不動産の知識「越境」について

越境とは家屋の一部や樹木の枝葉、ブロック塀、給排水管やガス管といった所有物が隣地に侵入していることをいいます。越境物は目視ですぐに分かるものもあれば、土地測量や土地を掘った時に初めて分かる場合があります。越境は普段は問題視されませんが売買時には非常に重要になることがあります。今回は越境について解説していきます。

なお、越境については民法が改正され、2023年1月より、変更になっています。これまでの知識で対応してしまわないよう、気をつけるようにしましょう。

越境で確認すること

越境物は建築や購入した直後であれば、不動産会社から説明をされているので把握しているかもしれません。しかし数十年前に購入していたり、相続で取得していた場合は把握していなかったり、忘れていたりすることがほとんどです。

・境界を確認できるところは隣地の方と一緒に図面を見ながら行う。
・境界標・杭などの位置を確認する。確認できない場合、協議して設置する。
・境界線上に塀や壁がある場合、それはお互いの共有物になる。面積の広さや、塀・壁を作ったときの費用負担などには関係なく、半分ずつの持ち分となる。
・隣地から伸びてきた根っこ・たけのこは土地の一部とみなされるため、自由に切ることができる。しかし、伸びてきた枝や葉っぱを切ることはできない。ただし、隣地の所有者に伝えても切ってくれない、所有者の連絡先が分からない、緊急の事情があるときなどは切り取ることができる。
・ひさしや屋根は隣地に越境してはいけない。
・ひさしや屋根から流れた水が隣地に落ちるような構造にしてはいけない。

このように目視で境界物が把握できるものもあります。このような越境がある場合、必ずその隣地の所有者と一緒に確認をする必要があります。一緒に確認ができない場合、写真を撮っておくべきです。

越境によるリスク

越境している不動産を所有していることのリスク

例えば、排水溝・水道管・ガス管など、地下の見えないところで越境している場合があります。故意的ではないとはいえ、所有している建物の設備の一部が隣地に越境している状態は、隣地所有者の土地所有権を侵害していると評価されるリスクがあります。

さらに、越境が故意・過失であると見なされれば、隣地所有者から土地所有権を侵害されているとして、被ったとされる被害について損害賠償を求められることがあります。

越境している不動産を売却する際のリスク

越境物がある不動産を所有し、隣地所有者との間で紛争が生じるリスクを抱えているにもかかわらず、そのようなリスクについて何も対策もとらずに売却した場合、買主との間でも問題が発生する可能性があります。売却後にリスクが現実化し、買主が隣地所有者から越境物の撤去を求められるといった紛争が発生することがあるためです。買主は隣地所有者と紛争になった場合、売主に対して売買契約の際に説明がないとして、損害賠償請求を起こすことがあります。

売却をする際の注意点

越境によるリスクを避けるためには、売買契約を締結する前に越境物を除去するなどして、越境を解消してから売買契約を締結することが重要です。

しかし、越境の内容や売買のタイミング等によっては、売買契約の締結前に越境を解消することが難しく、越境問題が解消されない状態のまま売買契約を結ぶことがあります。その場合、隣地所有者・買主双方にしっかりと対応をする必要があります。

隣地所有者とは書面で合意をしておく

隣地所有者とは越境物の処理などの対応について書面にて合意をとっておきます。越境物の位置、越境している範囲などを図面で正確に特定し、相互に納得の上でどのように処理するのかをしっかり確認します。この合意した内容を買主に対しても承継できるよう測る必要があります。

買主に対して事細かに説明することを怠らない

買主に対しては、売買契約の締結前に越境物に関する事実を正確かつ明確に説明します。過去に隣地所有者との間で越境物に関する交渉や紛争の経緯等があれば、それについても説明を行います。

ここで説明をしなかったり、事実と異なる説明や不十分な説明をしてしまった場合には、のちに買主から、説明義務違反を理由とする損害賠償請求や契約不適合責任の追及を受けるリスクを高めることになります。

そのため、買主と説明をしたうえで越境物について協議を行います。その後に売買契約にて越境物の処理をどうするか、今後越境についての責任をどうするのかなどを定めます。

越境についてはしっかりとした対応を

隣地に越境物がある状態で、不動産を売買する時は注意が必要です。販売する場合、隣地所有者、買主、ご本人とも納得がいくように書面を用意したり、あらかじめ協議する時間を確保したりして、隠し事がないような状態にしておきます。購入する側であれば、購入時には必ず確認を取るようにしておきます。後々トラブルにならないよう、しっかりと行うことが重要です。

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