テレビなどでは「若者の○○離れ」と言って、若者があまり消費をしないことを嘆いています。しかし「給料が上がりにくい」「税金や保険料の負担が大きい」環境では、お金を使いたくても使える訳がありません。今回は税金や保険料の推移を通して、若者がお金を使いたくない理由を解説していきます。
若者の給料水準は20年前よりも低いまま
1997年から2019年までの若者の給与の推移を見ていくと、どの年代も同じような傾向です。2001年のITバブル崩壊や2009年のリーマンショックまでは下降しています。その後は徐々に平均給与は上がってはいるものの、2019年までに1997年の平均給与を一度も上回ることはありませんでした。1997年と2019年の各世代の給与を比較した場合、20~24歳は282万円と264万円、25~29歳は373万円と369万円、30~34歳は450万円と410万円となっており、給与水準は低いままです。
若者の社会保険・税金負担分は25%
国税庁が発表している令和元年度の民間給与実態統計調査によると、19歳以下の給与所得者の平均金額は135万円、20~24歳は264万円、25~29歳は369万円、30~34歳は410万円でした。(給与所得者のため、個人事業主などの自営業者は含まれていません)
今回は25~29歳の年間給与所得369万円を14カ月で案分したときの税負担を計算してみました。(賞与2カ月分とし給料12カ月と合わせて14カ月としました)
その結果、平均値は月収263,571円、厚生年金負担額23,790円、健康保険12,831円、源泉徴収所得税5,680円、雇用保険791円、住民税13,042円となりました。
2019年の家計調査によると20代、30代の税負担は25%程度となりました。その他の年代もでも最高で27%であり、世代ごとの差はそれほど見られません。所得の絶対額が少ない若者世代もほぼ同率の税負担を強いられていることになります。
社会保険料や税金は上がり続けている
次に健康保険や厚生年金の保険料率を見ていきます。協会けんぽの2003年の保険料率は8.20%でしたが、2010年には9.34%、2011年には9.50%、2012年には10%にまで上昇しています。
厚生年金保険料率も2003年のときには13.58%だった料率が、毎年0.354%ずつ引き上げられ、2017年9月には保険料率が18.3%にまでになりました。健康保険や厚生年金の保険料が見直しされている背景には、今後高齢化率が上昇していくことが予想されているため、保険料率を上げることで年金制度や医療制度を維持することが目的でした。つまり保険給付が増える分、保険料収入を増やしていくために保険料率を上げたわけです。
若者世代とは直接関係しませんが、40歳になれば介護保険料を納付することになります。介護保険制度は2000年4月から始まっていおり、当初は保険料率は0.6%でしたが2020年には1.79%まで料率は上がっています。
消費税導入後の税率の推移
1988年の竹下内閣のときに消費税法が成立し、翌年1989年4月に施行されました。当時の税率は3%でしたが、1997年4月に5%、2014年4月に8%、2019年10月には10%になりました。消費税の導入や税率を上げ続けた理由についても、高齢化社会に対応するためのものでした。
今後も間違いなく税金は上がる
2020年12月15日に日本政府は第3次補正予算を閣議決定しました。このことにより2020年度の歳出総額は175兆円にまで膨らむこととなります。2011年に東日本大震災があり、その時の補填として復興特別所得税が2013年から始まりました。所得税の2.1%分の金額を2037年まで徴収しています。
つまり今回の新型コロナウイルスの感染防止策などに使われたものが、今後に復興特別所得税のような名目で税金を徴収するか、消費税率を上げて徴収するかのどちらかになる可能性が高いでしょう。2020年度の歳出総額が増えたことはもちろんですが、2020年度に見込んでいた税収額も届いていないためです。企業倒産が増え、消費が落ち込んでいることで給与所得も減ることは確実でしょう。法人税や消費税、所得税の税収は減ると予想されます。さらに2021年1月8日に1都3県、1月14日に2府5県に対して非常事態宣言が出されていることから、2021年度の税収が減少することは明らかです。
税金が上がり続けた先の未来
「最近の若い人たちはお金を使わなくなった」と言われて久しいです。給与額が低い時から他の世代とほぼ変わらない25%程度の税金を徴収されており、昭和の時代のように年功序列で将来給与が上がるという保証がない若者にとって自動車や一戸建てを買うことに躊躇してしまうことは仕方がないと言えるのではないでしょうか。2020年は新型コロナウイルス感染症で経済も低迷しましたが、それ以前から「消費税を上げなければいけない」などの報道があったことは事実です。つい最近でも2020年11月に国際通貨基金(IMF)から、消費税を15%にまで引き上げるよう日本政府に提案がありました。若者が納得のいくような税金の使い方をする環境にしてもらいたいものです。