも自由に変更することができます。相手の名前がコロコロ変わったり、他社と名前が入れ替わったりすると混乱し、安全に取引ができなくなります。そこで、会社名や住所など基本的な情報を常に誰でも閲覧できるようにして、商業取引を安全・円滑に行おうという意図で公開されています。

法人登記簿についての登記事項証明書は以下の4種類であり、履歴事項証明書はその1つです。

現在事項証明書

・現に効力を有する特記事項

・会社設立の年月日

・取締役、監査等委員である取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役、代表執行役及び会計監査人の就任の年月日

・会社の商号及び本店の登記の変更に係る事項で現に効力を有する者の直前のもの

これらを記載した書面に認証文を付したもの

履歴事項証明書

従前の登記の謄本に相当するものであり、現在事項証明の記載事項に加えて、当該証明書の交付の請求のあった日の3年前の日の属する年の1月1日から請求の日までの間に抹消された事項(職権による登記の構成により抹消する記号を記録された登記事項を除く)等を記載した書面に認証文を付したもの

閉鎖事項証明書

閉鎖した登記事項に記録されている事項を記載した書面に認証文を付したもの

代表者事項証明書

資格証明書に代替し得る証明書であり、会社の代表者の代表権に関する事項で、現に効力を有する事項を有する事項を記載した書面に認証文を付したもの

権利書というのは俗称?

権利書というのは俗称であり、正式には「登記済権利証」といいます。新規で土地や建物を売買や相続で取得し、登記を済ませた人に対して法務局から交付される書類です。しかし、登記済権利証が発行されていたのは2004年までであり、現在は12桁の英数字で構成されたパスワードのような役割を持つ登記識別情報というものを発行しています。以前の名残で登記簿識別情報のことを権利書と呼ぶ人はいます。

ネットでの申請方法およびメリット

土地および法人の登記事項証明書、法人の印鑑証明書についてはオンラインでの申請も可能です。請求した証明書は自宅や会社などに郵送も可能なほか、最寄りの登記所や法務局サービスセンターでも受け取りが可能です。

「かんたん証明書請求」と呼ばれ、申請方法は以下の3ステップです

ご利用環境の事前準備(初回のみ)

申請をするPCの環境を確認後、申請者情報の登録を行います。

請求書の作成・送信

かんたん証明書請求書のための請求書を作成、送信を行います

手数料の納付

手数料等の納付が必要な手続きの場合、処理状況照会画面で取得した納付情報に基づき、国庫金納付に対応したインターネットバンキングやATMを利用して電子納付を行います。

オンライン請求のメリットは大きく分けて3つあります。

手数料が窓口よりも割安である

登記所の窓口で登記事項証明書の交付を請求すると手数料は600円ですが、オンライン請求および郵送で受取の場合は500円、最寄りの登記所・法務局証明サービスセンター受取の場合は480円となり手数料が割安になります。

自宅や会社で取得でき出向く必要がない

自宅や会社のパソコンから申請、郵便で受け取ることができるためわざわざ登記所に出向く必要がありません。手数料もインターネットバンキングにおいて電子納付可能であり、収入印紙を用意する手間も省くことができます。

平日の夜21時まで請求可能

登記所窓口の業務取扱期間は平日の午前8時半から午後5時15分までです。オンライン申請であれば、午後5時15分以降は翌日扱いになるとはいえ申請自体は午後9時まで可能です。急ぎであればオンラインで申請、窓口で受け取るようにすれば窓口での待ち時間を短縮することができます。

登記事項を確認するだけならネットでも

「不動産登記情報」「法人登記情報」の内容をインターネットを通してパソコンで確認する場合は、登記情報提供サービスを利用して閲覧することができます。登記情報提供サービスでは登記事項証明書は交付されませんので、必要な場合はオンラインによる証明書交付請求をすることになります。

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