「セル・イン・メイ」って何?

「セル・イン・メイ」という言葉はご存知でしょうか?英語の「Sell in May」のことで「株は5月に売れ」という米国で有名な株式相場の格言です。株式投資に詳しい方なら一度は聞いたことのある言葉かもしれません。一度も耳にしたことがない方や、聞いたことはあるけど具体的にどういうことを言っているかはよく分からないという方もいらっしゃるでしょう。この記事では「セル・イン・メイ」の内容、過去データの検証、要因、株式投資にどう活かせるものなのかについて解説します。

「セル・イン・メイ」とは?

「セル・イン・メイ」はそのまま訳せば「株は5月に売れ」という意味です。では5月を過ぎたら価格が下がるから5月に売っておいたほうがいい、という解釈になるかというとそうではありません。下の表は2019年と2020年のNYダウの月末終値の推移です。2019年は5月に下落しましたが、2020年は5月以降も上昇を続けています。毎年5月をピークにして価格が下落するということを言っているわけではなさそうです。

2019年のNYダウ月末終値の推移

日付1月 20192月 20193月 20194月20195月20196月 20197月 20198月 20199月 201910月 201911月 201912月 2019
終値24,999.6725,916.0025,928.6826,592.9124,815.0426,599.9626,864.2726,403.2826,916.8327,046.2328,051.4128,538.44
前月比%7.17%3.67%0.05%2.56%-6.69%7.19%0.99%-1.72%1.95%0.48%3.72%1.74%
上昇・下落    下落上昇上昇下落上昇   

2020のNYダウ月末終値の推移

日付1月 20202月 20203月 20204月20205月20206月 20207月 20208月 20209月 202010月 202011月 202012月 2020
終値28,256.0325,409.3621,917.1624,345.7225,383.1125,812.8826,428.3228,430.0527,781.7026,501.6029,638.6430,606.48
前月比%-0.99%-10.07%-13.74%11.08%4.26%1.69%2.38%7.57%-2.28%-4.61%11.84%3.27%
上昇・下落    上昇上昇上昇上昇下落   

出典:Investing.com日本語版サイトデータ

「セル・イン・メイ」には続きがある!

実は「セル・イン・メイ」には続きがあります。

「Sell in May, and go away; don’t come back until St Leger day.」

翻訳すると「5月に売れ、そして市場から去れ、セントレジャーデイまで戻って来るな」です。セントレジャーデイというのは9月の第二土曜日のことでこの日に競馬の大レースがあります。つまり「5月に売れ、そして9月の第二土曜日まで戻って来るな」という意味になります。株は5月には売ること、そして9月の第二土曜日以降に買うこと、という格言と捉えて、9月に株を買い、翌年の5月に売るようにすればよいのでは?ということが気になります。次に「9月に株を買い、翌年の5月に売る」は有効なのかどうかを検証してみたいと思います。

「9月に株を買い、翌年の5月に売る」は有効?

では格言に従って「9月に株を買い、翌年の5月に売る」を実行した場合どのような結果となるでしょうか?NYダウの過去データで検証してみました。

以下は2015年6月から2020年の5月のNYダウの月間の終値の推移です。

2015年6月~2020年5月のNYダウ月末終値の推移

日付6月 20197月 20198月 20199月 201910月 201911月 201912月 20191月 20202月 20203月 20204月20205月2020
終値26,599.9626,864.2726,403.2826,916.8327,046.2328,051.4128,538.4428,256.0325,409.3621,917.1624,345.7225,383.11
前月比%7.19%0.99%-1.72%1.95%0.48%3.72%1.74%-0.99%-10.07%-13.74%11.08%4.26%
上昇・下落   買い       下落
出典:Investing.com日本語版サイトデータ
日付6月 20187月 20188月 20189月 201810月 201811月 201812月 20181月 20192月 20193月 20194月20195月2019
終値24,271.4125,415.1925,964.8226,458.3125,115.7625,538.4623,327.4624,999.6725,916.0025,928.6826,592.9124,815.04
前月比%-0.59%4.71%2.16%1.90%-5.07%1.68%-8.66%7.17%3.67%0.05%2.56%-6.69%
上昇・下落   買い       下落
出典:Investing.com日本語版サイトデータ
日付6月 20177月 20178月 20179月 201710月 201711月 201712月 20171月 20182月 20183月 20184月20185月2018
終値21,349.6321,891.1221,948.1022,405.0923,377.2424,272.3524,719.2226,149.3925,029.2024,103.1124,163.1524,415.84
前月比%1.62%2.54%0.26%2.08%4.34%3.83%1.84%5.79%-4.28%-3.70%0.25%1.05%
上昇・下落   買い       上昇
出典:Investing.com日本語版サイトデータ
日付6月 20167月 20168月 20169月 201610月 201611月 201612月 20161月 20172月 20173月 20174月20175月2017
終値17,929.9918,432.2418,400.8818,308.1518,142.4219,123.5819,762.6019,864.0920,812.2420,663.2220,940.5121,008.65
前月比%0.80%2.80%-0.17%-0.50%-0.91%5.41%3.34%0.51%4.77%-0.72%1.34%0.33%
上昇・下落   買い       上昇
出典:Investing.com日本語版サイトデータ
日付6月 20157月 20158月 20159月 201510月 201511月 201512月 20151月 20162月 20163月 20164月20165月2016
終値17,619.5117,689.8616,528.0316,284.7017,663.5417,719.9217,425.0316,466.3016,516.5017,685.0917,773.6417,787.20
前月比%-2.17%0.40%-6.57%-1.47%8.47%0.32%-1.66%-5.50%0.30%7.08%0.50%0.08%
上昇・下落   買い       上昇
出典:Investing.com日本語版サイトデータ

出典:Investing.com日本語版サイトデータ

過去5年間のNYダウの月末の終値を調べ、前年の9月に購入をしたと仮定して、翌年の5月に売却したとすると株価は値上がりしているかどうかを示しています。これを見ると2016年5月、2017年の5月、2018年の5月についてはいずれも上昇、2019年5月、2020年5月については下落という結果でした。これを見ると2019年、2020年については「セル・イン・メイ」は機能していないことが分かります。ただし、2015年以前についても確認したところ、2010年以降2018年5月まではいずれも前年9月よりも翌年5月のほうがNYダウは価格が上昇していました。つまり過去10年の中で見れば「セル・イン・メイ」が機能していないのは2019年と2020年の2年だけ。特に2020年5月は新型コロナウイルス感染症によるパンデミック、ロックダウンにより経済の機能が壊滅的だったことを考えると2019年の下落のケースを除いては機能していた、と見ることもできます。

「セル・イン・メイ」はどうして起こるのか?

では「セル・イン・メイ」はどうして起こるのかが気になりますよね。理由には諸説あります。順に解説します。

信用取引残の決済が5月

一つ目の理由は信用取引残の決済が5月に集中することといわれています。例年年末にかけて株価が高くなる傾向があり、取引が活発になることで信用取引による買いも増えます。信用取引の決済は6ヶ月以内に行うことになっているため5月の決済、すなわち売りが増えて株価がさがることが要因だといわれています。

米国の税の仕組みの影響

二つ目の理由は米国の税制度によるものです。米国では年末に損失を確定して所得を確定指させます。株式取引の損失を計上するのも12月です。所得を確定したら税金の還付の申請をします。翌年の1月から申請をすると1月の終わりから還付が始まる仕組みです。還付の学派20~30兆円ともいわれ、時期は2月から5月まで続きます。還付された資金が消費や株式投資に使われることにより5月までは相場が活発で価格が上がる要因となっています。

「セル・イン・メイ」は日本の株式市場でも機能するのか?

「セル・イン・メイ」は米国株式市場では過去機能している場面もありました。では果たして日本の株式市場では機能するのかどうかが気になるところです。日経平均株価の過去5年の推移を検証してみます。

以下は2015年6月から2020年の5月の日経平均株価の月間の終値の推移です。

2015年6月~2020年5月の日経平均株価月末終値の推移

日付6月 20197月 20198月 20199月 201910月 201911月 201912月 20191月 20202月 20203月 20204月20205月2020
終値21,275.9221,521.5320,704.3721,755.8422,927.0423,293.9123,656.6223,205.1821,142.9618,917.0120,193.6921,877.89
前月比%3.28%1.15%-3.80%5.08%5.38%1.60%1.56%-1.91%-8.89%-10.53%6.75%8.34%
上昇・下落   買い       上昇
出典:Investing.com日本語版サイトデータ
日付6月 20187月 20188月 20189月 201810月 201811月 201812月 20181月 20192月 20193月 20194月20195月2019
終値22,304.5122,553.7222,865.1524,120.0421,920.4622,351.0620,014.7720,773.4921,385.1621,205.8122,258.7320,601.19
前月比%0.46%1.12%1.38%5.49%-9.12%1.96%-10.45%3.79%2.94%-0.84%4.97%-7.45%
上昇・下落   買い       下落
出典:Investing.com日本語版サイトデータ
日付6月 20177月 20178月 20179月 201710月 201711月 201712月 20171月 20182月 20183月 20184月20185月2018
終値20,033.4319,925.1819,646.2420,356.2822,011.6122,724.9622,764.9423,098.2922,068.2421,454.3022,467.8722,201.82
前月比%1.95%-0.54%-1.40%3.61%8.13%3.24%0.18%1.46%-4.46%-2.78%4.72%-1.18%
上昇・下落   買い       上昇
出典:Investing.com日本語版サイトデータ
日付6月 20157月 20158月 20159月 201510月 201511月 201512月 20151月 20162月 20163月 20164月20165月2016
終値20,235.7320,585.2418,890.4817,388.1519,083.1019,747.4719,033.7117,518.3016,026.7616,758.6716,666.0517,234.98
前月比%-1.59%1.73%-8.23%-7.95%9.75%3.48%-3.61%-7.96%-8.51%4.57%-0.55%3.41%
上昇・下落   買い       下落
出典:Investing.com日本語版サイトデータ

出典:Investing.com日本語版サイトデータ

過去5年間の日経平均株価の終値を調べ、前年の9月に購入をし、翌年の5月に売却したとすると株価は値上がりしているかを示しています。値上がりが3回、下落が2回。2019年は上昇していますが小幅であまり機能しているようには見えません。2010年以降2015年5月までのデータを見ても下落1回、上昇4回ですが、小幅上昇の場合や2012年のリーマンショックからの回復を特殊要因の影響と考えるとやはりあまり機能していないということができるでしょう。

まとめ

「セル・イン・メイ」についてその内容、過去データの検証、要因について解説しました。過去の知見が受け継がれたものが「セル・イン・メイ」。投資判断に用いるためには過去データで有効性を検証することが必要です。参考にしてみてください。

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